THE COLLECTOR'S WAY OF LIVING

世界で蒐集したお気に入りに囲まれる暮らし

写真:田中誠 取材・文:奥原麻衣子
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世界で蒐集したお気に入りに囲まれる暮らし

いモノが好きという気持ちを仕事にしている人がいる。国内外のフリーマーケットや蚤の市等を巡り、蒐集された300点を超えるというコレクションを、ネットショップの他、全国の様々なショップにトランクショーという形で出店、販売を行うSwimsuit Departmentのオーナー郷古隆洋さんが、その人だ。そんな郷古さんに、ヴィンテージアイテムとの付き合い方や暮らし方、そして今気になっているポストモダンについて話を聞いた。

そのモノと出会った瞬間が一番わくわくする

「僕は好きなものや、興味があるものをただ集めているだけで、何か特別な理由があるわけではないんです。メンテナンスもホコリを払ったりする程度、ほとんどしてないようなものですね」

彼にとっては生活の一部のような、ヴィンテージコレクションの数々。それらのアイテムに興味をもつようになったきっかけとは何だったのだろうか。

「初めて買ったヴィンテージアイテムが、イームズのBAR(Rocking Armchair Rod base)。当時はイームズブームで、あらゆる雑誌で特集が組まれていたりして。それがきっかけとなってインテリアや雑貨に興味を持ち始めました。なぜ古いものがそんなに好きなのかを聞かれると、正直自分でもわからない。でも聞かれるたびに考えるのは、経年だからこそ出来上がる質感とか、なんかいいと思って手にとったモノの時代背景を探っていくことが楽しい、それが魅力であり理由なのかもしれない。何よりも、宝探しのように国内外を飛び回って、探し歩いて見つけた時が一番嬉しいから」

広いリビングには、世界中から集められたたくさんの陶器や民芸品が並べられ、それらがダイナミックに混ざり合った空間は、入ったとたん気持ちが高揚する楽しいカオス。そんなご自宅は、郷古さんが今気になっているポストモダンの要素がいっぱいだ。

「ポストモダンといえば、イタリアのデザインチーム“Memphis(メンフィス)”が広く知られており、80年代彼らの独特なデザインとその色彩が話題を集め、世界中の建築家やプロダクトデザインに影響を与えていました。その影響をうけた日本人の建築家たちも、彼らを真似て過剰な装飾や奇抜なデザインのものを作っていたんです。80年代といえば、ちょうどバブル全盛。機能性を重視せず、デザイン重視で色々なことができた時代です。ここはまさにその影響を受けた建築家が作った建物。エントランスの装飾、外壁のブルーグレーのタイル、部屋のドアノブの建具、磨りガラスの扉、備え付けのライト、そして収納も多く意外と生活に密着している感じが気に入っています」

今気になっているのはポストモダン

そんな部屋の中には、気になって色々と集めているというポストモダンのプロダクツデザインのアイテムが多く点在している。その中から2つ象徴的なアイテムを紹介してもらった。

「以前dia STANDARDでも紹介させてもらった、このライトは、Memphis(メンフィス)の中心メンバー、エットレ・ソットサスのデザイン。このライトすごく気に入っていて手放せないですね。ただのライトというより、もはやアートピースですよね」

「これは、アメリカに買い付けに行った際、現地の人に紹介しもらった陶芸家ピーター・シャイアーの作品。彼は、Memphis(メンフィス)に所属していた唯一のアメリカ人でした。初めて見た時は、そのデザインに圧倒されました。悪く言うと“過剰”ですけど、意外と手の収まりが良くて、持ちやすかったりするんです」

審美眼にかなった、一番のお気に入り

タピオ・ヴィルカラやジョージ・ネルソンといった有名デザイナーのアイテムから、ナバホと呼ばれるネイティブアメリカンの精霊を象ったオブジェ、デンマークのクラフトなど様々な国やジャンルのアイテムの中には、メキシコやイタリアのものも増えてきているとか。この部屋の数あるアイテムの中から、一番のお気に入りを伺ってみると。

「メキシコを代表する民芸品のひとつで、“生命の木”と呼ばれる陶器のキャンドルホルダー。これは、これはメキシコの民芸品で、かつては嫁に行く娘に母が渡していたもの。スペインに征服により流れたきキリスト教の要素と、メキシコ人のおおらかさや色彩感覚が加えられてうまれた燭台です。これらは、聖書の中の『エデンの園』に登場する生命の木がモチーフになっています。中央にアダムとイヴ、そしてりんごを食べるようそそのかす蛇が施されていましたが、時代とともにモチーフも変わり、作家それぞれのイマジネーションで作られていて、ひとつひとつデザインが違います。陶器でつくられているものなので、とても繊細。とても良い状態で、しかもこんな大きなサイズのものは本当に貴重で、入手するのは奇跡に近いですが、実はこれ日本で見つけたもの。大阪万博の時、メキシコ館で展示するモノと共に輸入したものだったそうです」

モノを選ぶときや買うときに、自分の家のどこに置くかとか、どう使うかとかを想像することは、ほとんどないという。感覚だけでヴィンテージのアイテムをセレクトしていく彼の基準は、自分が欲しいと思うかどうか。好きなものに囲まれた空間は心地よく、週末はすっかり家からでなくなってしまったとか。これから買い付けの旅に出る彼が、次に見つけてくる新たなお気に入りにも注目したい。

about him

Interior Buyer
郷古隆洋

ユナイテッドアローズ、ランドスケーププロダクツを経て、2010年Swimsuit Departmentを設立。輸入代理店をはじめ、世界各国で買い付けたヴィンテージ雑貨などを、トランクショー形式でのイベントも開催している。


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