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《FUMIKA_UCHIDA》デザイナーとしての原点

写真:森本菜穂子 取材・文:奥原麻衣子
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《FUMIKA_UCHIDA》デザイナーとしての原点

目黒にあるヴィンテージショップ「JANTIQUES」のバイヤー内田文郁さんが、自身の名を冠したブランド《FUMIKA_UCHIDA》を2014秋冬よりスタート。部屋の隅々まで”好きなもの”であふれかえった自宅兼仕事場で、作り手となった今の自身の原点について話を聞いた。

「私、タイツが好きじゃないんです。ボトムスに、足元は素足が私の定番」

ブランドを立ち上げ、デザイナーとしての原点となるものを語る上で、まず自身のスタイルについて、こう話してくれた内田文郁さん。そんな彼女が作り手という立場になって、一番初めに製作に取りかかり一番課題を残したものでもあるという、この言葉が意味する“原点になったもの”とは。

「デニムとか、アンティークの民族衣装とか。好きなアイテムは数知れず。ですが作り手になることを決めた時、一番はじめに取りかかったものが、“チャップス”でした。今の私の原点は、これです」

チャップスとは、カウボーイが馬に乗るときにボトムスの上から身につけ脚を保護するための装具のこと。元々ウエスタンファッションが好きで、シャツやブーツ、ベルトなど気に入ったものを見つけては、少しずつ集めていたという。

「ヴィンテージでは、レディースサイズがほとんど出回ってなく、なかなか出会えなかった。自分の体系にあったサイズ、しかもヌーディーに見えるベージュが欲しくて、本来のチャップスのTOO MUCHなデザインを削ぎ落とし、日常的に身につけられるようにシンプルなものを作りました。自分としては、ニーハイブーツを履いている感覚に近いかもしれません。冬はニットとか、トップスが柔らかい素材になる。そういうものには足がレザーだと、エッジが効いてカッコいいスタイルになるんです。しかも暖かい。ニットにタイツを合わせたときの、ほっこり感とコンサバな感じが苦手で…。まっすぐな細い足にタイツを履いて、バレエシューズを合わせているモデルさんを見ると可愛いなと思いますが、私らしくは、ないかなって」

表に出してあげる努力が足りなかった、だから何度でも挑戦する

足の長い美脚じゃないとかっこ良く履きこなせないのでは?と、思ってしまう一見高度なアイテムですが、彼女の話を聞いているとだんだんとその魅力に惹き込まれてしまう。

「革の厚みがあるので、足の形はあまり関係ないんです。むしろストレッチデニムや、タイツの方が、きれいな足がよく似合う気がする。革はスキンですから、履いているうちに膝の位置も決まり、自分の足の形に心地よく馴染みます。着こなしのポイントは、合わせる靴との相性に合わせて、サイドのジップの開き具合を調整できるところ。どんなボトムスでも“すそと靴のバランス”を大切にしています。まさに、このチャップスで一番こだわったデザインは、甲を覆う裾。パンプスやサンダルといった女性らしい靴でも、ブーツやスニーカーどれを合わせても、双方の良さが引き立つようにバランスを考えました」

「ファーストコレクションで発表しましたが、きっとチャップスというものを初めて見る人がほとんどだったと思うし、どう着こなしたらいいかわからないという人も多かった。残念ながら、日の目を見ることができず、もう少し自分がこのアイテムを表に出す努力ができていたらと、悔しい気持ちでいっぱいですが、いつかのコレクションで、もう一度トライしてみようと思っています。出された課題こそが原点ですから」

コンプレックスを好きになれるように考えるのがスタイルの原点

初めてづくしだったものづくりの苦労を振り返る内田さん。ですが、その言葉とはうらはらに挑戦することを楽しみ、作り手としての日々は充実しているようにも感じる。取材日は、セカンドシーズンとなる2015年春夏コレクションの発表の直前。バイヤーとして培われた審美眼と、確固たるスタイルを持つ彼女をつくるそのインスピレーションの源は、どこから沸き出ているのだろうか。

「何かを意識的に考えているわけではないんです。無意識に好きだなと思うものを好きなように着ているだけ。でもスタンダードなものをそのまま着るのは好きじゃない。普通こう着るんだろうなっていう着こなしに、毒みたいなものを加えて崩す、そのさじ加減こそが自分らしさの表現ですから。例えば、チャップスにウエスタンブーツではなくてスーツジャケットを着るみたいに真逆なものを合わせてみる、とかね。アイテムの要素を楽しむことが重要だから、ファッションを楽しむためにルールは決めない。何かに縛られることなく、気負わずに楽しむだけ。メンズっぽい着こなしも好きだし、レースも好き。どれが一番自分らしいのかわからないけど、どれも自分。メンズっぽい格好をすると、気持ちが強くなったり。でも女性らしい服を着ると、仕草が女らしくなったり、気持ちが服に乗っ取られて、服にふりまわされるその感じが、ファッションの醍醐味ですよね」

物事をシンプルに考え、そして素直に受け入れる。正直に、そして純粋なありのままの気持ちで毎日を心地よく過ごしているからこそ、内田さんもそして彼女から生まれてくる服たちにも、惹き込まれてしまう魅力があるのでしょう。原点を見つめ直しながら新しいものを創造し続けていくこれからの内田文郁、そしてブランド「FUMIKA_UCHIDA」にも目が離せない。

about her

Vintage Store Owner/Designer
内田文郁

中目黒のヴィンテージショップJANTIQUESのオーナー。2014AWシーズンからは自身のブランド《FUMIKA_UCHIDA》を主宰し、デザイナーを務める。ヴィンテージからラグジュアリーブランドまでをミックスした独自のスタイルにファンも多い。


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