CHANCE-DRIVEN TECHNIQUE

境界線なきストリートの現在。
LQQK STUDIO

写真:石毛 倫太郎 編集:kontakt
カバーデザイン:菅谷幸生
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境界線なきストリートの現在。<br />LQQK STUDIO

今、なぜアナログなのか?

『LQQK STUDIO(ルック スタジオ)』。ストリートシーンに身を置く者なら、その存在は周知だろう。シルクスクリーン(版画の版を製作し、手刷する印刷方法)という古くからあるプリント技法を用いて、オリジナルプロダクトや、コレクションブランドのアイテム製作、はたまた音楽製作やインターネットラジオのDJまでをこなす5人のチームがいる。NY・ブルックリンの一室で始まったプリントスタジオは今、アメリカのみならず、ここ日本でもストリートシーンを牽引する存在となった。デジタル全盛の時代にあって、あえてアナログな手法を選んだ理由とは? インディとメジャーを自在に行き来する彼らに見る、ストリートの現在。

LQQK STUDIO
『LQQK STUDIO』のメンバー。写真左からMartin、Max、Alex。

Q:LQQK STUDIOが始まったきっかけは?

アレックス:発端はスクリーンプリント専門のワークスタジオを作ろうってところから。確か2010年頃だね。狭い作業場かもしれないけど、友人たちと一緒に仕事ができる環境を作りたかった。始めてから日に日に関わる人が増えていって、各々抱えてるプロジェクトがあって離れていく人もいたけど、その中で残ったのが今のメンバーだよ。最初は共同の作業場みたいな感覚だったけど、徐々にやりたいことが固まってきて今の形になった。だから、最初はオリジナルのプロダクトは作っていなくて、始めたのはここ3年くらい。普段は依頼を受けたブランドのアイテムにプリントしたり、コマーシャルな仕事も多く手掛けてるよ。《LQQK STUDIO》は、スクリーンプリントを中心に音楽やアートなど、さまざまなアウトプットを実践しているんだ。

Q:メンバーみんな、ほかの肩書きも持ちながら活動していると聞きました。

マーティン:そうだね。ブランドスタッフやデザイナーなど、それぞれがほかの肩書きを持つメンバーの集合体だよ。メンバーとは元々、NYダウンタウンのストリートコミュニティで知り合って、僕は当時、スケートショップで働いてた。みんな違うバックグラウンドがあって、それぞれの理由からスタジオに集まるようになったんだ。

LQQK STUDIO
LQQK STUDIO

Q:スクリーンプリントはとても職人的な作業ですよね?

アレックス:まさに。とてもフィジカルな工程が多い作業だよ。すごく汚れるけど、それはそれでクールだね。

マーティン:みんなスクリーンプリントって、デジタルで機械的な作業だと思いがちなんだ。「このモチーフをフォトショップでデザインしてTシャツにプリントしてくれない?」なんていう軽い感覚だろうね。でも実際はそんなにシンプルにはいかない。版を作って、手作業でプリントを刷るのはすごく繊細な作業なんだ。一つ一つ手で刷っているからこそ、今までにないビジュアルが生まれてくる様を体感できる。それが1番クールな瞬間だね。

Q:そもそも、なぜシルクスクリーンという手法を選んだのでしょう?

マックス:高校時代、家業でテキスタイルビジネスをしている友人がいて、彼の家の地下でTシャツを刷ったりして興味を持ったのがはじまり。最初は遊びだったけど、どんどんハマっていった感じだね。プリントの手法は色々あるけれど、インディペンデントで好きなことを表現するのに1番向いていたのがシルクスクリーンだったんだ。

マーティン:僕はアートスクールに通っていて、ペインティングや彫刻を専攻していたんだ。そんな中でスクリーンプリントに出会って、当時からスケートしていたから、Tシャツのグラフィックに興味を持っていたこともあって深く学ぶようになった。でも、量産するコマーシャル的な考えはなくて、一点ものを作るアートのプロセスでしか知らなかった。そんな時にコマーシャルプリントのことを専攻していたアレックスと知り合ったんだ。

アレックス:僕は高校生の頃からプリントに興味があって、アートスクールでプリントの技術的なことや、細かいディテールに関することを教わっていた。マックスと同じ作業場を使うようになった頃、彼はスケールの大きなコマーシャルプリントの仕事をしていたんだ、実はそのことにすごく衝撃を受けたんだ。自分がやってきたこととは何かが違う、すごくクリエイティブで、ある意味自由だったんだ。アート的な視点と、コマーシャルやビジネス的な視点、その二つをミックスしたのが『LQQK STUDIO』の原点だと感じてる。アートとコマーシャルの間で化学反応が生まれるんだ。それが僕たちの物作りの魅力に繋がっているのかもしれないね。

LQQK STUDIO
LQQK STUDIO
LQQK STUDIO

Q:プリントというクリエイティブをどう捉えている?

アレックス:プリントはクラフトワークだよ。手作業の工程がいくつもあって、それら一つ一つのクオリティが仕上がりに大きく影響してくる。そういう意味では、フェイクが許されないクリエーションだと思う。表現はファッション的なことが多いけど、実際の作業は淡々としていて、すごく職人的で地道だよ。

マーティン:『LQQK STUDIO』は、それぞれの個性が上手く噛み合っていると思う。印刷と言う一つの媒体の中で、さまざまなエッセンスで新しい価値を生み出していく集団になりたい。

アレックス:そう、僕らはアートスタジオなんだ。決して単なるTシャツ工場ではないんだ。アパレルだけじゃなくて、表現の中には音楽や映像もあるし、アートもある。さまざまな方法を使って今の時代を表現するミックスメディアとも言えるね。

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日本で初めて公開されたTommy Malekoffのアートワーク。

Q:アートとビジネス。インディとメジャーについてはどう考えていますか?

アレックス:今、その境界線はほとんどなくなっているように感じる。プライベートワークとビジネスワークはとても近い関係にあるし、自分たちの動向をSNSですぐに世界中に発信できる。だから、本当にいいモノ、かっこいいモノが正当に評価される時代だと思うんだ。初めにあったのはスペース、そこに人が集まってきて次第にビジネスになった。自分たちでクリエーションとキュレーションができるからこそ、新しい創造が少しずつできている。作る前から売れる、売れないと言うマーケティング論は全く考えていない。クリエーションに対して真摯でいれることが僕たちの強みだよ。

マックス:ビジネスとして言えば、クライアントの多くはプリントに対してあまり理解がないのが現状。だからと言って無視はできないんだ。わからないことを紐解くように一つ一つ説明して、品質や技術の高さを丁寧に伝えることも僕たちの活動において大切なことだと思ってる。

マーティン:僕はマックスみたいに忍耐強くないけどね(笑)。

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Q:今は何を制作していますか?

マックス:12インチのレコードを制作中。知り合いのアーティスト二人とコラボレーションしたものなんだ。一人はここ最近まで、僕たちのスタジオで仕事をしていた子で、気心知れている仲間さ。369 Recordsからリリースする予定だよ。

Q:どんなミュージシャンがリリースしていく予定?

マックス:若くてインディペンデントなミュージシャンが多くなると思う。インターネット上の繋がりだけじゃない、リアルライフのコネクションがすごく反映されている。僕ら自身、匿名性の強いインターネット上のコネクションが多いと思われがちだけど、実はその逆の考え方なんだ。これだけ情報が溢れている今、大切にすべきはリアルな関係や温度感。それは手刷りという手法を選んだことにも通じていることかもしれない。

Q:Know Wave(インターネットラジオ局)のDJなど、インターネットの活動も頻繁ですよね。

アレックス:そうだね。SNSを使った表現は自己アピールのための良いツールだよ。ある知人がKnow Waveを主宰しているAaron Bonderoffを紹介してくれてたんだ。丁度、彼がLAからNYに戻ってくるタイミングで、ウェストビジレッジにある「OHWOW Bookshop」をKnow Waveの発信局に決めた頃、そこで僕らは火曜日にレギュラー番組を持たせてもらえることになったんだ。

Q:レギュラー番組を持つのは大変じゃない?

アレックス:毎週、決められた時間を決められたことに費やすのは、責任感が必要だと思う。だた、当たり前だけど、オンリーワンになるためには、これまでの先人たちとは違う目線で、ものごとを観察して、編集していかなきゃいけない。そういう意味でも、自分たちの活動の幅は決めてない。レギュラー化して良かったことは、毎週、定例ミーティングができるようになったこと(笑)。あとはインターネットラジオだけど、リアルライフにさまざまな相乗効果が生まれている。

マックス:僕はそのレギュラー番組が決まった時、とても興奮したのを今でも覚えているな。アナログのレコードをディグしまくって、DJするのが楽しくて仕方ないんだ!アレックスは昔からレコードを集めていて、今はみんなで夜な夜なDJするのがとても刺激的なんだ。

LQQK STUDIOLQQK STUDIO
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Q:リアルライフの充実っていうのは?

アレックス:そうだね、例えば人との出会いもそう。Richardsonマガジンを主宰するAndrew Richardsonもストリートで出会ったひとりで、いろいろとめちゃくちゃな人だけど、とても好きなクリエイターなんだ。想像したら即実行するスタンス、その行動力に脱帽なんだ。

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『LQQK STUDIO』がプリントを手がける《Richardson》のTシャツ。

マックス:彼と出会った当時、僕はニュージャージーのプリント工場によく行っていて、そこで偶然見つけた《Richardson》のミスプリントTシャツをもらって着てたんだ。いわゆるブートレグさ。たまたま、Larry David(脚本家・映画監督)が僕らの目の前を通り過ぎて、すれ違いざまに「クールなTシャツだね!」って声を掛けてきたんだ。彼の隣にいた男が「そのTシャツをどこで手にいれたんだ?」と聞くから、僕は「そんなの知らないよ、気にしないでくれ」って答えた。男は続けて「それは僕のブランドのTシャツなんだけど、そのブートレグTシャツはどこで手に入れたんだ?」って。その人がAndrewだったんだ。

アレックス:偶然だけど、そんな人との出会いにとても感謝している。今、一緒に仕事ができるのはすごく光栄なことだよ。昨今はインターネットの活動が多いけど、最終的にはリアルな繋がりにならないといけないと思うんだ。インターネットの楽しみもすごくあるけど、まずは自分たちのスタンスを決めないと。僕たちはプリントが好きで集まって、それが今こうしてビジネスになっている。好きなことを追求していって共感を得ることができれば、すぐに自分たちの存在を世界中に届けることができる、すごくラッキーな時代だね。


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