ARTICLE OF CRITIQUE 02

SNS時代の極私的な○○論
SXSW=フェスから創造する、新たな未来

写真:Getty Images
カバーデザイン:菅谷幸生
文:名古摩耶 編集:kontakt
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SNS時代の極私的な○○論<br />SXSW=フェスから創造する、新たな未来

それぞれが多様な価値観によって情報を発信するSNS全盛の時代にあって、“スタンダード”は常にアップデートを続ける存在だ。ここ日本でも年々集客を増やし続けるミュージックフェスも同様に、音楽という枠を超越したカテゴリーシャッフルが頻繁に行われ始めている。音楽を軸により広域なカルチャーを巻き込みながら成長を続ける新しいフェスの指針は、アメリカ・テキサスの地にあった。新たな未来を創造する、フェスというプラットフォームについて。

CRITIQUE 02 : SXSW=フェスから創造する、新たな未来

「サウスバイ行く?」

数年前から3月を前にして、周囲でこんな言葉が合い言葉のように聞かれるようになった。「サウスバイ」とは、SXSW=South by Southwest(サウスバイサウスウェスト)のこと。アメリカはテキサス州都であるオースティンで毎年数日間に渡って開催される、全米最大規模のミュージックフェスティバルであり、1987年の誕生以来、ライブ主義を貫く新しい才能発掘の場として、世界でも特異な地位を確立している。約1週間にも渡って開催されるこのフェスは、音楽に加えて、1994年にフィルム部門が、1996年にはインタラクティブ部門が加わり、現在では3分野を総合すると、約8万人にも迫る動員を誇る。規模も密度も、もはやフェスの枠に収まりきらない巨大なライブ・ショーケースであり、クリエイティブカオスである。

サウスバイが掲げるスローガンは、いたって明快だ。音楽、映画、インタラクティブを通じて「多様な分野の人々を繋ぎ、アイデアをシェアすること」。ここでは有名無名は関係ない。インディペンデントな精神と既成概念にとらわれない自由なクリエイティビティが世界から集まり、ヴィジョンを共有し、新しい未来を創造しようという非常にリベラルで建設的なプラットフォームである。ここで披露されるバンドのギグが、新作映画が、あるいは新しいテクノロジーが、オーディエンスの心を掴み、翌日の朝刊の一面を飾り、そこから業界を揺さぶるセンセーションとなるケースも珍しくない。事実、音楽ではノラ・ジョーンズ、ヤー・ヤー・ヤーズ、ジョン・メイヤーズ、フランツ・フェルディナンド、フォスター・ザ・ピープル、ザ・ストロークス、ザ・ホワイト・ストライプス、ハンソン、それにケイティ・ペリーだって、SXSWでのパフォーマンスを抜きに、今の姿はあり得ないのである。既にアメリカでは人気を手にしていたベックやベンフォールズ・ファイブだって、サウスバイが世界的成功の足がかりになったと言われている。

音楽だけではない。今では、かつてインディペンデント映画の宝庫と言われたNYのトライベッカ・フィルムフェスティバル以上に、世界の映画界から熱い視線が注がれるのがサウスバイであり、インタラクティブ分野では、WikipediaやTwitter、そしてUberが、ここから世界に羽ばたいていったと言えば、それ以上の説明はいらないだろう。

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about her

PR Consultant & Writer
名古摩耶

1978年、兵庫県生まれ。PRコンサルティングエージェンシー・MN TOKYO代表、『WIRED』日本版コントリビューティングエディター、ライター。『highfashion』、『Esquire』日本版、『X-Knowledge HOME』などで、エディター及びライターとしてファッションやアート、建築周辺の記事を手掛ける。その後、ファッションPR&セールスエージェンシーでのクリエイティブディレクター職を経て、2014年独立し、自身のエージェンシーを設立するとともに、メディアでの執筆活動を再開。また、7月9日に開催されるコンデナスト・ジャパン主催の「DECODED FASHION TOKYO」では、プロジェクトメンバーとして主にコンテンツ周りを担当。


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