SKETCH OF MODERN FASHION

賢者が明かすファッションの現在

写真:宮本陽平 編集:kontakt
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賢者が明かすファッションの現在

《オールデン》コードバンのプレーントゥー、《セントジェームス》のボーダーT、《ヘインズ》の白T、《ブルックス ブラザーズ》のボタンダウンシャツ、《ニューバランス》の1300etc……。俗に“定番”と呼ばれるアイテムはたくさん世の中に存在している。でもこれが本当にスタンダードなのだろうか? スタイリスト、バイヤー、フォトグラファーとして第一線でファッションと肌を触れ合う3名のスペシャリストたちの放談。ファッションのスタンダードとは何だろう?

祐真朋樹 (スタイリスト)
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シトウレイ (ストリートスタイルフォトグラファー)
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小木“POGGY”基史 (UNITED ARROWS & SONS ディレクター)

”服を着る”という楽しさ!

祐真朋樹(以下祐):なにから話せばいいんだろうね(笑)。そもそも今よく聞くノームコアってどういう意味で解釈してる?

小木基史(以下小):僕もシトウさんと先ほど改めて調べていたんですけど(笑)

祐:ボーダーTとかそういうこと?

小:あまりブランドとかに捕われず、自分らしく着ること、みたいなことらしいです。

祐:カタチじゃなく精神的なものってこと?

シトウレイ(以下シ):その人自体がおしゃれであれば、おしゃれをする必要はないじゃんということですかね。その人がしっかりしていれば、着飾る必要はございませんっていう。私もさっき調べたんですけどね(笑)。

小:僕も何度かこの言葉を耳にしたことはあったんですけど、正直今まであまり意識したことはありませんでした。

祐:もし、そういう考えであれば僕たちとは無縁なのでしょうね。おそらく、逆説的にブランドものに踊らされている人たちの格好を見て、ファッションヴィクティムと揶揄したり、それは悲劇だし、そんなブランドものに振り回されない俺たちは何を着たってかっこいいんだっていうことなのじゃないかな。そうだとすると、そういうアゲインストな流れは昔からあるよね。単純に言葉が変わってるだけなのかなって。「あいつ流行り物ばっかり着てるけど、全然似合ってないよな」みたいな。

シ:そうですね。

祐:そういうのは常にあることだと思うよ。ただそれも一つのファッションのかたちだとは思う。実際に“ファック・モード”って言いつつも、モードファッションを発信する人もいるじゃない? アレキサンダー・マックイーンも、「ファッションなんてファックだ」って文句言いながらも、《ジバンシィ》のクリティブディレクターを務めていたでしょ。

小:生き方としての意味もあるでしょうね。

祐:たとえば《イッセイミヤケ》の黒のタートルネックしか着ていなかったっていうスティーブ・ジョブスのような? “あなたも、あなたなりに“なんて言うのは、占い師みたいでちょっと嫌だけど。

小:本人たちはそんな意識してないですよね。こうしたネームとかは、勝手にメディアがつけて、カテゴライズしているだけだと思うんです。

祐:でも、それはつまり今、ブランドそのものの力が衰退していることを示しているよね。僕はメンズ中心だけど、毎シーズンパリとかミラノでコレクションを見ていると、なんか「同じ感じだな」と正直感じたりする。同じようなものを高いお金を出して毎シーズン買うんだったら、ブランドものじゃないものを買ったほうが、きっとおしゃれに見えるんじゃ? ってところから派生した考え方でもある気がするね。

シ:祐真さんご自身の買い物は、最近変わりましたか?

祐:最近はどうだろう。結構昔からいろんなものを買うんですよ。デザイナーの洋服ばかり買っているように見られがちだけど、意外とそうでもないんです。基本的には何でも買っちゃう。それを適当に着ることが一番好きなんです。

小:本来のファッションの楽しさですね。

祐:どうしてもメディアでなにか紹介するとなると、ちゃんとしたブランドを出したいという意識はあるけど、基本的に自分の格好はちゃらんぽらんだよね。

シ:デザイナーでいうとどうですか?

祐:面白い人というのうはそんなにたくさんいないよね。時代を動かすような人は、10年とか20年に一人ぐらいかな。だから、そういう人を見ると、「これはすごいな!」とか「この人は確実に時代を動かすな」と、嬉しい気分になる。そうすると、またファッションにぐっと惹かれる。だからと言って、そのデザイナーの洋服ばかりを着るというわけではないよ。

シ:最近、ビビビ!っときた人は誰かいました?

祐:個人的には、ジョナサン・アンダーソンが面白いと思うね。彼はなんか起こす気がして注目している。彼のクリエイションのように「かっこいいな!」って思えるものに出合うと、「この服はなんでかっこよく見えるんだろう?」って考えるし、なるべく触れたり、近づいていたくなる。それがファッションの楽しさだと個人的に思っているよね。

シ:俗にみんなが言う“定番もの”っていうのは、欲しい洋服がないっていう気持ちの現れかもしれないですね。

小:たしかに“定番”という言葉は色々なメディアで見ますよね。

祐:そうやってみんなが言ってる“定番”って何?《リーバイス》の“501”とかってこと?

小:そうですね。《オールデン》の“990”とか、《ラコステ》のメイドインフランスのポロシャツとかですかね。といっても、日本人が決めた定番だと思いますし、古くからあるものは、自然と定番と呼ばれている風潮があると思います。

祐:最近《バラクータ》のスウィングトップ”G9”買ったけど、それも定番?

小:“定番”に入りますね。

祐:なるほど。だけど僕は《ロエベ》の靴とかも買うんだよね。今日も履いてるけど。無責任に聞こえるかもしれないけど、“良いものは良い”。

シ:小木さんは最近ファッションで変わったことあります? 結構ファッションが変わっている印象があるんですけど……。

小:そうですね、とりあえずネクタイはしないことが多くなりましたね。もちろんスーツを着るときはしていますけど、最近はずっとハットを被っているので、それにネクタイして、この髭っていうのは、なんか暑苦しい気がして(笑)。

シ:どうしてハット被るんですか?

小:なぜでしょうね? ここ数年はずっとハットですね。

祐:でも似合ってるよね。

小:ハットとかの被りモノもいろいろ変えていたんですけど、海外の人からも“POGGY=ハット”と言われるようにもなってきていたり、ハット被らないと、誰も気づいてくれなかったり(笑)。ジャケットのインナーにTシャツを着て、足元はスニーカー、それにハットみたいなイメージがあるようです。

祐:スタイルが出来上がってるんだね。

小:そうなのかもしれません。前まではシトウさんがおっしゃっていたようにころころスタイルを変えていたんですけど。祐真さんも同じかもしれないんですけど、着こなすのが難しいアイテムを見つけてしまうと、何だか挑戦したくなりませんか? 僕はそういうパターンが多いんです。

祐:そうだね。

シ:私もそうですね。趣味じゃないものを見つけたら買うようにしています。

小:そうなんですよね!大抵の人は、そこに挑戦しないじゃないですか。やっぱり失敗したくない気持ちがあるからだと思うんです。

シ:そうですね。失敗したなと反省するときも何度もある。

小:朝家を出る時はいいな、と思うんですけど、日中に鏡とかで見ると、「これやっぱりナシだな」っていう(笑)。でも、そういう感覚が好きなのかもしれないですね。失敗することを楽しんでいるみたいな。年をとるにつれて、スタイルは決まってくるのは当たり前だと思うんですけど、そこをあえて崩していく。そうすると思わぬ発見があると思ってます。

祐:僕も何度もあるなぁ。自分のイケてないファッションを見ると、どこにも行きたくなくなっちゃたりするんだよね、今日は帰ろうって(笑)。

シ:女性の変身願望とはまた違う感じですよね。

小:そうですね。自分に何が似合うのかっていう答えが見つからずに、迷走しているんだと思います。「もっと似合うものがきっとあるんじゃないか?」と思っていたりもしますよね。

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