STUDIO COVERAGE OF CRAFTSMEN

《LITMUS×SEVEN BY SEVEN》
丹誠込めて作られる藍染めニット

写真・映像:小林 直人, 竹内 一将(STUH/still)
映像編集:田治あずさ
スタイリング:豊島 猛
編集:神田 春樹
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《LITMUS×SEVEN BY SEVEN》<br />丹誠込めて作られる藍染めニット

「ハンパないんだよ!」。そう言って見せてくれたニットは美しく、どこか親近感のある青色をしていた。東京・渋谷にあるコンセプトショップ「7×7」のディレクター、川上淳也さんがすごい熱量で語ってくれたのは、“灰汁醗酵建て”と呼ばれる日本古来の藍染めを行う《LITMUS》との共作。例えば海や空のように“いつもそこにある”もの。そんな自然な佇まいには、染めを通した物作りへの真摯な姿勢が覗く。インディゴとは違う、天然の藍染めから生まれる“青”の現場を訪ねた。

カシミヤやシルクなどを使用した良質なヴィンテージニットを素材、形に合わせて1点1点手作業で染め上げたている。濃淡の異なる青色が美しい仕上がり。

LITMUSはは松井裕二さんと吉川和夫さんの2人が立ち上げた藍染め工房。骨董市で偶然見かけた藍染めの野良着に魅了されたことがきっかけでこの道に進み、後に黒田和幸さん、鳥井龍之介さんが加わり今年で設立から14年目を迎える。
LITMUSが行う藍染めは、藍の葉から作られた蒅(すくも)と言う染料を使い、天然の素材と自然の発酵から藍液を作り出す “灰汁醗酵建て”と呼ばれる伝統的な手法で行われている。乾燥した藍の葉に水を打ち、堆肥を作るように3、4ヶ月かけて醗酵させた蒅を原料に、アルカリ性の染液を作るために木の灰を熱湯で溶き、上澄みの灰汁の中に蒅と自然の発酵を促すために日本酒とふすま(小麦の殻)を煮込んだものを加える。その後、温度を35度前後にキープすることで表面にキラキラした泡(藍の華と呼ばれる)が立ち始めやっと染められる状態となるという。そこから少しずつ灰汁を足していき、液の醗酵が安定するまでに約2週間。染め液を作る過程でここまでの手間が掛かっていることに驚かされる。

染め液と“藍の華”と呼ばれる泡(写真上)/藍の葉を乾燥させて作られる蒅(写真下)

「着た時に気持ちがいいとか、背筋が伸びるっていうのは、物作りへの強いこだわりがそうさせるんだと思う」

LITMUSのように自然の醗酵を利用した灰汁醗酵建てを行う工房は全体の1%にも満たない。薬品を加えることで手間をかけずに藍液を作ることもできるなか、この手法にこだわるのはなぜなのか。「僕らが藍染めに惹かれたのは骨董市で見た野良着が始まり。その色を自分たちでも生み出したいと思ったのがきっかけなんです。どっちが優れているとか、薬品を使ってるから悪いっていうことではなくて、お客さんが着た時に気持ちがいいとか、背筋が伸びるっていうのは、製品ができるまでの強いこだわりがそうさせる。それは自然の醗酵にこだわった藍染めだからこそだと思うんです」。

「藍って生き物なんです。ちゃんと手をかけて面倒を見てあげないと染まらない」

「自然の醗酵による藍染めの液は繊細なんです。染めすぎると染まらなくなってしまうし、液の状態を見て、それに呼応するように染めなきゃいけない。染まりの良い状態とそうでない場合の1回は全く染まり具合が違うので、藍液に無理をさせないよういつも注意している」と吉川さん。自分たちの手が届く範囲で物作りを続けるLITMUSの基盤となっている考えだ。
そもそも、藍液は茶褐色で、空気に触れることで酸化して青に変化している。本藍で染めることで独自の色合い表現できるほか、合成インディゴとは異なり基本的に色移りしないのが特徴だ。染めた後、さらに天日干しと熱湯による洗いを4、5日繰り返し、液の中に含まれる茶褐色の要素を丁寧に取り除くことで、ようやくLITMUSの染めは完成する。

藍の葉は少し青みがかっているのが特徴的。

「伝統っていうだけじゃ残っていけない。時代に合わせて変化するなかで、その中核を伝えてくことが未来につながる」

LITMUSでは今年から自分たちで畑を借りて藍の葉を育て始めた。それは天然素材へのこだわりと、もうひとつ、伝統的な藍染めを未来に残していくための自分たちなりのチャレンジでもある。「今、藍を栽培する農家が急激に減ってきていて、これまでのように僕らが使う量を確保するのが難しくなっているんです。じゃあこの先続けて行くにはどうしたらいいかを考えた時に、まずは1から自分たちでやってみようと。全部やってみて、自分たちなりのシステム作りをしていかなきゃダメだと思ったんです」。しかし、乾燥した葉と茎を取り分ける作業だけで、4人掛りで2時間やっても2kgほどにしかならないのが現実だ。掛かる手間と価格のバランスをどう保つか。「今の時代、ただ“伝統”ってだけじゃ残っていけない。その時代背景に合わせて変化して行くなかで、その中核を伝えることが藍染めを未来に残して行くことだと思う」。藍染めに限らず、日本古来の伝統的な物作りの現場につきまとう問題に、自分たちなりの答えを見つけ出そうとしている。
生き物と接するように気を配り、手をかける。藍と対話するように1点1点手で染めているからこそ、その“青”に引きつけられるのだろう。手間を惜しまない作り手の想いが詰まったニットは、いつの時代も色褪せることはない。

Relationship for craftsman and shop
LITMUS × SEVEN BY SEVEN CROSS TALK

——川上さんとLITMUSの最初の出会いはなんだったんですか?

7×7 川上淳也(以下川上/敬称略):初めて会ったのは僕が前の職場にいた時ですね。初対面の松井さんの手が青くて、一体何をしている人なんだって思いました(笑)。そこで、藍染めのアイテムを見せてもらった時にすげーなって衝撃を受けた。

LITMUS 松井裕二(以下松井/敬称略):川上さんはそのなかでも、僕らの染めてるモノに対して1番反応が良かったんです (笑)。

川上:本当、純粋にすごいなって。それまでインディゴと藍の差も分かんなかったんですよ。藍は英訳されるとインディゴってなるけど、実は全く別物何だっていうのを知るきっかけでしたね。

松井:そこはなかなか伝わらないところだよね。僕らは1枚1枚、お客さんの手に渡るまでをすごく考えて染めてるから。どういう風に仕上げたら、より良くなるかっていうのをずーっと考えてる。ここをこうしたらいいかなとか、もうちょっとこうとかなっていう繰り返しですね。それは物を作ることでは当たり前のことだと思うんだけど、たくさんのものを作っているとそれを考えるのは難しくなってくる。量産のものでも、お客さんに届けるって意味では根本的な所は一緒だと思うんだけど、アプローチの仕方が違ってるんだと思います。

LITMUS 吉川和夫(以下吉川/敬称略):今回のニットを染めても古着の色んな色、形のものがあって、何枚かずつ適当な色で染めればいい訳じゃなくて、それぞれの個体差や並んだときの美しさまでを意識して染めました。

「7×7」のディレクター、川上淳也さん。着用しているニットもLITMUSの藍染めによるもの。

——染めの色はどうやって決めたんですか?

川上「そこはリトマスさんにお任せしました。特にこういう色でっていう指定は何もしていないんです。良い感じでお願いしますと」

吉川「そのいい感じっていうのが1番難しいんだけど(笑)。お互いのことを分かってないとできないよね」

川上「藍と他のモノが混ざることの面白さに刺激を受けて、今回のプロダクトになったんです。ニットを染められるってなかなかできないことだと思うんですよ。インディゴとかって液に入れて煮るじゃないですか? 熱を加えて。それで痛んでしまう。リトマスさんはハンドメイドで染めて、洗いまで1点1点やっているからできることだと思うんです。ほかではそう簡単にできることじゃない」

松井「染色工場とかはやりたがらないよね。少量で、それぞれ色も違うってなると手間がかかりすぎるから。ボクらは1枚作るのも10枚作るのも全部一緒なんで」

——川上さんは新しいアイテムが入るといつも連絡をくれるんですが、その時の熱さがすごい。これはこんな人たちがこうやって作ってる、っていうのをちゃんと説明してくれて、それが今回の取材に繋がってるんです。

吉川「今、そういうお店ってなかなか無いですよね。お店に行かずにネットで買うっていうのも分かる気がしちゃう。お店の人と話をして、その想いを聞いて、“すげーな”って思うことってすごく大事なことだと思うんですよね。藍染めに関して、ウチもまとめた資料は作ってるけど、実際に店頭で川上さんのような人が伝えてくれるっていうのはすごく有り難い。それは、単純にリトマスって言う名前が広く知られて、売れるようになったから良かったね、という感覚じゃなくて、モノから藍の現状を知って欲しいし、僕たちがどうやって作っているかも知ってもらいたいから。その上で自分の特別な1着として長く着てもらえることが1番嬉しいことですね」

松井「僕らはたぶんほかの藍染めやってる人よりも洋服が好きなんですよ。だからこそ、細かなディテールに関して注意するし、仕上がりまでのイメージも共有しやすい。その感覚的な部分はこれまでまで洋服に携わっきた経験が大きいと思う」

吉川「やっぱり、相手がイメージした以上のもので返したいもんね」

松井「返したいし、その状態でお店に並んでいて欲しい。安いものじゃないから、お店に並んだ時に存在感のなる面構えに仕上げなきゃいけないとも思います。納品する時もなるべく自分で持って行くんです。洗って、そこで干している時が1番綺麗だと思うんで、そのまま待っていくような感覚。持って行って、お店やブランドの人と色々な話しをすることが、次に繋がって行くことなんだと思います。ただ単純にパッキンに詰めて送って終わりっていうのは、実はモノの良さが半減している気がするんですよね」

吉川「色を指定されて、その通りの染めて、送って、っていうだけならウチで染める必要も無いのかなって。それだったら他でもっと安くできる所はあると思うし、仕上がり含めたその先の関係があってLITMUSの染めなんだと思います。物作りを通して、しっかりとした人間関係を築きたいんですよ」

——川上さんは今後、染めたいものとかはありますか?

川上「古着だけじゃなくオリジナルプロダクトも作っているので、さっき見た生地から染めるのはいいなと思いましたね」

松井「あとはスカジャンでしょ」

川上「そうですね。スカジャンは今、ちょうど話していて。前にシルクのブルゾンを染めてもらったんですが、その延長でスカジャンをやってみたいと思っています」

about them

LITMUS
松井裕二・吉川和夫

日本に古くから伝わる天然素材のみを使用した染色方法“灰汁発酵建て”を受け継ぐ。神奈川県・藤沢に工房を構え、手間を惜しまず1点1点手作業で染め上げることで、日本の藍色を表現し続けている。
www.litmus.jp

Select Shop
7×7

川上淳也氏がディレクターを務めるコンセプトショップ。海外から買い付け多ヴィンテージアイテムのほか、オリジナルやコラボレーションも行っている。
東京都渋谷区渋谷1-5-11 1F
TEL:03-6427-6315
www.seven-by-seven.com


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