LUCKY ENVELOPE

お年玉は、思いのやりとり

写真:柳詰有香 取材・文:奥原麻衣子
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お年玉は、思いのやりとり

銀座と新橋のちょうど中間あたり。観光客や、買い物客で活気溢れる中央通りから一本入った金春通りには、和装小物、京陶芸など和の老舗が多く軒を連ねている。そんな情緒溢れる通りの中で、江戸指物と祝儀袋、お正月の定番ぽち袋など和紙製品を扱う「銀座 ひらつか」をたずねました。誰もが知る有名鮨店「銀座 久兵衛」のお隣。柔らかい手書き文字で、店名が書かれた暖簾をくぐると、店主の平塚彦太郎さんが優しく穏やかな笑顔で出迎えてくれました。

「平つか」の創業は、大正3年。掛け物や屏風などを表装する経師屋だった初代が和家具の店を開いたのが始まりです。創業当初は、日本橋付近に店を構えていたそうですが、関東大震災や東京大空襲の影響を受け2度の移転を経て、現在の場所に。店を構え、はや半世紀以上という長い歴史のある老舗中の老舗。取材時には、貴重な創業当時の店舗の写真も見せていただきました。

店内に入ると、遊び心のある江戸おもちゃや、杢目の美しさが際立つ江戸指物が並び、どちらも魅力的で目を奪われますが、平つかの中で根強く人気の高い商品は、やや厚みのある土佐の手透き和紙に木版手刷りで仕上げた和紙製品の数々。和紙に馴染む優しい色味で描かれる絵は、すべてオリジナル。発売当初から変わらないデザインは、レトロながらも今見ると目新しく。ほっこりした温かみのある風合いに、心惹かれます。定番商品である祝儀袋やぽち袋は、すべて昔からお付き合いのある職人によって手作りされ、一枚一枚和紙を包丁で裁断し、木版手刷りで刷られています。一つの絵を描くために、絵の色数に応じて異なる絵柄が彫られた木版を使いわけ、多いもので6回刷ることもあるとか。桜の木を使った木版の板はとても硬く、それに彫られた細い松の模様は、その繊細さを間近で見ると圧巻。人の手で彫られたとは思えないほど、細い松が忠実に描かれています。使ううちに劣化した絵柄の面は繰り返し彫り出しながら、木版が薄くなるまで大切に使うそう。大量生産や、3Dプリントなど技術が日々進化していっている今の時代、印刷された水引や熨斗になれた目に、職人の心意気が伝わる手仕事は、新鮮なものばかり。これだけの手間ひまをかけて作られている平つかの祝儀袋やポチ袋は、さぞ高価かと思われがちですが、ぽち袋は3枚で572円~、婚礼用の金封で、680円~と思いのほか手頃。質にこだわりながらも、実用性をきちんと考えている点こそが、長くお客様から愛され続ける理由なのかもしれません。

ぽち袋のはじまりは、もともと花柳界での芸妓・芸者の花代やお付きの人への祝儀として小銭を手渡すため、懐紙や半紙に包んで手渡していたもの。小銭がこぼれないよう、包み端を糊で止めるようになり、それがいつしか袋の形へと変化していったことがはじまりといわれています。

「お年玉は、思いのやりとり」と話す平塚さん。日本人にとって、お正月にお金をあげる、もらうことが一般的な習慣のひとつとなっているお年玉。その本当の意味は、普段なかなか会えない大切な人を思い、わずかながら(=これっぽっち)のお金を渡すことで、より一日を幸せに過ごしてほしいという思いの込められたものなのかもしれません。(「わずかながら=これっぽっち」という言葉からポチ袋と名がついたとか……)今年のお正月、老舗店の趣向を凝らしたポチ袋で、普段なかなか会えない大切な親族へ、気持ちのお年玉を贈ってみるのはいかがでしょうか。

銀座 平つか
東京都中央区銀座8-7-6
TEL 03-3571-1684
OPEN 11:00 – 18:00
CLOSE 日・祝


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