HANDMADE WITH MEMORY

草木の息吹が聞こえる、繊細なPfützeのアクセサリー

カバー:竹内一将(STUH)
写真:平岩紗季 取材・文:林理永
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草木の息吹が聞こえる、繊細なPfützeのアクセサリー

すみ草にシロツメクサ、浮き草。自然の草木などをモチーフに、繊細で美しいフォルムを織りなすアクセサリーの数々。これらはすべて、1つ1つ丁寧に手作りされ、植物たちは、2人のデザイナーの手によって再び命を吹き込まれている。

“Pfütze(プフッツェ)”=ドイツ語で“水たまり”という名のこのブランドは、北康孝、賀来綾子が2007年に立ち上げて以来、着実にファンを増やしている注目のアクセサリーブランドだ。2人が毎日作業をする、渋谷の小さなアトリエを取材すると、“Pfütze”のアクセサリーが人を惹きつける理由が見えてきた。

(写真・左から)
かすみ草をモチーフとしたピアス(K18YG)¥30,000
シロツメクサをモチーフとしたピアス(SV925)¥15,000
浮き草・水草がモチーフのピアス(SV925)¥8,000(すべて税抜き価格)

デザイナーの北康孝さんと賀来綾子さん。夫婦でブランドを立ち上げ、共同でアクセサリー制作を行っている。

「幼い頃に見たり遊んだりした自然物の記憶を再構築して、アクセサリーを制作しているんです」(北康孝)

——“Pfütze”の作品は、どこかノスタルジックな雰囲気を持っていますよね。どうやってデザインしていくんですか?

北康孝(以下、北)「今制作しているアクセサリーのすべての原点は、“幼い頃の記憶”なんです。ペンペン草で遊んだり、シロツメクサで花輪を編んだり、図鑑を見て宇宙を想像したりした記憶を掘り起こして、アクセサリーとして再構築している、というイメージですね。小学校1年生の時に、植物や宇宙の図鑑全集を買ってもらって以来、自然物に興味を持つようになって、そこから貝を集めたり、色んな植物で遊ぶようになって…」

賀来綾子(以下、賀来)「それは、日本人であれば、共通の感覚でもありますよね。展示会でお客様とお話をしていると、“これ懐かしい!”と言ってくださる方も沢山います。大人になった今、幼い頃のように遊ぶことはなくなっても、アクセサリーとして身に付けることで、懐かしくて温かい気持ちにもなりますよね」

——そういったイメージやモチーフは、2人で話し合って決めていくんですか?

賀来「2人でアイディアを持ち寄ります。そこから絞っていって、最終的に形を決めて…」

北「僕はひらめきタイプなので、なかなかアイディアが浮かばない、と悩んでいたら、突然寝る前に思いついたりすることもあります(笑)」

賀来「せっかくイメージを決めてサンプルを作っても、アクセサリーとして物足りなくてボツになってしまったものもありますし。でも2人の中で、その時々で、共通の“気分”や“雰囲気”があるんです。それを探りながら決めていきますね」

北さんが幼い頃に集めていた貝のコレクション。

「完成のイメージに1番近づける技法で制作をしています。その為に必要ならば、新しい技法にもチャレンジしていきたいと思っています」(賀来綾子)

——2人のイメージが固まったら、その次の過程は?

北「それから、原型やサンプルの制作に入っていきます。それが、植物や鉱物など、具体的な形があるものであれば、まず、本物を手に入れることができる場所を調べて取ってきます。そうではなく形がない、もしくは取って来られないものであれば、資料などを見ながら頭の中でデザインを考えます。例えば、“惑星軌道”や“雷と雲”、“影”などは、イメージから制作していますね」

賀来「実物を取ってくる時には、季節にもよるので、まずは待たなくてはいけない時もあります(笑) そこから、その実物そのもののテクスチャーを取った方がキレイなものであれば型をとるし、実物をみながら手で形を作ることもあります」

北「そこでも実物やイメージを共有しながら2人で話し合って、最終的にどんな形でアクセサリーにするか決めていきます」

——そこでサンプルとして形を作ってから、いよいよ金属加工に入っていく訳ですね。どのような技法で作っているんですか?

北「“鋳金”や“彫金”と呼ばれる技法を中心に、様々な技法を組み合わせて作っています。鋳金は、工場に依頼して私たちが制作したサンプルの型に精密に金属を流しこんでもらう方法で、彫金は、金属板から形を切り出していく方法ですね」

賀来「でも、どの技法で作るか、ということにはこだわっていないんです。それよりも、完成のイメージに1番近づけるのはどの技法かで選んで作っています。必要であれば、新しい技法にもチャレンジしますよ」

北「今年新作で出した“影”のシリーズは、ゴールドとホワイトゴールドの金属を、手作業で綺麗にくっつけて、制作しています。これも、今までやっていなかった技法です」

——そこから最後の“研磨”に入っていくんですね。

北「はい。それも、完成型のイメージに向かって磨いたり削ったりしていきます。いかに、そのモチーフとなる自然物っぽく、活き活きと仕上げるか。例えば、“水滴”だったら“水滴にしよう”と思いながら磨いていくんです」

2014年に新作として出した“影”シリーズ。

“研磨”の作業中の北さん。指先のわずか数センチのなかで行う極めて繊細な作業。

「僕が“削る”タイプだとしたら、賀来は“足す”タイプ。“固すぎず柔らかすぎない”アクセサリーに仕上げることを目指しています」(北康孝)

——2人の役割分担はどうしているんですか?

北「制作過程では、主に僕が研磨をしてパーツを仕上げ、賀来が組んで完成させる、という役割分担にしています。例えば1つの作品を作るとしたら、僕は、大きな材料の固まりから削り出して作っていくタイプですが、賀来は、材料を少しずつ足して作っていくタイプだと思うんです。だから、アクセサリー制作でも、そういった分担の仕方にしています」

賀来「それに、私だけだと柔らかすぎるし、北だけだと固すぎてしまうので、バランスが取れているとは思います。もちろん、制作過程で衝突することもありますが、お互いに一番こだわるところが違うので、そこは尊重するようにしていますね」

北「僕は、パーツの形やコンセプトにこだわるのに対して、賀来はアクセサリーとしての美しさや使いやすさにこだわりがあるんです」

アトリエ内の作業スペース。所狭しと器具が並ぶ。

先端の“ポイント”を、磨く箇所に合わせて変えるため、リューターも大量に準備している。

磨き終えたアクセサリーのパーツを収納。

ロウ付け台の上には、大量の道具のストックが。

「今年から結婚指輪のセミオーダーも始めたんです。以前から行っているフルオーダーでは、2人に縁のある自然物などをモチーフに制作しています」(賀来綾子)

——最後に、今後のブランドとしての展開はどう考えていますか?

北「今まで通り、シリーズを増やしていきつつ、今年から結婚指輪のセミオーダーも始めたので、オーダー品の制作にも力を入れていきたいですね。“影”“茎”“枝”のシリーズのリングで、セミオーダーを受けています」

賀来「以前から行っているフルオーダーでは、結婚する2人に縁のある自然物などをモチーフにして制作をしています。 “枝”をモチーフとしたものが多いのですが、それも本物の枝を取ってきて、自然の風合いをアクセサリーデザインに活かしています。今はちょうど、奥様がソムリエだというご夫婦に“ぶどうの枝”をモチーフにした指輪を制作中です」

アトリエ内に展示してある、Pfützeのシリーズ全作の一部。展示会などで使用するこの展示台も、北さん自ら手作りで制作しているそう。

セミオーダーの結婚指輪のモチーフとなる“枝”たち。

about them

Jewelry Designer
Pfütze

Pfütze(プフッツェ)
ドイツ語で“水たまり”という意味。北康孝、賀来綾子の2人でデザインから製作までを行う。シルバーやゴールドを素材としたアクセサリーは全て自然物・自然現象をモチーフとしています。身につける楽しさを感じられるものをつくっていきたいと考えています。 www.pfutze.com

北康孝
1977年 高知県生まれ
2001年 多摩美術大学美術学部卒業

賀来綾子
1977年 東京都生まれ
2000年 東京造形大学造形学部卒業

<展示のご案内>
2014年12月15日(月)~12月28日(日)
Creators Table Vol.30
「+S」Spiral Market MARUNOUCHI
東京都千代田区丸の内2-7-2 JRタワー KITTE丸の内1F


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