A CAFÉ GEEK

#喫茶部 Vol.02
小谷実由と平野紗季子の徒然喫茶室

写真:丸尾和穂 カバーデザイン:菅谷幸生
文:谷口暁子 編集:kontakt
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#喫茶部 Vol.02<br />小谷実由と平野紗季子の徒然喫茶室

「ちょっと横向いて。いや、反対側。(パシャ) 可愛い!やば!細野晴臣のジャケ写!?」《パーラー キムラヤ》で向かい合って席に座るや否や、互いの写真を取り合う妙齢の女子2人を目の前に、一気に店の空気が緩む。「#喫茶部」をフィーチャーするにあたって、せっかくだから小谷さんお気に入りの喫茶店に、どなたかを招いて対談をしようということになった。喫茶店を語れる友人の心当たりを尋ねると「平野くん」と即答。「彼女くらい喫茶店の話ができる同世代はいない!」と豪語する。早速、平野さんに企画の趣旨を伝え出演依頼をすると、ふたつ返事で「楽しそう!」と快諾の連絡がきた。20代もそこそこの女子たちから飛び出す喫茶店話とは。リクエストメニューだった小谷さんのクリームソーダと、平野さんのアイスミルクとバタートーストがテーブルに並び、早速対談は始まった。

小谷実由(以下、小谷):やっぱりここは、一番クリームソーダが似合う喫茶店だよね。

平野紗季子(以下、平野):輝いてる。クリームソーダ史上最高の舞台だよね(笑)。

小谷:うん。ここはクリームソーダの武道館です(笑)。

平野:バタートーストも完璧じゃん。何これ。神々しさ100!

小谷:この絵は完璧や。アイスミルクと君のワンピースの組み合わせとかも最高だ。

喫茶店の住人たち

マニアックな言葉の掛け合いで対談はゆるりとスタートした。まずは、そもそもお二人が喫茶店にハマったきっかけから伺う。

小谷:元々昭和っぽいものが好きで、最初はお洋服から。そこから、コーヒー好きの友人に連れて行ってもらった喫茶店で感じた、時が止まっているような世界観に感動したんです。ああ、ここの天井の染みも最初はなかったんだろうな〜とか、壁掛けのメニューが新品だった昔のことを想像しちゃう。お客さんでも、あのおじさんは若い頃から通ってたのかな、とか。

平野:私の喫茶通いは、それこそ新橋から始まってます。《牛かつ もと村》っていうニュー新橋ビルの中にあるお店にずっと行きたくて。その時何も知らずにニュー新橋ビルに入ったら、牛かつよりも喫茶店に衝撃を受けて。巨大な富士山の写真が飾ってあったり、グランドピアノがでーんと中央に置かれてたり、どこも信じられないくらい格好良くて、変過ぎて、すっごく感動して喫茶店って面白いなって。

小谷:でも、私たちが見ている喫茶店のポイントって違うよね。私は内装とか、雰囲気重視。

平野:私は多分、人。人が変なところ(笑)。普段はなかなか関わらない、おじさんとかおばさんとか、職業不明者とか。そういう人たちに会える場所。喫茶店って、本当にみんな他人に興味ないし、みんな自由。《ルノアール》とか、店舗によってお客さんの過ごし方が相当違うのとか面白い。

小谷:分かる〜。ルノアールはやばいです。

平野:うん。やっぱりルノアールは変だよね。変な人が集まってる。私は小さい頃から喫茶店に行く文化はなかったし、ファミレスとかに家族で行く感じだったから、カフェが流行ったときは通ったな〜。高一の頃とか、東京カフェマップみたいなの買って、ひとりでカフェに行くことがすごい好きで。でも、それも段々飽きてくる。黒板とか可愛いラテアートとか、全部私たちのために作られてて、私たちが消費ターゲットになってる感じがあったから。

小谷:考え過ぎかもしれないけど、「好きなんでしょ?」みたいに仕掛けられてる感じ(笑)。

平野:そう!だから喫茶店の得体の知れなさが落ち着く。自分なんかは居ても居なくてもいいような存在っていう扱いもいい。

小谷:あと入り口にある食品サンプル。今って、すっごいリアルじゃん。本物なのか?って触ってみるまで半信半疑に思うものが多いけど、こことか、昔ながらの洋食屋さんにはサンプル感がちゃんとある。そういうところも好き。バランスがとれているというか、空間的に素晴らしい。時間がちゃんと止まっている感じ。

喫茶文化とカフェ文化

平野:ちゃんと止まっているのに、ちゃんと生きているよね。衰退していない感じ。お店にもよるけど、今駅前とかにぽんっとある当たり障りない感じのおしゃれカフェが古くなったとき、良いものになるのかどうかは疑問かなあ。

小谷:最先端の先端だけを切り取っている感じはあるかも。あと、カフェってターゲットがちゃんとあって「主婦層に人気」とか「野菜がいっぱい」みたいにカテゴライズされているから分かり易さはありつつ、お客さんを選んでる感じがする。

平野:マーケティングの匂いがする(笑)。でもさ、「カフェと名乗れど心は錦!」みたいな、カフェというものに対して誇りを持ってお店をやってる素敵な個人店もたくさんあるよね。

小谷:でた。今日も名言出た(笑)!そういうお店の良さは確実にあるよね。あとカフェの良さって、立地だったりメニューだったり価格設定だったり、便利さとか手軽さは喫茶店よりあるかな。

平野:やっぱりネットが繋がるのは大きいかも。でもさー、《名曲喫茶ライオン》って何故か有線LAN通ってるんだよね。

小谷:え!?嘘!!こないだ行ったけど、そういう文明の利器的なのは見かけなかった。

平野:ステレオに面して一方方向に席が並んでるじゃん?そこの窓際の一部の5列くらいだけ、なんか青い線が出てるよ(笑)。

小谷:空気に呑まれて、そんなとこ見えなかった(笑)。

平野:私、初めて行ったとき具合い悪くなったもんね、世界に呑まれ過ぎて(笑)。まずアイスティーにガムシロが入っている文化を知らなくて、私、ノンシュガーで飲みたいのに、甘!みたいな。甘いし、なんかすごいクラシックかかってるし、青いし、ひやーーー!!って。

小谷:もう全部持ってかれたんだね(笑)。こだわり全部なくされた、みたいな。

平野:もう憩うことを忘れた(笑)。

七変化する定番の罠

ここで少し、食ライター平野紗季子が思う喫茶店の食文化、というか定番メニューの魅力を聞いた。

平野:不思議がいっぱい(笑)。

小谷:素晴らしいです、今日も。ふわふわしてますね(笑)。

平野:変じゃん!だって(笑)。常識を覆されることが本当に多くて。

小谷:わかる!わかる!定番のメニューなのにっていうのがあるよね。

平野:そうそう。みんな独自ウェイだから、アイスティーに最初からガムシロ入ってるところもあれば、めっちゃ紅茶の渋味の強いお店とか。でも「それもいい!」って受け取らされちゃう感じとか。

小谷:そう。だからそこも、呑まれてるんですよ、店の世界観に。でも、呑まれても嫌な気持ちがしない。

平野:そう。違和感にならない。なぜなら、それぞれの世界の大切な登場人物だから(笑)。前にね、このビルにある《ポンヌフ》行ったんだけど、そこってナポリタンを頼むとバターロールがついてくるのね。で、夏でもちょー暑いの(笑)。そこに、大汗かいた太ったサラリーマンのおじさんが来て、唐突にナポリタンをバターロールに詰めて、自分でナポリタンロールを作って食べてて、もうちょー美味しそうなの!

小谷:それは、美味しいための色んな条件を満たしてるよね。サラリーマンで、時間に追われてて、暑いし、汗かいてるし、炭水化物オン炭水化物だし、極めつけは、自分で作っちゃう!みたいな。

平野:make your own sandwichなわけで。そういう風景とかも面白いなって思うし、いちいち不思議。一筋縄ではいかない物語が多い。だから、ちょっと勇気がいるんですよ、注文のときに。何が出てくるんだろうって。“パフェ”って言っても店によって全然違うし。着色された花とか乗ってて、クリームがピンク色に染まってるのとか。「うぉーー!クラシックー!」みたいなね。

小谷:うんうん。シンプルな王道デザートもあれば、《ソワレ》のゼリーポンチみたいなのもあるし。

平野:あれはいいよね〜。あのケミカルな極彩色。ヘルタースケルターっぽい。

小谷:でもソワレって、お正月はちょーシンプルなメニューになるの。やっぱりあの時期の京都はすごく混むから、コーヒーと紅茶くらい。レモンスカッシュすらない。初めていったときが三箇日だったから、おやおや?みたいな。

平野:へー!そうなんだ〜。マイウェイだね。

小谷:いや、マイウェイ過ぎるだろ!って(笑)。みんな狙いはゼリーポンチだろっていう感じなのに、「やってません、お正月なんで」みたいな潔さ(笑)。

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