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東京の夜を遊び尽くすディープなスポット。
仕掛け人の二人が語る、音と建築の良質な関係。

写真:上田晋也 編集:Mirror
カバーデザイン:菅谷幸生
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東京の夜を遊び尽くすディープなスポット。<br />仕掛け人の二人が語る、音と建築の良質な関係。

今年7月、日本有数のビジネス街として知られる東京・八丁堀に突如として誕生した複合型ホステルの「WISE OWL HOSTELS TOKYO」。2020年での開催が決定した東京オリンピックの影響もあり、様々な業態がこぞって可能性を探るインバウンドビジネス。その一端を担う存在として台頭しつつあるのが、今回ご紹介するホステルなどに代表される宿泊事業。ニューヨークを筆頭に海外では広く浸透しており、ここ日本でもAirbnbなどを始め、宿泊に対する需要は高まるばかりだ。そんなマーケットに音楽と建築というキーワードからアプローチした出自の異なる2人のクリエイター。発起人となった代表の武藤弥と同施設B1Fに構えるSOUND & BAR「HOWL」の音響設計をディクレションしたサウンドクリエイターのYosi Horikawaが語るインバウンドの新たな可能性とは。

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不動産の価値を高めるための最良な手段だった。

|7月にオープンして以来、徐々に話題となっている「WISE OWL HOSTELS TOKYO」という名のホステル事業を始めたきっかけからお話を聞かせてください。

武藤:僕らは「SHARE COMPANY」という会社で、シェアハウスやシェアオフィスの運営など不動産にまつわる”リデザイン”をコンセプトに様々な事業を展開しているんですが、もともとホテル(現代で言うところのホステル)の運営を目的として作ったわけではないんです。不動産の価値を高めるために、最良な手段と方法を考えた結果が「WISE OWL HOSTELS TOKYO」だったんです。ただその一方で、シェアハウスなどが流行っている中で日本の環境や日本人に最適化した施設があまりないな、と思ったことが大きなきっかけでもありました。それは斜陽的なマーケットに対する未来への危惧であったのかもしれません。

|斜陽的なマーケットというのは、ここ日本に限った意味としてでしょうか?

武藤:そうですね。昔は日本でもバブルな時代があって、日本人が海外でお金を次々に落としていくような時代がありました。しかしその後景気の悪化もあり、昔ほど海外でお金を使うことは多くなくなったように思います。そしてアジア諸国での経済が徐々に豊かになり、中産階級の国の発展が目立つようになったことで、今度は海外の人たちに日本でお金を使ってくれるような産業構造へとシフトしていくだろうなと感じていました。

|そこから、実際にはどれくらいの構想で実現することになったのですか?

武藤:構想としては3~4年くらいですかね。僕らの強みでもある不動産としての視点からと、消費者、いわゆるマーケット側の視点から何ができるのかなという思いを常に持ちながら、物件などを探していた頃に、ここの八丁堀の物件と出会ったんです。

|では、もともとこの八丁堀というエリアに狙いを定めていたわけではなく、偶然の賜物だったと。

武藤:ここのビルは三方向の道路に面していて、建築法的にも避難路を確保しやすいなどの理由で障害も少なく、人が集まりやすい角の立地で駅からも近いので、僕らの理想の物件に限りなく近かった。さらに東京駅からタクシーでワンメーター、付近の駅を使えば成田までもダイレクトにアクセスできる。銀座や築地も近く、ディズニーランドへも行きやすいので、実は観光客の拠点とするにも最適なんですよね。

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WISE OWL HOSTELS TOKYOの代表を務める武藤弥さん(上)とHOWLの音響設計を手掛けたサウンド・クリエイターのYosi Horikawaさん(下)

聴く人の耳に届くところまで責任を持ちたい。

|そうした海外の方に向けたホテルを作っていく上で必要な場所を確保し、次に重要となる複合型の宿泊施設にとってのコンテンツはどのように構成していったのですか?

武藤:はじめに僕らがこの「WISE OWL HOSTELS TOKYO」を始めた理由を二つ話しましたが、実はもう一つ僕個人としての想いがありました。それは僕らが若い頃にニューヨークやロンドンに遊びに行った時に、小さいけどかっこいいホテルというのが点在していて、そういったホテルをいつか日本でやりたいなとずっと思っていたんです。よくある外資系企業の運営する総合型のシティホテルや泊まるだけが目的の安宿ではなく。そのために旅行者だけではなく、例えばYosi君のような音好きの人が集まったり、感度の高い人達が交えるコミュニティにしていきたいなと思ったんです。

|そうした思惑によって、最大の見所でもある地下のSOUND & BARの「HOWL」を併設したんですね。ここはYosi Horikawaさんによる音響設計などを含めた空間デザインのプロデュースが話題ともなりましたが、そもそもお二人の出会いはなんだったのでしょうか?

Yosi:20年くらい前ですかね。僕がまだ大学生の頃でしたね。

武藤:そうそう。もともと僕は建築学科の出身だったんですが、Yosi君も建築学科の学生でして、僕のいた研究室の後輩だったんですよね。そんな頃に出会って、僕らは建築のみならずイベントのオーガナイズや趣味で音楽を作ったりしていて、僕が映像を担当して、Yosi君が音を作る、みたいなこともしていましたね。当時は建築だけではとても飯の食える時代ではなく、皆が皆いろんな可能性を探っていた時代だったんです。

|なるほど。そうした繋がりもあって今回のプロジェクトでも協業することになったわけですか?

武藤:はい。ただその後、僕は不動産、Yosi君は建築をやりながら音楽を作るという道を選び、別々の分野に進んでいったんです。

Yosi:僕はその後も建築と音楽を学んでいく中で、音楽への比重が高くなっていったんです。そしてたどり着いた考えが、曲作りの最終地点は視聴者にどう届くかということ。音を鳴らすデバイスや機材のクオリティの重要性に気づいて、伝えたくない音と伝えたい音を区別することを意識しながら、スピーカーを作り始めました。それはやっぱり曲を作って、聴く人の耳に届くところまで責任を持ちたいという想いからなんですよね。

武藤:そうしたYosi君の活動を陰ながら知っていた僕は、同時に自分たちで手掛けることになったこのホテルに何かしらのスパイスが欲しいと感じていたんです。ここは地下のスペースもあるし、僕らが海外で遊びに行っていたホテルでは週末にクラブのようなパーティーが開かれ、ロビーなどはたくさんの人で賑わっていたんです。ローカルな地元民からパーティー好き、観光客が入り乱れる空間というのがとても新鮮だった。そんな場所を日本でも作りたいと思ったんです。そしてYosi君に声をかけて、スピーカーなどの音響から機材の配置、内装など空間の設計を一任したんです。

|まさに日本ナイズドされた「ACE HOTEL」のようですね。そして二人による取組が始まるわけですが、Yosiさんの中では「HOWL」の空間を設計する上でどんなイメージがあったのですか?

Yosi:僕が建築の分野に身を置きながらも先行き不安な時期を過ごしていて、音楽は変わらずに続けていたこともあり、その両方を追求できるものはないのかと模索していた頃に出会った言葉が建築音響だったんですよね。それからある建設会社の音響チームに所属し、音楽ホールの設計などに携わるようになったんです。そんなタイミングで武藤さんから受けたお話が、通常視覚的に構築していく空間を聴覚の視点から作っていってほしいというお仕事の依頼でした。音響から作り上げていく建築のプロジェクトとしてここまで大きなスケールは実績としてはなかったのですが、とにかくやれることはすべてやり尽くす気持ちで取り組みました。

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HOWLはクラブやラウンジというよりホールに近い。

|それはクラブやライブハウスなどの音響とはまた異なるわけですよね?

Yosi:そうですね。まずここまでお金をかけることはないと思いますし、設計にそこまで力を入れているところはないんじゃないですかね。あくまでも音重視。あるいは音はそこまでだけど、おしゃれな空間にしようというような場所がほとんどだと思います。やるからには徹底的に。中途半端なものでは既存するものには勝てませんから。クラブというよりはホールに近いんですよね。

|それほどのこだわりと予算が注ぎ込まれたラウンジがホテルの地下にあるというのは、確かに画期的ですね。

Yosi:当然宿泊目的で来られる方もいますが、僕個人の目的としては、音を聞きにここへ泊まりくるという価値を生み出したいんですよね。最近になってようやく、ふらっと入られた方にも音すごく良いですね、みたいな反応を聞くことができるので、それは嬉しいことですよね。

武藤:音響はもちろんバーやラウンジで言ったら国内屈指のクオリティなんだけど、でもそれって分かる人には分かるようなものでも良いのかもなと思うんです。例えば、言い方はすごく悪いかもしれないんですけど、Yosi君の作る音楽って日本のシーンでは流行らなそうだけど、でも海外や耳の肥えたリスナーには確実に届くと思う。

|オープン記念としてライゾマティクスの真鍋大度氏らがイベントを開催したことでも話題となりましたが、「HOWL」の今後の展望などあれば教えて下さい。

武藤:やっぱりこの音響設備を生かして、上質な音楽イベントを定期的に開催していきたいですね。生楽器だったり、インストバンドとかも良いかもしれない。それこそYosi君のような音楽はここの音響とすごく相性も良いので。あとは「WISE OWL HOSTELS TOKYO」自体が宿泊施設としての顔を持つので、宿泊者同士でなんらかの化学変化を起こしてここでイベントなど出来たら良いですよね。以前、そんな構想を形にしたイベントも実験的に行ったりしたんですが、今後も既成概念にとらわれないイベントや打ち出しを考えていきたいですね。

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「アジアの叫び=HOWLS」

WISE OWL HOSTELS TOKYOが主催する音楽プロジェクト。8月に行われた第一回目のゲストには沖縄女性ラッパーのパイオニアであるAwichが出演。(写真は第一回のライブの模様)二回目以降はアジアを中心とした海外からのアーティストを予定している。

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WISE OWL HOSTELS TOKYO
住所:東京都中央区八丁堀3-22-9
http://www.wiseowlhostels.com/
B1F SOUND & Bar 「HOWL」
営業時間: 19:00-24:00

1F 「WISE OWL CAFE」
営業時間:7:00-18:00
定休日なし

1F「地酒・おでん・肴 フクロウ」
営業時間:平日 11:30-14:00(ランチ)、17:30-22:00(ディナー) 土 16:00-22:00
定休日:日祝日

2F~5F
宿泊スペースの料金(税込価格)
個室(4名ドミトリーファミリータイプ1部屋(15,000円~)
個室(2名ドミトリー)1部屋(7,600円~)
個室(2名ダブルベッド)1部屋(8,000円~)
女性限定8名ドミトリー 16ベッド (3,800円~)
女性限定10名ドミトリー 20ベッド(3,700円~)
男女混合14名ドミトリー 56ベッド(3,600円~)

6F サービスアパートメント
間取り:2LDK(キングサイズベッド×1室、セミダブルベッド 2ベッド×1室)
最大滞在可能人数:4名
最低宿泊日数:1ヶ月
月額賃料:60万円

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