INTERIOR EVOLUTION

題:インテリア進化論。
郷古隆洋 (Swimsuit Department) × 成田博昭 (FRUCTUS)

写真:小林直人 編集:kontakt
カバーデザイン:菅谷幸生
BOOKMARK
題:インテリア進化論。<br />郷古隆洋 (Swimsuit Department) × 成田博昭 (FRUCTUS)

「古い=いいモノ」から、アップデートするという思考へ

インテリア、とりわけヴィンテージ家具に造形の深い成田博昭さんの視点は独特だ。もともと、インテリアショップを営み、現在はグラノーラを販売する「FRUCTUS」を主宰する成田さんは「キーワードは時代感とアップデート」とインテリアの未来を語る。“古ければいい”は終わった。時代は変わり、インテリアは進化する。

MODERNISM SHOW

近年、日本の中古家具市場は厳しい状況が続いている。安価な量販店が増え続ける一方、ヴィンテージと呼ばれる家具の価値は高騰を続ける。良質なデザインに手の届かない時代。ファッション同様、インテリア“にも”個性が無い時代。そんな状況を変えるのは、時代感とアップデートだという。

「今、日本では中古家具の市場って完全に死んでるんですよ。歴史的価値があるヴィンテージはオリジナルのままがいいというのは分かるけど、そうではなくて、ただ年月を経てしまっただけのユーズド家具もたくさんある。日本では長らく、このユーズド家具を海外から輸入してそのまま販売するという方法が多かった。でも、これからは「ヴィンテージ」と「ユーズド」をより明確に分けて考えるべきだと思うんです。例えるなら、骨董屋に行くか、普通の食器を買いに行くかくらい差があること。僕は、ユーズドという分野に関しては、そこに時代に合ったセンスを加えることが新しい販売の仕方なんじゃないかと思っています。《ノル》や《ハンス・J・ウェグナー》などの中古家具は、日本ではなかなか買えない値段が付いているけど、海外だと5〜6万で探せる。そういう家具を使って、ファブリックを張り替えたり、スチールの色を変更したりと現代的な感覚をプラスすることで、まったく違う価値が生まれるはず。買い付けたユーズド家具をそのまま販売しているだけのお店っていうのは、今の時代どこも厳しい状況にある。それは、やはり時代にフィットしていないからというのが1番の理由だと思うんです。ファッションで言うと、一時期レアなヴィンテージのデニムが流行って、みんな一斉に買ったけど、もちろん買えない人もいたし、サイズが合ってないのに無理して履いている人も多かった。その後、さまざまなブランドがヴィンテージに着想を得て、シルエットや素材などを現代的にアップデートして、誰にでも手に取りやすいアイテムをリリースしたと思うんです。それと一緒で、昔のユーズド家具ってすごく雰囲気はあるんだけど、どうしても日本の住宅には合わないところがある。住宅環境そのものから手を入れられる人は限られるし、だったら、日本という環境に合うようにアップデートしてあげるべきだと思うんです」

インテリアを別の視点から見ること。それがファッションだったり、フードだったり、音楽だったりすることもあるかもしれない。これからは、そこに生まれる新しい価値を提案していく時代だと成田さんは言う。

MODERNISM SHOW

MODERNISM SHOWMODERNISM SHOW

成田さんが製作したエットレ・ソットサスのユーズドチェアは、ファブリックを張り替え、アームのカラーリングも変更することでよりモダンな印象に。同じくソットサスのダイニングセット

インテリアもファッションのように変化していけばいい

「ファッションと同じような感覚」。成田さんは何度かこう口にした。決してトレンドという意味ではないが、もっとライトに家具と接する環境が必要だと。「流行り感というか、そういう感覚がインテリアにも必要だと思うんです。家具もファッションのようにどんどん回っていけばいいんじゃないかなって。ここ最近、デンマークの《ヘイ》やイタリアの《カルテル》など、比較的安価だけど良いデザインのプロダクトを作るブランドも増えてきてますしね。《ヴィトラ》の安いラインだったり、《フリッツ・ハンセン》のドロップチェアの復刻もいい。こういったプロダクトは、カラーリングも昔では絶対出せないようなものを作ってるんです。ドロップチェアは、昔のオリジナルだと数百万するところが復刻だと数万円で買えるんですよ。日本だと、こういう復刻プロダクトを「こんなのオリジナルに忠実じゃない」って下に見てしまう傾向があると思うんです。でも、忠実じゃなくていいんですよ。今の時代の人たちが使えるものじゃなきゃ意味がないし、マニアじゃなくて、一般の人にもっと興味を持ってもらわないと」。

MODERNISM SHOWMODERNISM SHOW

デンマークブランド《ヘイ》/イタリアブランド《カルテル》
MODERNISM SHOW
《フリッツ・ハンセン》のドロップチェア

「あとは、デンマークのファブリックブランドの《クヴァドラ》がファッションデザイナーのラフ・シモンズと一緒に作ったファブリックも面白いですね。今後は、異業種の人がもっとインテリア業界に入っていくと思います。本当はこのファブリックを使って、ウェグナーの椅子を張り替えたかったんだけど、メーカーに問い合わせたら一般には売れないって言われて。“ラフ・シモンズ×ウェグナー”っていう組み合わせ、面白いじゃないですか。

MODERNISM SHOWMODERNISM SHOW
MODERNISM SHOWMODERNISM SHOW

Kvadrat/Raf Simonsのファブリック

「一生モノじゃない」。新しいインテリアとの付き合い方

「今《カッシーナ》などのメーカーが昔のプロダクトの買い戻しをしているんです。ヴィンテージの車と同じ感覚ですよね。それで、買い取ったヴィンテージを認定中古家具としてリセールする。この流れはすごくいいなと思っていて、メーカーはデザインの保護のためにもやったほうがいいことだなと思いますね。この“リセール”というのもこれからすごく重要になってくると思っていて、引っ越しや、家具を買い替えたい時にきちっとリセールする場所があれば、もっと家具も循環していくはずなんです。車のように、車検のたびに乗り換えようっていう感覚が生まれる。そうやって良いデザインやプロダクトが受け継がれていくのが理想ですよね。そもそも、家具ってローンが組めたりするんで、ひとつの家に2年住むとしたらその期間で消化できるような家具を選べばいい。その後、きちっと売れる場所があるといいですよね。あと、ここ最近は特にですけど、家を買うっていう人たちが少なくなってる。だから、賃貸マンションに合わせて、もの作りや仕入れ、売り方も変わっていかなきゃいけないと思うんです。ヴィンテージ家具を数点入れただけじゃ、部屋って完成しないじゃないですか? トータルコーディネートするには住宅環境から変えなきゃいけないけど、そこまでやれる人って経済的にもすごく限られてしまう。だから、まずは自分のパーソナルな部分、自分の部屋だけでもいいと思うんですけど良いデザインに触れて欲しいですよね。それが生活を豊かにするものだということをもっと知って欲しい。高級車に乗って、《イケア》にインテリアを買いに行くような国ってあまり無いと思んですよ。それくらいインテリアへの認識が低い。そんな現状だからこそ、インテリアに対する意識が変わることで生まれる可能性ってすごく大きいですよね。

about THEM

郷古隆洋
Swimsuit Department
郷古隆洋

ユナイテッドアローズ、ランドスケーププロダクツを経て、2010年Swimsuit Departmentを設立。輸入代理店をはじめ、世界各国で買い付けたヴィンテージ雑貨などを、トランクショー形式でのイベントも開催している。

www.swimsuit-department.com

成田博昭
FRUCTUS Director
成田博昭

1974年神奈川県生まれ。2002年目黒にインテリアショップ『ローレイダー』オープン。2006年株式会社エルモルイス設立、『connect auction』主宰。2010年千駄ケ谷に『FRUCTUS』オープン。FRUCTUSの運営、世界中のヴィンテージデザインオークションを研究する傍ら、ARCHITECTURAL POTTERY、SERGE MOUILLE LAMPの正規輸入販売を行う。

www.fructus.jp

www.901design.com

1 2

FOLLOW US

pickup JOURNALS