MADE WITH TRUTH 01

真実の行方、越境するクリエイション
Vol.01

写真:石毛倫太郎 文:吉岡加奈
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真実の行方、越境するクリエイション<br />Vol.01

MC、DJ、音楽プロデューサー、クリエイティブディレクターなど多岐に渡り活動するVERBAL(m-flo/PKCZ®)と、それまでグラフィックデザイナーとして活躍をしていたYOONの2人が、2008年にスタートをしたジュエリーブランド「AMBUSH®」。1stコレクションがリリースされると同時に、カニエ・ウエストをはじめファッションに敏感なアーティストやファッショニスタが注目し話題を呼んだ。そして2012年からは、本格的にコレクションブランドとしてスタート。昨年よりパリでも展示会を開催し、ボーダーレスに世界的な人気ブランドとして認知され始めている。今もなお、着実に進化をし続ける「AMBUSH®」の魅力はどこにあるのか。東京を拠点にワールドワイドなスタンスで勝負するデザイナー/ヴィジュアルディレクターのYOONに、ブランドの方向性について聞いてみた。

「格好いいものは、何年経っても格好いい。未来に残るものを作りたいですね」(YOON)

AMBUSH® YOON

― ブランドスタートの2008年から現在まで、ブランドはどのように変化してきましたか?

YOON(以下、Y) AMBUSH®を始めるきっかけとなった最初の「POW!」シリーズは、実はブランドを立ち上げようとして作ったものではなかったんです。デザインアイデアがあったので、とりあえず形にしてみて、友人にプレゼントしたのが発端でした。そうしたらカニエ(・ウエスト)を筆頭に、海外のアーティストたちが次から次へと着用してくれたんですよ。それから様々なお店からオーダーが入ってくるようになったので、きちんとコレクションとして出していった方が良いのでは、という話になり、2012年あたりからコレクションベースでリリースをしていくことにしました。

AMBUSH® YOON

― 本気でやっていこうと決断してから変わったことは何ですか?

Y “AMBUSH®”は、マイペースに自分たちで好きな物を作ろうという思いでスタートしたブランドだったのですが、2012年にコレクションベースで出すことを決めてからは、ファッション業界のシステムでやりながら勉強をしていく機会が増えました。例えば、コレクションを発表してからどれくらいの期間で商品を納品するのが妥当なのか等、そういうことも含めて。そして昨年、初めてパリで展示会を開催しました。世界のバイヤーが集まる場所で彼らが何を思うのかを聞きたいという興味と、自身を試したいという思いからパリで行うことを決めました。

AMBUSH® YOON

― 新しいコレクションでは素材も新しく変えたとか?

Y 最近、ファッション業界はどんどんペースが早くなっているじゃないですか。そんな中で、次のステップについてVERBALと2人でじっくり考えたんです。これまで自分たちの作りたいものを作ってきたけど、未来に残るものは何なんだろうって。そこで、昨年は6月のコレクションをスキップして、ブランドを再構築したんです。今回からジュエリーをシルバーで制作することにしたのですが、素材を変えると、作品の持つ意味とニュアンスも変わると思うんですね。良い食材を使った料理が美味しく感じるのと一緒で、お客さんにより良いものを作り出すことを第一に考えました。

AMBUSH® YOON

― 今回のコレクションについて教えてください。

Y カールハインツ・ヴァインベルガーという、もともと挑発的な写真を撮ってきたスイス人のフォトグラファーがいるのですが、彼が撮影をした’50年代のヨーロッパの若者たちの写真集を見つけたんです。その時代に、ドイツ、スイス、オーストリアなどに入ってきた映画やロック・スターなどのアメリカンカルチャーに影響を受けた“ハルプシュタルケ”と呼ばれる若者たちを撮影したものなんですが、彼らはお金がなくても、自分で持っている服やアクセサリーを身近な物を使って自分らしくデコレーションしたり、リメイクして格好よく着こなしていたんです。そんなハルプシュタルケたちにリスペクトを覚えるのと同時に、自分たちが作っているジュエリー「AMBUSH®」と感覚が似ているなと思いました。アイデンティティもそうですけど、彼らにシンパシーを感じたんです。世間が強いる社会的階級や支配的な若者文化による抑圧の中、ハルプシュタルケたちが立ち向かう姿勢を着想源に据えて、今回のコレクションでは釘やパドロックなどを「AMBUSH®」らしくオリジナルでデザインしてみました。

AMBUSH® YOON

― ストーリーを大切にしてコレクションを展開しているのですね。

Y 毎回、コレクションをデザインするにあたっては、きちんとしたストーリーを元に作っています。2012年に「HOLY MOUNTAIN」というコレクションを発表したのですが、私が個人的に好きだったマニアックな映画にイスピレーションを受け、「AMBUSH®」らしいデザインに落とし込みました。今回のコレクションに関しては、半世紀以上前のハルプシュタルケがインスピレーションになっているので、「格好いいものは時間が経っても、格好いい」ということを改めて実感しました。これからも世界のユースカルチャーを追求し続けていきたいと思います。

AMBUSH® YOON

― ファッション業界の方々から、アドバイスを受けたりしていますか?

Y ファッション関係の先輩方からアドバイスは頂きますが、音楽業界や芸能関係の方々からも今後のトレンドやビジネスの動きのお話を聞かせていただいていて、そういったお話を元にいろいろ考えていたりしています。めまぐるしい進化や変化を続ける時代に、これまでと同じシステムやビジネスモデルに頼っているだけでは意味がないので、新しい方法を考えて、常に自分たちの仕事の環境をキュレーションしていきたいという思いがあります。いざやってみるとシステムが先行し過ぎていてセールスに繋がらないということもあるかもしれませんが、今の自分たちの規模感だからできることもありますし、だからこそ柔軟な考えを持ってチャレンジしてみたいなと。自分たちは物を作って売っている立場なので、価値観を伝えることを大切にして、それをどう発信していけば良いかを常に考えています。

AMBUSH® YOON

about her

AMBUSH® Designer / Visual Director
YOON

アメリカ生まれ。2008年 自主的にジュエリーデザインを追求していた VERBALと共にAMBUSH®を発表。代表作ともいえるPOP ARTにインスパイアされたPOW!®モチーフは、世界中のメディアやアーティストから注目の的となる。 二人の生み出す東京カルチャーを反映したユニークな作品は変化・変容を繰り返し、洗練されたコレクションジュエリーへと進化を遂げている。 2015年 Paris Mens Fashion Week期間中には初の展示会を開催し、更に同年世界のファッションビジネスを中心とするオンラインニュースサイト“Business of Fashion (BOF)” が発表する「ファッション界を変える世界の500人」に 精選。日本ならではの繊細な技術と唯一無二のデザインで表現されたジュエリーは、各界のインフルエンサーにも絶大な支持を受け、A Bathing Ape (NIGO)、Louis Vuitton(Kim Jones)、Maison Kitsuné、sacai、UNDERCOVERといった現代を代表するクリエイター達とのコラボレーションを実現させ、その影響力は世界規模で拡大し続けている。


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