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つくる。To Craft

Sayo Yoshida
  • JR 渋谷駅着、長野に向け出発
  • studio prepa の工房に到着
  • 作業開始、道具の説明
  • サラダボウルの制作
  • ペーパーウエイトの制作
  • フラワーベースの制作
  • 休憩・薪割り体験
  • 昼食
  • 帰宅↓
  • 商品到着

Place

@長野県上伊那郡
中川村
N 35°10' E 138°55'

Profile

吉田沙世
モデル
愛知県生まれ。
東京を拠点に、『VOCE』や『美的』をはじめ、
『Gina』、『Soup』などのファッション雑誌などを中心に
活躍するほか、CM・広告・PVなどにも出演、幅広く活動する。

高い物の価値を
きちんと知りたい

「洋服をリメイクするのも好きで、物持ちはいい方だと思います。それにショッピングするときも結構慎重に選ぶ性格です。だからこそ、本当に欲しいと思ったものがどのようにして作られているのかに興味がありました。ワンコインで買える服も売られていたり、100円ショップに行けば、いろいろな日用品を買うことができる時代だからこそ、高いものの価値をきちんと知りたい思いました」

そんな吉田沙世が考える“36時間”とは、日用品を自分の手で作ることだった。

吉田がものづくりを体感すべく向かったのは、長野県の上伊那郡を拠点にするガラス工房《スタジオプレパ》。野生の鹿が庭に現れるほど、長閑な場所にある。平勝久さん、瑞穂さん夫妻は、日本でも数えるほどしか職人がいない、吹きガラスの技法を用いた確かな技術と細やかな感覚で制作。スウェーデンやヴェネチアの感覚や技術を取り入れつつ、アメリカ西海岸特有のシンプルで、形や素材などの機能性を重視したものづくりは、ガラスに入る気泡でさえも良しとする。こうしたエシカルな制作をする《スタジオプレパ》の作品は、吉田にとっても特別なものだった。

平さん夫婦の仕事は毎朝7時から始まる。炉の火を入れ、ガラスを再加熱する1200度まであげるのに、約一時間ほどかかるため、本格的な作業を始めるのは大体8時ごろ。炉の温度の上昇を待つあいだ、吉田は、工房にある完成したばかりの作品たちを手に取り、今日制作する物を決めていた。

「毎朝、サラダとかフルーツを入れられるようなボウル、それに花を生けるような花瓶が作ってみたいです。本当に作れるかわからないんですけど」

古代エジプト時代から変わることのないガラスの成形技法。使う道具は徐々にアップデートが施されているが、基本的な形や機能は変わっていない。グラスなどの口を切って揃える口切りばさみ、取手やワインの足などのガラスを切る種切りバサミ、グラスの口を広げるハシ、底を平らにする木製のコテ底、そして後から空気を入れるパッファー。《スタジオプレパ》の作品もまた、両手で数えられるほどの道具を用いて作られている。もちろん1点1点ハンドメイドのため、まったく同じものはなく、形や色も異なり、大量生産やマシンメイドでは表現できない魅力と愛情が詰まっているのだ。

自分の目で見て、
実際に感じるという
ことの大切さ

陶芸や木工とは異なり、直接触って成形できないのがガラスを扱う難しさだ。1000度ほどある、水あめのような真っ赤なガラスの塊を重力や空気、そして道具を駆使しながら、ゆっくりと最終の形に近づけていく。シンプルなもので30分、複雑な過程を要する作品に関しては 2,3時間かかることもある。

「花瓶は、また別の溶かしたガラスをくっつけて成形したりと、見た目からは想像できない工程で作っていくのが驚きでした。それに普段見たことのない道具で作るんです。こんな道具を使って、普段私たちが使うコップの口になっていくんだって」

工房のなかは、3つの炉がフル稼動しているため、サウナのような高温状態。自然と汗が吹き出てくるため、知らぬ間に2リットルほどの水を飲んでいることに気づく。作業自体は、左手で金属のシャフトを回し、右手で形を整えるというシンプルな動作ではあるが、高温の室内と、 “ゴォー”と炉から鳴り響く音が集中力を散漫にする。しかし、こうした困難な環境のなかにも関わらず、「花瓶の首をもう少し立体的にしたい」などと、集中力とこだわりを持ち続け制作する吉田の姿に平夫妻も驚いていた。そうして1時間ほどかけてボウルと花瓶、さらに最初から最後まで自力でつくったペーパーウエイトを完成させたのだ。

「今日はお皿と花瓶とペーパーウエイトを作ったんですけど、日常にあるものを自分の手で作るっていうのがすごく楽しいことだなと感じました。ボウルひとつにしても、手作りならではあたたかみを感じることができましたし、料理もきっと美味しく感じるだろうなって。それに、ものをもっと大切にしようって改めて感じることができました」

2年前に、『ターミナル』という雑誌の企画で、ヨーロッパアルプスの最高峰モンブラン登頂に成功するほか、プライベートでも音楽フェスなどに通ったりと、普段から五感を使って体感することを大切にする吉田。今回の36時間の行動もまた、新しい経験として身についたようだ。

「今はいろんなデバイスがあって、いろんな情報が身の周りあるなかで、見たり、知ることはすごく簡単な時代だなと思うんです。でもそれは自分の経験ではなくて、やっぱり見ただけのもので、分かったような感じの気持ちになってしまう。だから今回のものづくりのように、自分の目で見て、実際に感じるということの大切さを改めて感じることができました」