NEXT STEP TO RECYCLE

リサイクルのその先

写真:植村忠透 取材・文:谷口暁子
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リサイクルのその先

垂直型イノベーションが生む、夢のようなエネルギー構想

地球上にある全てのゴミをエネルギー資源に変え、ガソリンの代わりにバイオ燃料で自動車を走らせる。そんな絵空事であったはずの未来を現実のものにしようとしている会社がある。今年1月に設立から9期目を迎えた日本環境設計は、これまでのリサイクルの概念を覆す事業計画を掲げ、私たちに全く新しい価値観を提示する。「こんな社会にできたらいいな、という理想型を求めて、やっと会社らしくなりました(笑)」と屈託のない笑顔で語るのは、代表の岩元美智彦氏。2007年の設立から今日に至るまでには、クリアする課題は山積していたという。「技術面もひとつですが、第一に、私たちの事業が皆さんに理解していただくまでに時間がかかりました。それがやっと、技術と並行してうまく伝わるようになってきたところです」

ゴミを資源にする循環型社会

日本環境設計の事業コンセプトは“この世界にあるゴミは、全てが資源である”ということ。今までの私たちが持つリサイクルのイメージは、モノからモノという考え方が一般的であった。例えば、紙なら紙、ペットボトルならペットボトル、牛乳パックなら牛乳パック。岩元氏は、このモノの見方を変えたのだ。「結局は分子を循環させることなんです」

この基本的な考え方をベースとした循環型社会を形成するポイントは2つある。まずは、再生可能技術。これは、今までにない発想の技術だと話す。「スタートはTシャツからバイオエタノールを生成する技術です。これは通常、トウモロコシやサトウキビなど食料から生産されてきたのですが、トウモロコシの価格が高騰した時期がありましたね。それに、食物を原料にしたエネルギーであることが世界中で様々な物議を醸したんです。そこから多くの研究者が、食物以外でエタノールを生成する研究開発をスタートした時期に、当社の事業もスタートしています」

エタノールは、車の燃料としてはもちろん、プラスチックの基礎原料としても利用可能だ。Tシャツを糖に変換し、糖を醗酵させることでエタノールが生成されることは理論上解明されていたのだが、この糖化の技術開発が難しかったそうだ。「当社は、この糖化する技術開発に成功したんです。綿の構造を分解して糖にし、醗酵させエタノールを生成する。基礎研究が成功し、量産工場ができ、事業化に成功し、黒字化させました」

また、事業成功のカギは工場にもある。日本環境設計は、今治に2つの工場を持つ。「今治は、日本で最もタオルを製造している地域なのですが、安価な中国製のタオルにおされて稼働していないプラントがありました。それらの一部を利活用することで初期投資も最小限に抑えています。また、タオルを染色する工程とエタノールを生成する工程が非常に似ていたので、雇用も維持できるという点においても最適な場所だったんです」

コットンをバイオエタノールに。

“分別”を解決する仕組み

技術のコンセプトで、もうひとつ大きな要となるのが、技術を活かす仕組みづくり。その一つが“細かく分別しない”プロセス開発だ。リサイクルでは、細かく分別すること=資源という共通認識があるのだが、この点において、技術を用いて細かく分別せずに資源に戻すことを可能にしている。「衣類をプラントに入れて、酵素を入れると糖に変換してバイオエタノールになります。この時に作られたバイオエタノールで、今治のタオルを製造する燃料として利用する、というのが事業のスタートでした」

次の仕組みは、携帯電話のリサイクル。「携帯電話に関しても、細かな分別は必要ありません。プラスチック部分は再生油に、その他は貴金属リサイクルのラインへと運ばれます。携帯電話専用のプロセスを作ることで効率的なリサイクルを可能にしました」

発酵炉。ぶどう糖を酵母で発酵。

思考をもっとシンプルに

これらの技術と仕組みは、考え方をいかにシンプルにできるかが成功のカギとなった。「地球にある資源は、地下か地上か、そして無機物か有機物かしか存在しません。つまり、物質は地球上に2種類しか存在しないんです。確かに私たち人間を含めた動植物は活発に活動していますが、地球の質量自体は変わりません。何かに変換されているだけなんです。無機質の再生技術は、ほぼ実用化できていたのですが有機物の技術がなかったんです。」有機物の代表的な元素でいえばCとHとOの3つ。この元素をいかに回すことができるかが大事だと続ける。

繊維からスタートした事業も、現在では全ての有機物をターゲットにしている。数字で見ると、日本国内の焼却されている家庭ゴミは年間おおよそ4,000万t。この全てを日本環境設計の仕組みでリサイクルすると、1,100万tのプラスチック原料が生成され、それらからプラスチック製品が作られたならば、国内需要量(およそ960万t)をまかなうことが可能であると推計している。また、家庭ゴミだけでなく、事業ゴミも加えると10倍の4億tとなり、日本だけで4億4,000万tの資源がある計算になるという。「地下資源に頼らない時代がきたということなんです。これが技術ということですね。これまで資源国家かどうかというのは多くの石油を埋蔵しているかどうかだと考えられていましたが、それは一昔前の話なんです。資源国家かどうかは、最先端テクノロジーをもっているかどうかなんです」

消費者参加型の持続可能な社会の形成

循環型社会を形成する2つ目のポイントは、持続可能な社会を作るために、いかに消費者を巻き込むかだと話す。「今までのリサイクルでは、消費者は“分別”することで参加していましたが、もっと購買そのものや、思想に基づいた商品の購入など、ポジティブなアクションであることが持続可能な社会を実現できると考えています」

技術はある。次に必要となるのが、消費者参加型のリサイクルインフラを構築することだった。インフラの構築は、参加企業にはリサイクルを入れた商品の販売と回収ボックスの設置。消費者には、そうした商品の購入と不要品の収集。そこから最先端テクノロジーでリサイクルし、プラスチックや服へと再生するのだ。「これからの世界は『買う→使う→捨てる』から、『買う→使う→リサイクル』が当たり前になります」

このサイクルをベースにスタートした最初のプロジェクトが、“あなたの服を地球の福に。”とした『FUKU-FUKU プロジェクト』。リサイクルや物流のインフラを整備することで参加企業を増やし、より多くの消費者に利用していただくことで、全体のコストを下げることにも繋がったという。

「FUKU-FUKU プロジェクト」でリサイクルされた商品には、トレードマークであるミツバチのタグが。

次にチャレンジしたのが、“プラスチックを地球のプラスに。”としてスタートした『PLA-PLUS プロジェクト』だ。これは、消費者が心理的に生ゴミと一緒に捨てたくない不要品————例えば思い入れのあるおもちゃや文具、身体の一部だった眼鏡などのプラスチック製品のリサイクルだ。小売店でも、生ゴミの回収は現実的ではないが、不要となったプラスチック製品であれば回収にも積極的になれる。「もちろん、ご参加いただいている小売店はライバル関係にある場合もありますが、同じ方向を目指し、協力していくことが完全循環の社会を実現する上では大変重要なことなんです」

「PLA-PLUSプロジェクト」の回収ボックス。

常識とされていた概念からの脱却

技術はできた。消費者参加型のインフラも整った。コストも下げて、持続可能な消費行動に繋げることもできた。その次に必要となるのが、我々ひとりひとりが持つ、これまで常識とされていたイメージからの脱却だ。「“ゴミ”のイメージを変えることで、小売店も参加しやすくなりますし、“捨てる”行為から“生かす”アイディアへ見方を変えていかなくてはいけません。今はまだ、リサイクルの延長線としての概念しか持てない消費者も多いのですが、全く違った概念が必要です。それは技術によるのか、消費者によるのか、まだ新しい言葉は見つかりませんが、ゴミは資源となり、エネルギーを生成できるという思考を持つことが大事なんです」

about him

President of JEPLAN
岩元美智彦

1964年鹿児島県生まれ。大学卒業後、繊維商社にて営業職を経験。取引の傍らで廃棄される製品のリサイクルが日本の課題であると感じ、企業での再生繊維の開発・普及・啓発に5年間、繊維製品のリサイクルのビジネスモデル構築に7年間携わる。2007年1月に日本環境設計株式会社を設立。代表取締役社長に就任。繊維製品だけではなく全ての使用済み製品の資源循環と地球環境への貢献を目指して、日々奮闘中。


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