FISHES GIVE YOU A WAY OF COMMUNICATION

世界に誇るアーバンアウトドア 最新!
都会の〝TSURIBORI(=釣り堀)″ガイド2015

写真:河津達成 取材・文:飯島木子 (P1-2) 佐々木 好 (P3)
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釣り堀

 「釣れない日は人生について考える時間を魚がくれたと思え」。アーネスト・ヘミングウェイは名著『老人と海』のなかでこう書いた。
 釣りは大半の時間を“待つ”ことに費やす。無駄にも思える(釣っても逃すのなら尚更)その時間が、自分と向き合える時間で、それが都内で気軽に体験できるのなら、こんなに嬉しいことはない。
 釣り堀は日本独自に発展したカルチャーといっていいだろう。都内には有数の釣り堀が存在するが、それぞれが個性的で面白い。今回、ホテルのプールを改築した「品川フィッシングガーデン」、閑静な住宅地にある南麻布の「釣堀 衆楽園」、釣り堀メシが有名な永福町の「つりぼり武蔵野園」、さらに、JR市ヶ谷駅を降りると目の前に広がる「市ヶ谷フィッシュセンター」に出向いた。どの釣り掘にも、ゆったりとした穏やかな時間が流れ、日頃どれだけ生き急ぐような感覚に支配されているかを再認識する。プライベートの時間でも、スマートフォンやタブレットで過ごす時間とは、全くの別世界が広がるのだ。そして何よりも釣り堀にいる釣り人たちとのコミュニケーション。あかの他人が、釣り竿を持てば仲間になる。非日常的な空間だが、優しいホームのような時間。魚の気持ちを知りつくした店主はもちろん、仕事の合間を縫って釣りを楽しむサラリーマン、授業終わりの女子大学生、十年以上も通い続ける達人などなど、釣り堀に来ていた客の話から、釣り堀の魅力を考える。

001:釣堀 衆楽園

猫と魚と釣りの達人。麻布の風情を楽しむ

 天現寺の交差点近く、南麻布3丁目の高級住宅街は、歩いているだけでちょっとした非日常感に浸れる。からっと晴れた日には、散歩するのが気持ち良い。そんな中にも、ひっそりと、知る人ぞ知る釣り堀がある。昭和初期から続く「衆楽園」だ。入り口には白い猫が鎮座。客の心をしっかり掴む看板猫が見守るこの釣り堀は、へラブナ釣り専門。ヘラブナは鯉などの魚に比べると釣り上げる難易度も高い、釣り人泣かせの魚である。待ち時間も必然的に長くなる。だからこそリラックスした雰囲気で、忙しい日常から解放させてくれるというわけだ。
 取材に訪れた日、「衆楽園」には、iPodで音楽を聴きながら釣りをする単身の男性、熟年の夫婦、そして常連のおじいちゃんが座布団のうえであぐらをかきながら、たばこをふかし、ウキと向き合っていた。
 そこにいるみんながヘラブナに手こずっている間、一人だけ何匹も釣り上げている常連のおじいちゃん。この日は池の主とも思われる20cm近くのヘラブナを釣り上げていた。

 「いや〜、今日はあんまり釣れないね。恥ずかしいから、見ないでくれよ」
 20年以上も品川にある自宅からここ「釣堀 衆楽園」に通い続けるおじいちゃん。自前の練り餌をつけ、さらに竿からウキまで、釣り道具までも自身でカスタマイズを施している。
 「海釣りとか、本格的な川釣りと違って、こうして道具も自分で工夫して、改造することができる。そして、それを試して、結果を見ることができるのが釣り掘の面白さでもあるんだよね」
 そして最後に、「ここの練り餌は最高級だよ。あんた、これで釣れなかったら、下手っぴだね」と言い残して、自前の道具を持ってバスで帰っていった。この身軽さも釣り堀のいいところなのだろう。何世代も上のおじいちゃんでさえ、この釣り堀では、頼りがいある先輩のようだった。
 店主によると、今の季節が一番おすすめ。気温が安定している時期はよく釣れるそう。一人で極楽に浸るもよし、デートで訪れるもよしの釣り堀だ。

釣堀 衆楽園
住所:東京都港区南麻布3-9-6
時間:8:00-16:00(第二・第四水曜日と雨天・強風の日は休み)
料金:1時間 600円 (貸し竿/200円・餌代50円~)

002:品川フィッシングガーデン

爆釣必須!高層ビルが水面に映る釣り堀

 JR品川駅高輪口から徒歩3分、大都会の中にも、束の間の非日常がある。ホテルのプールを改装した釣り堀「品川フィッシングガーデン」は2011年9月にオープン。昭和からあったプールということもあってか、どこかノスタルジックなリゾートといった雰囲気が漂う。アメリカでは、スケーターたちが使われなくなったプールを利用して、スケートにこうじるというが、プールを利用して釣り堀にしてしまう、というのもなかなか良い。

 平日昼間ということもあり、ビジネスシティのど真ん中にある、「品川フィッシングセンター」は比較的すいていて、地上もそして水中も静かで、ゆったりとした時間が流れていた。そんななか、釣り針に練り餌をつけ、待つこと数分、魚が餌にかかった。(手が持っていかれそうになる感覚がクセになる) 初心者だと、魚を網に入れるのが、なかなか難しい。水しぶきをあげる魚と、水面に反射する高層ビルがなんとも不思議なコントラストだ。そんな都会のオアシスに会社の休みを利用して釣り堀に来ていた石田さんに話を訊いてみた。
 「子供の頃、実家がある新潟で、祖父に連れられ釣りを始めたんです。品川フィッシングガーデンは初めてで、本当は奥多摩ぐらいに釣りに行こうと思っていたんですけど、ゆっくりしたかったし、ここだったら明日にも響かないかなと思って来てみました」
 石田さんは慣れた手つきで練り餌をつけ、釣り針を落とすが、なかなか魚がかからない。そうしてウキとにらめっこを続ける石田さんの隣には、何匹も連続で釣りあげる達人がいる。釣り歴20年以上のベテラン、白石さん。石田さんは、そんな白石さんに魚をばらさないコツを聞きだす。隣同士、釣り竿を持つことで、心置きないコミュニケーションが取れるのも、釣り堀の魅力である。
 品川のような都会で空き時間を潰すなら、惰性的にカフェで過ごすより、釣り堀に出向いたほうが、趣ある体験ができることは間違いないだろう。そして「品川フィッシングガーデン」の良さは、魚の釣りやすさにある。まだ釣り堀に慣れていない(頭の悪い)鯉が放流されているため、針を落とすと、確実にアタリがくる。初心者でも十分に楽しめるスポットだ。また、夏季限定で、釣り堀のそばでビアガーデンも開催されている。“近場のアウトドア体験”として、はたまた単なる時間潰しとして、足を運んでみるのもいい。

品川フィッシングガーデン
住所:東京都港区高輪3-13-3
時間:平日11:00-21:00 土日祝9:00-21:00
料金:大人1時間 1190円 (貸し竿・餌代込み)

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