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3人の異才が語らう自由なお酒の話・前編

コーディネイト:鈴木純子
写真:松本健太郎 取材・文:谷口暁子
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3人の異才が語らう自由なお酒の話・前編

“お酒”と一口に言っても、その種類の多さには目を見張るし、文化や流儀の違いから難しいイメージを抱きがちだ。だが、お酒というのは思った以上に親しみのある存在で、受け手によって、いかような解釈も許される奔放な液体だ。そんな自由なお酒の世界をナビゲートいただくのは、表参道にあるイタリアンレストラン「フェリチタ」の支配人・永島農氏。そして、めくるめく魅惑の世界に飛び込んでいただいたのは、本にまつわるあらゆることを扱う「BACH」の代表を務めるブックディレクター・幅允孝氏と、富ヶ谷で今最も行列のできるお店のひとつである「アヒルストア」の店主・齊藤輝彦氏。さらに、新聞や雑誌での連載をはじめ、食にまつわる様々な可能性を文章の枠を超えて表現する食ライター・平野紗季子氏の3名だ。異なる職種・世代・性別からの視点で捉える、お酒の新たな楽しみ方を探る。

“発酵”が持つ懐の深さ

永島農(以下、永島):本日お出しするお酒で醸造酒に関しては、“発酵”という部分をテーマにしています。言葉だけで言うと非常に分かりづらいところではありますが、発酵しきったものが持つ力は、すごく懐が深いという考えがあるんです。それはワインだけではなくて日本酒でも言えることで、一杯目の竹鶴は、酸が嫌われてきた日本酒の世界では珍しく、酸味にフィーチャーして酵母の活動を抑制せずに、酸度を好きなように出させ発酵させきった日本酒です。

平野紗季子(以下、平野):発酵させきるって、普通はむしろ発酵させきらないものなんですね。

幅允孝(以下、幅):確かに。ヴァンナチュールにある酸味とこの酸味は、同じような感じがしますね。

永島:ただ、この竹鶴がもつ酸とワインが持つ酸には、微妙な違いがあるんです。酸にも、かなり種類がありまして、クエン酸やリンゴ酸、コハク酸、乳酸など色々な種類の酸があるので、一概には言えないんですよね。

幅:へー。いいな、勉強になるな(笑)。

齊藤輝彦(以下、齊藤):全然知らないことばっかり(笑)。

永島:頭で飲んでいるわけではないですが、発酵しきったお酒の方が圧倒的に食事にも合いますね。

幅:でも、ソーダで割るというのは面白いですよね。

永島:そうですね。1:1で割っています。この竹鶴は日本酒ですが、加水をしない原酒と呼ばれるものなのでアルコール度数は20度くらいあります。

齊藤:全然そんな感じしないですね。

永島:結局、発酵しきっているから濃度に対して“薄まった”にはならないんです。

平野:“薄まった”にならない!

齊藤:イメージとしては“のばした”感じですか?

永島:そうですね。実はこちらは今日、自宅から持ってきたんですけど抜栓して半年くらい経っているんですよ。

平野:えー!腐らないってことですか?

永島:そうなんです。私もですが、日本酒は開けたらすぐ飲まなければいけないと思われがちですが、竹鶴に出会ってからは全然関係ないんだな、と。

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