日常に彩りをあたえるストアガイド

POST
インディペンデントな書籍が集う

写真:TRVS  文:野村優歩
BOOKMARK
POST<br />インディペンデントな書籍が集う

国内外問わずに様々な出版社を特集するブックストア

恵比寿駅の雑踏から少し離れ、閑静な住宅街の中に忽然と現れる一軒の書店。白を基調とした木目の壁面にガラス張りの窓が取り付けられたノスタルジーな佇まいのそこは、今回ご紹介するブックストアの『POST(ポスト)』。当初は、古書をメインとした海外の美術書を扱う『limArt(リムアート)』の店舗であったところを、その姉妹店として意志を受け継ぎ、代々木ヴィレッジ内に構えていた『limArt』の姉妹店『POST』が移転統合したニューショップだ。この恵比寿の外れを拠点として選んだのは、不特定多数の人にというよりは、しっかりとした目的を持って訪れて欲しいというお店の思いがあった。

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オーナーである中島氏は、今年のアートブックフェアのディレクションを担うなど業界内での信頼も厚い人物。そんな氏が手掛ける同店は、大型書店のように豊富な品揃えを誇るわけではなく、定期的に海外の出版社に焦点を当てた新刊のセレクトが魅力だ。ちなみに店名の『POST』には様々な意味合いが込められているのだという。「郵便受けのイメージで定期的に印刷物が届くことを想起させたり、焦点を当てるという意味のSPOTのアナグラムとしてもぴったりだなと思ってPOSTにしました。他にも、ポストモダン(post modern)のように、本屋の新たな価値を創造していく地という意味合いも込めています」そう話す中島さん。誰でも馴染みやすく、人によって異なる意味合いを見いだせる一般的な言葉にあたらしい意味を見いだした単語を店名とするのが、今の時代に合っているのではないかと考えたそう。

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さらに『POST』では本屋としての機能はもちろん、ギャラリーとしての側面も持つ。店内奥に構えられたスペースは、取り扱う書籍に関するローンチイベントなどを行っている。時に海外の出版社と連動し行う場合もあるのだという。取材時には、写真家のホンマタカシ氏による展示が催されていた。こちらはアメリカを代表する現代美術作家Edward Ruschaが60年代以降に発表していたアーティストブックをシリーズごとオマージュしたという写真集をもとにした展覧会で、ホンマ氏、中島氏とデザイナーの田中義久氏による三者の共同ディレクションで行われているという。今後もシリーズ完結まで続けていく予定らしく、次回の展示にも否応なしに期待が高まる。

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SAUL LEITER/Early Color
1950年代のニューヨークを拠点とする写真家による未発表作品集。『世界一美しい本を作る男』でも知られるドイツのシュタイデル社から発行。40〜60年代のモノクロ全盛の時代に切り取られた貴重なカラーフィルムが当時のNYの街並みを色濃く映し出す。また2012年には彼の半生を追った自伝映画も公開される。¥6,600︎(税抜)

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Irma Boom,IBO/boom+
ブックデザインの分野で異彩を放つオランダ出身のグラフィックデザイナー、イルマ・ボーム女氏の仕事を、彼女のもとでアシスタントを勤めたデザイナーたちが各自の構成でプレゼンテーションする、コンセプトも面白い一冊。イルマ・ボーム女氏のインタビューも収録され、誌面のテキストは日・英で翻訳される。¥5,600(税抜)

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ホンマタカシ/THIRTYFOUR PARKING LOTS
先にもご紹介した写真家 ホンマタカシによるEdward Ruschaへのオマージュブック。後世のアーティストへ多大な影響を与えたと言われる彼のアーティストブックは世界各国で多くのオマージュ作品を生む。本作はレイアウトから造本まで1967年発行のオリジナルを忠実に再現している。¥3,200(税抜)

「『limArt』の頃は、空間と本の融合というテーマで家具や古書を扱っていましたが、『POST』になってからは洋書をメインに、より専門性の高さを保ちつつ、日本にはないアーティストや出版社の刊行物を取り扱いたいと考えていました。欧州ではデザインに対する教育がしっかりと根付いていて、同時に編集的な視点からコンセプトワークとして本を作っていることが多いです。そんな中で若い作家さんや作り手が沢山出てきているので面白いんですよね」。実際に海外へ出向き、様々な出版物を見ていく中で、近年ヨーロッパなどで増えているインディペンデントな出版物が目に留まることが多かったという中島氏。国内ではまだまだインフラの整っていない、そんな書籍を扱っていくことに『POST』のアイデンティティを感じたのだという。

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常に編集者を悩ます企画や構成などの意図すべきプロモーションを有効に使い、洋書をメインとした特集型の本屋として再出発した『POST』。中島さん自身が深意を持って良いと思い選書した出版物には、限りなく最大限の可能性を持ったアートと本の未来が映し出される。常に生み出されていく熱意ある作り手によるインディペンデントな書籍が中島さんの持つ選球眼と重なり、今日もまた恵比寿の書店『POST』へと投函されていく。

POST
東京都恵比寿南2-10-3
OPEN 12:00-20:00 ※月曜定休
TEL 03-3713-8670
www.post-books.info


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