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浪費する。To Waste

Miri Matsufuji
  • 瀬田・東京インター付近でヒッチハイク開始
  • 静岡行きの乗用車に乗車
  • 静岡県日本平到着
  • 愛知行きのトラックに乗車
  • 愛知県長島到着
  • 三重行きの乗用車に乗車
  • 三重県関に到着
  • デコトラに遭遇、近くにある本部まで乗車
  • 就寝 ↓
  • 起床
  • 津インターへ向けて徒歩で移動
  • 島根行きのバイクに乗車
  • 三重県亀山到着
  • 東京行きの乗用車に乗車
  • 渋谷到着

Place

@三重県津市
N 38°49 E139°99'

Profile

松藤美里
写真家
2012年からフリーランスフォトグラファー
として活動を開始。
グループ展などに多数参加するほか、
シブカル祭のメインビジュアルや
「VICE JAPAN PHOTO ISSUE 2013」の表紙を飾るなど、多方面で活躍中。

失敗してもいいこと。
そして、間違ってもいいこと

「私が考える若さの特権は、失敗してもいいこと。そして、間違ってもいいことだと思います。もちろん大人になってからも失敗することはあると思いますが、どこかで失敗を恐れてしまうというか……。大人になればなるほど、きっと責任感も出てくるだろうし、いろんなことが分かってくるから、考え方や行動範囲が狭まってくるかなとも実感していて…。私自身はまだちょっとしか大人になってないんですけど」

若干23歳の写真家・松藤美里。大学では映画を専攻していたが、写真だからこその瞬間の強さを切り取ることに夢中になる。在学中の頃から、何ものにも捕らわれることのない自由奔放で、彼女にしか撮れない写真は業界内で注目されていた。現在では雑誌やミュージシャンのアルバムのジャケットを手がけるなど、縦横無尽な動きをするアーティストである。そんな松藤の36時間は、計画することなく、時間を無駄使いすることだった。まさにユースの特権。目的地もなく、もちろん交通手段も、宿泊先も考えることなく、必要最低限のお金だけを持ち、ただ西へ向かう。1970年代、ヒッピーたちが資本主義に嫌気がさし、自由を獲得するため、西を目指したように。

ヒッチハイクをスタートしたのは、金曜日の正午過ぎ。梅雨入りするかしないかの時期で、東京の天気はぐずついていた。松藤にとっては今回が始めてのヒッチハイクで、天気と同様、不安でしかたなかった。しかし、一度高速道路に乗ってしまうと思いのほか、ヒッチハイクは順調に進む。静岡県の島田市でビジネスの商談があるという男性サラリーマンを口火に、高知へ向かう長距離トラックの運転手、週末地元に帰省する中年の男性、そして派手な装飾を施したデコトラにも出会い、さらにデコトラが集まっているという田舎町に招待され、BBQをご馳走になったうえ、事務所の休憩室を借りて宿泊もすることになった。

「もともとデコトラにはちょっと憧れがあったので、すごく嬉しかったです。ドライバーさんたちとも話をすることができたり、ハンドルを握らせてもらいました。彼らは自分のトラックを常にアップデートしていて、今回会った人も20年ぐらいかけてオリジナルの一台を作り上げていました。しかも、売る目的でやっているわけでない。トラックに“雷神丸”とか“魅也姫”とか名前をつけて、テーマカラー、キャラクターとかテーマソングもある。ライフワークというか、自分の分身みたいじゃないですか? いわゆる価値と意義のあるものじゃなく、単純に好きだからやっている。ぶっ飛んでるなと思う部分もあったりするんですけど、でもそんなことを思いっきりやって、それについてくる仲間たちが全国にいるのはなんかうらやましいですよね」

結局、この日はBBQで肉を焼き、ビールを飲みながら深夜の3時まで話をしていた。ホタルが飛ぶような自然豊かな場所で、無数の星とデコトラの光を浴びながら、普段交わりのない人たちと巡り合い、そして話をしているとまるで海外旅行に来ているような気さえした。

あれこれ決めてしまうと、
その決めた範囲のことしかできない

翌日、8時に起床し、近くのインターまで約2時間かけて徒歩で向かった。前日の疲れのせいか、松藤は途中で幾度となく休憩を挟んだり、牛歩でインターへ向かった。なんとか高速道路に乗るという車を捕まえ、とりあえずは津のパーキングに。それからは、亀山までいくという1400ccのバイクに乗せてもらい、最後はいっきに東京へ向かった。安心したせいか、松藤は車内で崩れるように熟睡。東京についたのは、日が暮れ、ビルや街の電気が眩しく、ごった返すほどの人で混みあう土曜日の19時ごろだった。

「やっぱり渋谷が落ち着く!」松藤は自然と口にした。

「今回、計画をまったくせずに、ランダムなヒッチハイクの旅に出たんですけど、やっぱりよかったなと思いました。あれこれ決めてしまうと、その決めた範囲のことしかできないから、今回乗せてもらった人たちも出張に来ている人とか、運送業の人とか、バイクでツーリングしている人とか、それにデコトラの人、すごく貴重な出合いだったと思います。あんな高価なトラックとかバイクは自分だと一生乗れないようなものだし……。自分の写真の撮り方もですけど、普段から、“なんとなく”でやっていることは多いんです。だけど、決まった時間のなかで旅したり、ここまで手段・方法を考えないで、それに宿もないというノープランでやったのは初めてでした。ずっとやってみたかったから。なんか一個達成した感じです。自分のチェックリストから外すことができました」