日常に彩りをあたえるストアガイド

ICHO
品格の漂う、心落ち着く空間。

写真:TRVS  文:野村優歩
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ICHO<br />品格の漂う、心落ち着く空間。

オートクチュールな洋服店のアトリエに併設した憩いのカフェ。

メゾンブランドの旗艦店が立ち並ぶ南青山は表参道。煌びやかな通りを一本西側に入った先に、石畳が広がった商業スペースが見えてくる。この一角に構えるのが、今回ご紹介するクチュールアトリエ兼カフェを営む『ICHO(いちょう)』。ここはデザイナー鴨脚暢氏が手掛けるクチュールブランドのアトリエと、鴨脚暢氏の息子夫婦が営む端正なカフェが共存する空間。レンガを起床とした外壁にガラス扉が設けられた開放的なファサードが印象的だ。

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中へと進むと横長に設計された空間であることが認識できる。正面には品格のあるカウンターが設けられており、洋風のモダンな家具や什器に囲まれた憩いの場として、街の喧騒から離れ、ひっそりした時間に身を浸したい気持ちへと掻き立てる。京都出身のデザイナーということもあってか、随所に和の伝統を感じさせる行燈を思わせるアルコールランプや清々しい白木の手桶と柄杓などの小物が織り交ぜられているのが印象的だ。決して広いとは言えないながらに、贅沢な雰囲気が味わえる空間へと仕上がっている。さらに路地庭を思わせるアトリエとカフェの間の細い廊下には、京都の鴨脚家に伝わるという江戸時代の武者人形が守護神のように鎮座している。

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岩手の短角和牛を贅沢に使用し、様々なスパイスを織り交ぜたカレー。カフェでありながら、本格的な家庭の味を再現した同店でも人気のメニューだ。¥1,000
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山梨の白州郷から産地直送で的的に新鮮な野菜を仕入れ、オーガニックにこだわった彩り鮮やかなサラダ。ドレッシングは使用せず、その時々の素材にあわせた塩こしょうとワインビネガーを使ったシンプルな味付けが自慢なのだという。¥600(小)
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鴨脚暢氏の義娘、里子さんの姉によるお手製のフォンダンショコラ。『本日のデザート』として季節などによって定期的にメニューが異なる。¥400
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自身のブランドを立ち上げるまでは、フリーランスのデザイナーとして様々なブランドやメーカーの素材開発や企画、デザインを請け負いながら、長らくファッション業界で活動していた鴨脚氏。それまで表舞台に一切出ることのなかった鴨脚氏が、長い下積みを経てようやく自身がこれまでに培ってきた世界観を表現するタイミングが訪れる。2000年に現在の場所にアトリエを構え、当初はいくつかの既製品を販売していたのだが、せっかくなら訪れる人それぞれに合った洋服を仕立てたいという強い想いからオートクチュールでの製作をスタート。2001年には、海外を視野に入れたプレタポルテのコレクションを発表し、フィレンツェでの出展を皮切りにミラノやパリでもコレクションを発表するなど、国内にとどまらず世界を股にかけて活躍するようになる。しかし自身のスタイルはあくまでもオートクチュールであるという信念のもと、今でも昔からの顧客や一見さんのお客様のための洋服を日々仕立てているという。

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2000年に53歳の年齢で立ち上げたオートクチュールブランドの〈ICHO〉。そのデザイナーを務める鴨脚暢氏は、世界を股にかけ、現在も現役で活躍するデザイナーだ。

そしてオートクチュールのアトリエとしてスタートしてから鴨脚氏自身、もっとたくさんの人に気軽に訪れてもらいたいという想いが芽生え、初めはお茶を出す程度の憩いの場として空間作りをスタートさせて行きながら、それが見事に好評を得て、2008年にカフェを隣接する現在の内装へリノベーションする。現在ではお茶をゆっくりと飲みながらオートクチュールの相談に訪れる海外のお客さんや、馴染みのお客様と閉店後にシャンパンを開けて酒を嗜むなど、これまでにあった堅物なイメージを払拭し、誰も気軽に訪れることができる、カジュアルなスポットへと生まれ変わった。

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「素材や縫製のクオリティなど一定の品格を保ちながら、どんなお客様にも満足していただけるモノ作りを一貫して行ってきましたが、やはりこうしたオートクチュールの洋服は一般的には敷居が高いと思われることも多いんですよね。ですのでそうしたハードルが少しでも下がるよう、また訪れた方が一人でも居心地が良いなと思ってくれるよう、こうしたサロン(カフェ)とアトリエが一体となった空間というのが、今の僕らにできるブランドとしてのおもてなしなんだと思います」。最後にそう話してくれたデザイナー鴨脚氏。50年近くのキャリアが物語るファッションデザイナーとしての言葉は、自身が貫く姿勢やモノ造りの想いがより強く、一人ひとりのお客様へと向けられていた。日本人であることを改めて誇りに思えるような、そんな品格の漂う、しかし心落ち着く『ICHO』には、きっと今日もそんな魅力を知った人々が足を運んでいるに違いない。

ICHO
東京都港区南青山5-5-25 B102
OPEN 12:00-20:00
TEL 03-5766-5680
www.icho-tyo.jp


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