MEMORY THAN THE RECORDING

見てきたものと聞いてきた音が、私のはじまり

写真:森本菜穂子 文:奥原麻衣子
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見てきたものと聞いてきた音が、私のはじまり

“UNUSUAL=普通だけど、普通ではない”をコンセプトに、2008年よりスタートしたブランド《YuumiARIA》。女性らしいベーシックなアイテムに、メンズライクなディテールを取り入れたデザインが人気を集めている。デザイナーの鈴木ゆうみさんは、ナンバーナインのパタンナーを経て、同ブランドのレディースライン《9》のデザイナーを務めた実力者。そんな彼女の原点となるものとは。

「私には、原点となる重要なものが2つあります。1つ目はミュージカル映画の“Annie”。幼い頃、映画好きの母とたくさんの作品を見た中で、直感で好きと思ったもの。この作品から初めての海外を知り、歴史背景を学んだりと、幼い自分に“初めて”をたくさん教えてくれた作品でした。ちょうど主人公のAnnieと同じ10歳の時、東京へミュージカルを見に行く機会があって、その時の衝撃は今でも忘れられません。自分と同年代の子が仕事をして、見る人に元気や、夢を与えている姿。それからですね、私も人に何かを与える人にならなきゃという思いが芽生えたのは」

Annieは、こうありたいと願う憧れの女性像

海外に行くと必ず探すものの一つというAnnieにまつわるグッズ。年季の入った絵本は、サンフランシスコの古着屋で見つけたものだそう。なぜAnnieだったのか。鈴木さんが、作品そして主人公のAnnieに惹き付けられたワケを訊ねてみた。

「主人公のAnnieには、共感できる部分が多かったんです。私自身母子家庭で育ち、子供ながらにこの作品から、元気でいることや、人に何かを与えることを教わり、勇気をもらっていました。大人になって読み返してみると、Annieという少女に、人として、女性として、こうありたいという憧れのようなものがあったのかもしれないと感じています。私が服を好きになったのも、古着を好きになったきっかけもAnnieでした。劇中に登場する服を見て、アメリカにはこんな可愛い服があるんだと思いましたし、決められた服を着ている孤児院の子供達にも、よくよく見ると一人一人少しずつ個性がある姿が面白かった。それから、少し個性的だった母に小さい頃みんなと違う格好をさせられていたことが、快感に変わりましたね。人と違う表現をしたいとか、ここから自分らしさの出し方を学んだような気がしています」

生きているものを人に伝えるということ

鈴木さんの原点を語る上で、もう一つ欠かせないものがある。それは音楽。服作りの中で、ブランドのコンセプトとは別に、自身の中で心がけているのは“音が流れているような服を作る”こと。

「Annieの劇中で流れる音楽はもちろんのこと、母と見ていた映画の音楽など、幼い頃から音楽も私にとって身近に感じていたもの。ブランド名のARIAは、一番好きな曲であるバッハの「G線上のアリア」から名付けました。音が流れるような服を作り続けたいという思いを込めて。バッハをはじめ、クラシック音楽は、Annieと同じく私にとっての原点につながるもの。一番最初に知ったクラシックは、母にもらったカセットテープで聞いたリチャードクレイダーマンの曲でした。それがきっかけでピアノを習いはじめ音楽に直接触れるように。学生時代には演奏部に入部、見た目の可愛いクラリネットに惹かれ、吹くようになりました。部活の練習以外では、もっぱら好きな曲ばかりを吹いていましたね。最近は少なくなりましたが、好きな曲を演奏している時は、すごく楽しくてリラックスできます。創作意欲もわいてきますね。よく音は生きていると言われるように、私は洋服も生きているものだと思っています。私がデザイナーでいることは、生きているものの価値を人に伝え、与えるという表現の一つですから」

服作りを仕事にしているからといって、原点がそれと同じとは限らない。服に付随する、女性としての在り方や、様々な経験を経て形成されてきた彼女自身をつくるものが、デザインに大きな影響を与えているという。鈴木さんにとって洋服とは、どういうものなのだろうか。

「服作りは、まわりから受ける影響や自分の目で見てきたものが大きい。ナンバーナインは、私の全てでした。そこで経験したことや勉強したことがデザイナーとしての今の自分に繋がっている。でも私自身の原点は、それと同じではないんです。
私にとって洋服は、モノとして残るものというより、それを着て撮った写真とか、思い出として記憶に残るものだと思っています。それは実物よりも、とても強烈で色あせないもの。だれかの記憶に残っている方が嬉しいんです、香水の残り香みたいに」

about her

Designer
鈴木ゆうみ

2001年文化服装学院卒業。ナンバーナイン入社後、パタンナー、
デザイナーアシスタントを経て、レディースライン『9』のデザイナーに。
2007年独立。同年自身のブランドYuumiARIAをスタート、現在アーティストのステージ衣装なども手がけている。


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