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3人の異才が語らう自由なお酒の話・後編

コーディネイト:鈴木純子 写真:松本健太郎 取材・文:谷口暁子
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3人の異才が語らう自由なお酒の話・後編

“お酒”と一口に言っても、その種類の多さには目を見張るし、文化や流儀の違いから難しいイメージを抱きがちだ。だが、お酒というのは思った以上に親しみのある存在で、受け手によって、いかような解釈も許される奔放な液体だ。そんな自由なお酒の世界をナビゲートいただくのは、表参道にあるイタリアンレストラン「フェリチタ」の支配人・永島農氏。そして、めくるめく魅惑の世界に飛び込んでいただいたのは、本にまつわるあらゆることを扱う「BACH」の代表を務めるブックディレクター・幅允孝氏と、富ヶ谷で今最も行列のできるお店のひとつである「アヒルストア」の店主・齊藤輝彦氏。さらに、新聞や雑誌での連載をはじめ、食にまつわる様々な可能性を文章の枠を超えて表現する食ライター・平野紗季子氏の3名だ。異なる職種・世代・性別からの視点で捉える、お酒の新たな楽しみ方を探る。

ベラーチェ 2011

“赤”と“白”の段差をなくす完全発酵

永島農(以下、永島):マッサ・ヴェッキアという造り手のワインで、赤のなかでも面倒ではない一杯だと思います(笑)。

平野紗季子(以下、平野):そういうキャラクターもあるんですね。すごく美味しいです。

永島:ありがとうございます。こちらも発酵しきっているタイプのワインです。

齊藤輝彦(以下、齊藤):完全発酵の意味が、なんか分かるな、こうやって飲んでいると。細かい話なんですけど、僕のなかではベラーチェと竹鶴は、同じ雰囲気があるんですよ。この中だと、パーネヴィーノだけ浮いているように捉えてしまう。

幅允孝(以下、幅):フィニッシュが違うんじゃないかな。最後までグッとまとまる。ベッドメイキングでいうと、最後にシーツをマットの下に入れるか、そのままふわっとかけるだけか(笑)。

永島:面白いのは、完全発酵していれば赤から白に戻っても違和感がない。段差がないんです。

齊藤:段差がない!なるほど。

—— 平野さんは、普段あまり飲まれないとか?

平野:ほとんど飲まないです。

幅:そう言われると、エッセイ本のなかでもお酒の話って全然なかったね。

平野:全く出てこないんですけど、ちょっと今日のこれらは美味し過ぎて、どうしよう!みたいな(笑)。一回美味しさを知ったら困るじゃないですか。これから、どういう人生送ろうかなって(笑)。

幅:飲めばいいんです(笑)。

平野:そうか!簡単だ(笑)!

齊藤:こういう美味しいのばかり飲んでいると、不思議と飲めるようになるんですよ。アヒルストアのお客さんでも、最初は1杯しか飲めなかった方が、3年くらいかけて1人で軽く1本飲めるようになったり。結構成長しますよ(笑)。

永島:次にご紹介するのは、言葉は良くないですが非常に異端なワインです。というのは、絞らないワインなんです。ワインというのは、一般的に葡萄の果実を絞ってジュースにして、それに酵母を添加するか、皮についた酵母で発酵させるかで造るのですが、こちらは葡萄自らの重みで潰れた液体だけでワインにするんです。僕らはフリーランジュースと呼んでいますね。

幅:これは、香りと味の落差が凄絶ですね。それこそ重力に逆らってない感じがする。

齊藤:全然濃くない。濃いのに抜けがいいというか、不思議なバランスですよね。

平野:香りはツンとくるけど、飲むと深みがすごい。一口ごとにどんどん味が変わってく!

ラ バルラ 2009 カーゼ コリーニ

永島:やはり発酵しきっていますから強さもありますし、熟成も可能です。薬剤や酸化防止剤の添加がないものは、どうも生もののように考えがちですが、お酒というのは、きちんと造ってあれば基本的には賞味期限はないですね。

幅:酸化もポジティブということですね?

永島:はい。酸化もポジティブに捉えられます。ただしそれは、それを受け止めるだけの素地があればの話です。

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