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今起きているリアルな“生活革命”

写真:神藤 剛 編集:奥原麻衣子
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今起きているリアルな“生活革命”

ブルックリンやポートランドの小さなコミュニティから生み出される働き方や暮らし方を例に、金融危機以降にアメリカで起きている価値観のシフトや新たなムーブメントを紹介している一冊が『ヒップな生活革命』。著者であるニューヨーク在住のライター佐久間裕美子さんと、東京・馬喰町で、昔ながらの生活道具を扱う荒物問屋、松野屋の店主松野弘さん。世代も、暮らす場所も異なる二人がこの一冊の本を通じて、共感しあえたこととは?

小商いとSmall Business

編集部:今いろいろな取り組みで交流があるというお二人ですが、知り合うきっかけとは?

佐久間:編集者である私の妹が、以前に松野さんのページを担当したことがあって。銀座松屋で松野さんがイベントをやっていた時に、ちょうど刊行されたばかりの「ヒップな生活革命」を届けてくれたんです。

松野:いただいた本を読んだとき、深く感銘を受け共感部分も多かった。取引のあるイギリスの「LABOUR AND WAIT」も、同じことを考えているのだと、この本を読んだことで改めて解ったり。最初は、お互いに知りも知らない同士だったけれど、でも考えていることは同じだと思った。この本を通して分かり合える感動はとても大きかったですね。
 僕には、ブルックリンの地域性と、この馬喰町辺りの地域性が重なるんです。若いクリエイターたちが、安い物件を見つけては、自分たちのお財布に合うアレンジ=リノベーションをして、無理せず背丈にあったことをコツコツやっているところとか。

松野弘

それにこのあたりは、小商いたちが集まっている街。僕の名刺のデザインをして活版印刷で作ってくれる人がいたり。パンフレット一枚作りたいって相談すれば、デザイナーや、ライター、カメラマンに一声かけただけで、その日に集まれる。その場でジャッジできる人たちがたくさんいるんですよね。

佐久間:小商いのことを、アメリカではSmall Businessと言っていて、以前から奨励する動きはありましたが、SNSの影響力もあり、ここへきて増加に勢いが加わっています。 日本でも、小商いにちなんだ本が最近たくさん出ていますよね。『小商いのすすめ』(ミシマ社)や、雑誌『Spectator』でも“小商い”という特集をしていたこともありました。最近、昔から言われている “Think Globally, Act Locally”「地球規模で考え、地域で身近な行動をする」という意味を持つ言葉を考えることが増えました 。自分の手の届く範囲でやりたいけれど、ムーブメントが大きくならないと価値観は波及しない。今松野さんと話しているような価値観を遠くの人とも共有できるようになっています。それは、インターネットやSNSの力ももちろん大きいけれど、自分のできる範囲、小さなコミュニティからでもいいから、自分の手の届く範囲からはじめてみようってみんなが思っていう人が増えているということでもある。

松野:『就職しないで生きるには』(晶文社)という本もそうですね。たとえばハイブランドが上陸して国産のものが圧迫されたり、スーパーマーケットが商店街を踏みつぶすというように、大きいものが小さいものに圧力をかける時代がくると、反発する者が出てくる。そういう人たちが、アンダーグラウンドな地域で、就職せず、古本屋や、雑貨屋、花屋や面だけの洋服屋を始め、小商いの店ができる。押しつける時代のあとには、下からの時代がくる。今そういう子たちが現金持って問屋街を歩き回って、デッドストックを探しているのを見かけます。軍足、軍手を10枚一束で買ってきて、染めて売るとか。それが売れたら、現金になって。また、新しいのを買い、売っていく。だんだん、そういうこともスタンダードになってくるのかな。

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