DECKED OUT THE FEET

特集:スニーカーはファッションを変えるか
Vol.02 Architecture and Sneakers

写真:竹内一将 編集:kontakt
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特集:スニーカーはファッションを変えるか<br />Vol.02 Architecture and Sneakers

“Normcore(ノームコア)”という言葉が世間に浸透して以来、スニーカーは自身のアイデンティティーを示す上で重要な役割を果たすようになった。それはもちろん、男女ともに。過度な装飾のないシンプルな洋服にどんなシューズを合わせるか。そのチョイスにこそ、個性を見出すことができる時代だ。90年代のそれとは性質の異なるスニーカーブームの渦中にある昨今、スニーカーはファッションをどう変えていくのか。

清永浩文 (SOPH.)
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荒木信雄 (建築家)
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ムラカミカイエ (SIMONE INC.)

今年3月21日。東京・原宿にあるスニーカーショップがオープンした。『Architecture and Sneakers』。掲げたのは2つ。「建築」そして「スニーカー」。相容れない双方を繋ぐのは“HIPHOP”カルチャーが持つ独自の解釈だ。スニーカーというアイテムを通して時代を俯瞰し、再構築すること。まったく新しいスニーカーショップは、足下から時代を再編集する。

『Architecture and Sneakers』を主宰する清永浩文氏

『Architecture and Sneakers』の仕掛人であり、ファッションブランド《SOPHNET.》を手掛ける清永浩文氏、同店の内装を手掛けた建築家の荒木信雄氏、ロゴデザインを担当したクリエイティブディレクターのムラカミカイエ氏の3者による鼎談。進化をやめないスニーカー、あるいはともに変容するファッションについて。

建築とスニーカーを繋ぐ“HIPHOP”的解釈

荒木信雄(以下/荒木):ひと言で言うなら、清永くんの部屋でしょ? 僕への最初のオーダーがスニーカー好きの人がくつろげるような空間っていうものだったから。日本も、それこそNYとかでもそうだけど、スニーカーショップって商品が所狭しに並んでるイメージがあるじゃないですか? それよりは、お店の軸をスニーカーっていうモノだけじゃなくもう少し人寄りにして、心地良さとか、ゆっくり吟味できるような雰囲気に置くような感覚というか。

清永浩文(以下/清永):このプロジェクトは一昨年の年末には自分のなかで“やろう”って決めてたんですけど、やるならまったく新しいスニーカーショップを作りたいと思っていたんです。それで昨年くらいから国内はもちろん、ニューヨークやロンドンなど、海外のスニーカーショップを周って世界の現状を見るなかでアイデアを探しだけど、結局何も見つからなくて。だったらコンセプトから何から全部一から作ろうと。僕も荒木君と同じで、スニーカーショップってどこも一緒だなっていうのを感じていたから、これまでに無い空間、ラインナップ、見せ方っていう部分でスニーカーショップの新しいスタンダードを作りたいと思ったんです。ただ、肝心の方向性がなかなか決まらず……。オープン日も決まって最後の最後、ギリギリのところで“部屋にしよう”ってコンセプトが決まって。例えば、普通の家ならそこにオブジェや陶器、アートなんかを飾るような空間にスニーカーを置く。スニーカーをファッションアイテムっていうよりはひとつの完成されたプロダクトとして、アートピースとして見ることのできるお店にしようと。

同店の内装を手掛けた建築家・荒木信雄氏

ムラカミカイエ(以下/ムラカミ):僕はお二人の話し合いがある程度落ち着いた頃に声を掛けてもらったんですけど、お店の名前を『A+S』、“建築とスニーカー”でやりたいんだよねって話をされて。最初は、なんだなんだ!?って(笑)。作業を進めるうちに、初期のコンセプチュアル思考だった《SOPHNET.》の記憶が再燃してきて、久々に思想を提案する面白さが感じられるお店ができるんだなって。

清永:元々、時代のなかでスニーカーがなんとなくキテるっていうのは感じてたんですけど、東京オリンピックが決まったこともお店を作るきかっけのひとつ。スポーツに特化したブランドをやってるくらい、とにかくスポーツが好きだから、直接的ではないけどリンクできたらいいなという想いがありました。スニーカーで言うと、近年はずっとコラボレーションとかエクスクルーシヴっていうのが取り沙汰されてるじゃないですか? でも、僕はここ何年もずっとインラインのスニーカーがいいなと思っていて。コラボレーションのものだけに人気が集中する感じが腑に落ちなかったんです。高感度なコラボレーションモデルだから一気にマスに広がって、欲しくても買えない人もいっぱいいる。その繰り返しで、気づいたらもう次、次って。もちろん、そういうエクスクルーシヴなモノを否定するつもりもまったくないけど、他にも良いモノはあるよっていう提案がしたかった。どうしてもファッションのニュースとして目立つのはコラボ物とか別注物が多いけど、僕がやるならそこで埋もれちゃうインラインに焦点を当てたラインナップにしようと。

ロゴやHPのデザインを担当したクリエイティブディレクターのムラカミカイエ氏

荒木:そうですよね。あまりにもスピード感が早くなりすぎて僕なんかついていけないですもん。インラインを中心としたお店っていうのがこれからもっと浸透していくといいよね。

清永:そうだね。あと、僕はスニーカーのサイズにすごく敏感なタイプなんです。9ハーフなのか10なのか。その0.5インチの違いってすごく大きいと思うんですよ。例えば自分は9ハーフだって思うとすべてのスニーカーで同じサイズを買ったりする人もいるじゃないですか? でも同じメーカーでもモデルによってサイズ感も違うし、それを使う用途でも変わってくる。ジムで履くならこれくらい、ランニングで使うなら、ファッションアイテムとして履くならってそれぞれちゃんと自分にあったサイズがある。スニーカーってファッションアイテムという以前にスポーツギアとしての要素もあると思うので、繊細なところのサイズまで理解して履いてもらいたいんです。そういう意味でもゆっくり吟味できる空間を作る必要があったんですよね。

—ラインナップは《NIKE》が中心ですが?

清永:今は《NIKE》がメインですけど、《CONVERSE》もいいなと思っていて。ナイキのソールを使ってる《コールハーン》も。あとはデザイナーズブランドのスニーカーも今後積極的に取り扱っていけたらと思っています。単純に売り上げだったら他のスニーカーショップに置いた方がいいんだろうけど、あの店に置きたいって思ってもらえるお店にしていきたいですね。例えば、ラグジュアリーブランドのスニーカーをおきたいと思っても、日本の代理店には断れるけど、本国のデザイナーが置きたいって言ってくれるようなお店。だからこそ、内装とかコンセプトにはこだわりました。

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