HELLY HANSEN and some creators 01

THE QUIET CLAIM “創り出す”人たち
木と対話する木工作家の1日。

映像・写真:松原裕之 編集:kontakt
カバーデザイン:菅谷幸生
BOOKMARK

工作家の盛永省治さんは鹿児島で生まれ、今も県内で製作を続けている。彼が工房を置く日置市は、多くの窯元が存在する焼き物の産地として知られる場所。独立とともに、もともと車の修理工場だった建物を工房として借りて今年で10年になる。まるで木が“生きている”かのようなその作品は、木の青い匂いが立ち込める工房から生み出されていた。

生きている。だからこそ、面白い

丸太を選ぶ。決め手は切り口と皮の状態。頭に形をイメージしながらチェーンソーを操り、旋盤にセットする。イメージはあくまで仮想。実際は削りながら、木と対話するように仕上がりを定めていく。決まった形などない。生き物が相手だから。幾度の微調整を経て、終わりを見極める。次にヤスリ。6種類の番手を使い分け、ヌメっとした独特な手触りが得られるまで丁寧にあてる。そして乾燥。約2週間後、それは全く想像もしていなかった変化を遂げる。木の節から歪みが生まれ、人の手では到底生み出せない美しい曲線を描く。この自然の変化こそ、盛永省治さんの作品の特徴とも言える。“生きている”。彼は何度もこう口にした。製材として加工される前の生の状態だからこそ、創り出せるものがある。木と格闘する男のある1日を追った。

HELLY HANSEN

「もともと、プロダクトデザイナーになりたくて大学でデザインの勉強をしていたんです。でも、性格上、人と喋ったりするのがあまり得意ではないので、それよりは自分で手を動かして作る方が向いてるかなというのがあって。たまたま、実家の近くに家具の工房があって、そこに頼み込んで半ば強引に働かせてもらうようになったのが始まりです。そこで7年間働かせてもらって、そろそろ自分で考えて作りたいという気持ちが強くなって独立しました。といってもすぐに仕事がある訳もなく、やることがないのでもともと作りたかった小さな器を見よう見真似で作り始めた。今考えると恐いんですけど(笑)。木工作家なんて言うとおこがましいですけど、そこから作家っぽい活動も始めていくようになったんです」。

HELLY HANSENHELLY HANSEN

盛永さんの自宅前にて。鹿児島市内と桜島を一望できる高台の上に建つ。

口下手でシャイ。盛永さんに初めて会った時の印象だ。「作家っぽい」と恐縮する口ぶりにもその人柄が滲んでいる。家具職人として経験を積んだ盛永さんは、独立後も加工された製材を使って作品を作っていたという。転機は4年前、海の向こうにあった。
「アメリカで活動している彫刻家のアルマ・アレンとの出会いが大きな転機になりました。ある時、ランドスケーププロダクツの中原慎一郎さんに『手伝って欲しいって言ってるから、行ってくれば?』って軽いノリで言われたことがきっかけ。実際に連絡してみたら、ボウルを200個作らなくちゃいけないから、とりあえず手伝ってくれって。最初はほんとに旅行みたいな感じで彼が色々なところに連れて行ってくれたんですけど、その後はもう普通に仕事してましたね(笑)。朝から作業して、夜帰って寝る生活。そこで、彼の創作活動を間近で見て、ものづくりのスケールの大きさや自由さっていうところにすごく衝撃を受けた。そこから自分の創作についてより考えるようになったんです」。

HELLY HANSEN

HELLY HANSENHELLY HANSEN

丸太を購入している工場。良い木が埋もれてしまわないよう、足繁く通っている。

帰国後、機械を買い替え、丸太から加工する方法を模索し始めた。「丸太から切っていると、いろんな節があったり、割れてたり、乾燥していない材なんで歪んだりするのがいいなと思って。今作っているものは、材料に合わせて形を決めているところもあるので、考えて作りすぎるとよくないこともあるんです。今日みたいにイメージを固めすぎずに作ったものが出来た時にあぁ、いいなって思うこともある。ただ、いつも迷ってますけどね、作風は」。考え事はいつも行き帰りの車中。毎朝5時半に家を出て、17時には仕事を終える規則正しい生活を送る彼は木工作家であり、2児の父でもある。「帰ると子供がワチャワチャしてるので、家は家で大変ですよ。今、上が3歳で下の子はまだ1歳です。上の子はイライラすることもありますけど、かわいいですね。ダダコネですけど…。作品を置いてるお店に連れてったりすると、『あ、父さんのだ』って。木工品は全部父さんのだと思ってるんですよ(笑)」。

HELLY HANSENHELLY HANSEN
HELLY HANSENHELLY HANSEN

乾燥中の作品。水分を含んだ生木は乾燥の過程で美しい変化を遂げる。

決まった型があるわけではない。よって、毎回微妙な修正を繰り返しながら自らが納得する完成形を目指していく。木の個性を感じとる手を頼りに、すべてはその時、決める。「ただ、形を作ろうと思うとなんとなくできちゃうので、細かい形のニュアンスには神経を使うし、自分なりにこだわっています。これも1回昼ごはんの前に作ったんですけど、ちょっと気になってもう1度外側を削り直しりたり。自分にしかわかんないんですけどね」。繊細さと力強さが同居する作品の魅力はとても感覚的な、些細なこだわりによって支えられているのだろう。「やっぱり1個1個出来上がった時は嬉しいですよね。家具のようにできるまでにすごくスパンが長い訳じゃないから、1日に2個くらい作っていると、それなりに達成感があります。本当にそれぞれ個性があって、チェーンソーで切った時にすごい柄が出たりすると、“おぉっ”て。生き物なんで、いつも驚きの連続です」。

HELLY HANSENHELLY HANSEN

「この先、もっと色々な種類の木を使って製作してみたいという想いはありますね。今、丸太を買っている所だと、鹿児島で採れる材料しか手に入らないんですが、北海道とかだと、輸入してくるウォールナットとか、アメリカやカナダから入ってくる木も豊富に揃う。丸太ごと輸送するっていうのは難しいことなので、だったら自分が移動して材料に近いところで作業してみたいと思ってます」。

HELLY HANSENHELLY HANSEN

HELLY HANSEN
HELLY HANSEN

HELLY HANSEN FIBERPILE® JACKET

1961年にフリースの元祖として生まれた FIBERPILE® ジャケット。 軽量かつ保温性も抜群でなにより丈夫なため、リリース当時は海で働く漁師から、山で働く林業者まで多くのワーカーに愛された。こちらは、当時の形を忠実に再現した一着。¥16,000(税抜) HELLY HANSEN 原宿店 TEL 03-6418-9669

about him

Woodturner
盛永省治

1976年、鹿児島県出身。大学で工業デザインや彫刻を学んだ後、家具製作に従事。2007年に独立。鹿児島県・日置市にcrate furniture serviceを設立し活動を続ける。
www.crate-furniture.net


FOLLOW US

pickup JOURNALS