MAKE T-SHIRTS IS FORMAL BY SEISOSHIRO T

Tシャツを正装に。一枚が築く新しい文化の礎。

写真:竹内一将 編集・文:黒澤卓也
カバーデザイン:菅谷幸生
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Tシャツを正装に。一枚が築く新しい文化の礎。

正装という言葉から連想するのは、スーツ、ジャケット、シャツといった襟が着いたものがほとんどだろう。だが今そんな正装における概念に異議を唱えた、一枚のTシャツが話題を呼んでいる。名前は《正装白T》。発信者はクリエリティブ・ディレクターの川辺洋平氏。彼はTシャツを通じて何を謳うのか。そのプロセスとフィロソフィーについて。

Tシャツを正装に、という想いを形に。

ーはじめに川辺さんの経歴を教えてください。

川辺:僕はファッション業界に携わってきた人間ではありません。元々は電通のデジタル分野に属し、現在は株式会社アールという会社を立ち上げ、オンラインメディアの運営をはじめとした様々なプロジェクトを企画しています。

ーデジタル分野の人が何故Tシャツのブランドを立ち上げたのですか?

川辺:きっかけは本当に些細なことです。Tシャツで仕事をすることも多く、この姿をビジネスの正装にできないかと思ったことでした。透けていない、下着にみえない、といったこだわりを詰め込めばTシャツであれど、十分にシャツやジャケットのようにフォーマルを満たしてくれるのではと考え、このプロジェクトを始動しました。

正装白T
白T専門店「シロティ(#FFFFFFT)」の白Tハンター夏目拓也をアドバイザーに迎えるなど、約2年間の研究開発を経て完成。綿や厚み、デザイン、製法などを見直し、正装として着られる白Tとして話題を呼び、発売直後に完売するほどの人気を誇る。

好奇心と探究心だけで挑戦したはじめてのものづくり。

ー洋服作りにおいて知識や経験もないなかで、どのように作り上げていったのですか?

川辺:本当に何も知らなかったので、一からネットで調べ始めました。生産場所に電話したり、出来上がるまでの工程を調べたり、素材のセミナーに参加するなど、分からないことしかないので、逆に出来ることを全て行動に移すといったシンプルなことをしていました。知識を一つ得たら、また一つ課題が見つかる、その繰り返しです。

ー課題をクリアするために具体的に何をしましたか。

川辺:本当に全てをしました。例えば日本オーガニックコットンが開催してるセミナーに参加し、素材のことを知り得たと思ったら、そこでTシャツはワタの摘み方から始まってるということを教わったので、次はワタ摘みができる農園に赴いてみたりと、Tシャツ作りにおける全ての工程を自分自身で探し、体験しました。

ーそこまで実直に動けるというのはすごいですね。その行動力が他にはないクオリティに繋がっているというわけですね。

川辺:素人だから門前払いを受けることも当たり前にありました(笑)。でもいいものを作りたいという一方で、分からないものを作りたくないという思いも強かったんです。単純にTシャツを作る上では、全ての工程を知る必要はないですし、ましてや体験などしなくても形にはできると思います。でも僕はそうはしたくなかった。僕は4歳からの子どもたちと哲学をする「こども哲学教室」を毎月主催しています。こどもたちが考える疑問を、おとなも本気で答える。例えば宇宙はなんであるの?という質問に対して、僕も知らないという立場で一緒に探求するんです。これはこどものためでもあるし、大人になった自分が一緒に探求したいという活動でもあります。それが僕の根底にあるフィロソフィーで、Tシャツ作りもまた、僕の好奇心や探究心を表現したものだと思っています。

正装白T
素材には自ら農園へワタ摘みに赴いて生産したオーガニックコットンを使用。できるだけ農薬を使わない地球に害のないものを使うことも川辺さんのポリシー。また、オーガニックコットンの紡績では日本最大手のひとつ、大正紡績でいちから工程を確認。熟練したオペレーターによる TSS 方式(トヨタ生産方式)の一枚流しで製作するなど、日本の技術にもこだわっている。

蔓延する表面的なファッションへのアンチテーゼ

ー白いTシャツはビジネスはもとよりファッションシーンでも非常にスタンダードな存在でもあります。昨今のファッションに対し、この《正装白T》はどんな意義がありますか?

川辺:僕自身もファッションが好きです。ただ流行についてはストリート発ではなく、商業主義が強まっているように感じています。ノームコアやアスレジャー、ビッグシルエットなど、多くのムーブメントがあるけれど、ストリートと業界の呼応関係になっていない気がして。安くて、シンプルで、誰でもできますよ、体型に不安があっても大丈夫といったようなファッションのポピュリズムが進んでいるのではないかと個人的には思います。僕は素人なので、自分の好きな服を作る自由がある。でもそれは僕だけではなく、すべての人に元来提供されているはずの自由です。そんな考えも、このTシャツには込めています。百貨店に反物を持ち込んで服を仕立ててもらっていた時代が、戦後の社会にはあったわけで、服は買うものでもあるし、お願いして作ってもらうものでもあるはずです。

Tシャツ一枚を通じて発信する新しい文化

ーTVをはじめとしたメディアに取り上げれたことで注目を集めていますね。初めてのものづくりとしてはいい感触を得られましたか?

川辺:おかげさまで数多くのメディアに取り上げられていますが、露出して商品が売れるだけではあまり意味がないと思っています。クリエイターの一番嬉しいことは、文化やムーブメントが発生することです。先ほど述べたように、ビジネスで言えばTシャツを正装とできる社会になればいいし、それが夏のビジネスシーンを変えてくれれば、正装白Tが売れなくてもいい。もっといえば、自分で服をオーダーする人が増えたら嬉しいです。

ーでは最後にこのプロジェクトの展望がありましたら教えてください。

川辺:特に何も決めていません。このプロジェクトは自由参加なので、誰かがこの屋号を使って「こんなもの作ってみたい!」と、やりたいことをやっていただいても構わないというスタンスです。正装という名のジーンズを開発したり、またはライフスタイルを提案したりと、本当に自由でいいかなと。どんな形でもいいからそこに本気の意思と面白さがあるものを展開していけたらいいですね。

正装白T
《正装白T》はクルーネック(サイズ:S・M・L・LL)とVネック(サイズ:M・L・LL)の2型展開。現在白T専門店「シロティ(#FFFFFFT)」と同ブランドのオンラインストアにて販売中。※売り切れの際は入荷次第に販売再開。

時代を作るのは偏見と概念を持たない自由なクリエイト

《正装白T》から垣間見えたのは、ものづくりの意匠はもとより、川辺さん自身の自由なクリエイティビとフィロソフィーだ。固定的な概念と偏見を持たない彼の自由なクリエイトこそ、ビジネスやファッション問わずシーンには必要であり、また新しい文化というのものは、いい意味で何も知らない人こそが作れるものなのかもしれない。

正装白T

正装白T
クルーネック・Vネック各¥9,720
http://seisoshirot.com

about him

Creative Director
川辺洋平

株式会社電通を退社後、2014 年株式会社アールを設立。企業と生活者のコミュニケーションをクリエイティブの視点から、楽しく役に立つものにデザインし直すことをモットーに活動。2015 年、世界経済フォーラムが選出する33歳以下の若手リーダーコミュニティ Global Shapers Community 東京ハブ代表に選出されているほか、NPO法人こども哲学・おとな哲学アーダコーダの代表として、教育に関する活動も積極的に行っている。

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