INTERVIEW WITH JOEL LESCA

《Lesca Lunetier》フランスの物作りを伝承するアイウェア

写真:斎藤 優, 竹内 一将 (STUH/still)
スタイリング:豊島 猛 編集:神田春樹
協力:岡田哲哉 (GLOBE SPECS)
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《Lesca Lunetier》フランスの物作りを伝承するアイウェア

20世紀初頭から、眼鏡の産地として知られるフランス南部のジュラ地方で眼鏡作りに携わってきたレスカ一家。1964年にオリジナルブランドである《レスカ・ルネティエ》を創設し、古くからこの地で眼鏡作りを行ってきた熟練の職人との信頼関係によって、今なお一つひとつハンドメイドの良さを最大限に生かした物作りを続ける数少ないブランドのひとつだ。代々受け継がれてきた金型や機械を使って生み出される伝統的なフレームは、美しさと力強さ、相反する2つの要素を兼ね備えており、大量生産による画一的なプロダクトとは明らかに異なる雰囲気を纏っている。
フランス眼鏡の特徴でもある丸みを帯びたフォルム。顔なじみの良い繊細なバランス。掛け心地の良さと、フレームの重厚感。それらすべてに職人の意匠を感じることができるし、ひとつの眼鏡が生まれる工程を知ることで、言葉では言い表せない“モノが持つ存在感”の所以を理解することができるだろう。機械に頼らず、効率を優先しない頑なフィロソフィーこそ、《レスカ・ルネティエ》の最大の魅力だ。

Interview with Joel Lesca (Lesca Lunetier Designer)
デザイナーが語る手間をかけることの意味と魅力

─機械的な生産体制が整っている今なお、職人の手作業で物作りを続けるのはなぜですか?
手作りならではの風合いが作品に“味”を生み、触れることで職人の仕事を感じることができるから。手作業で作った眼鏡はより顔に馴染むし、デザインと言うよりも掛けた人の顔に良い表情を与えてくれるんだ。その時々の一過性のデザインは廃れることがあっても、手間をかけて生み出されたスタイル(=様式)はずっと残っていく。《レスカ・ルネティエ》ではコンピューターに頼るんじゃなく、この手作業の良さを将来に残していきたいし、そうすることで生産数は少ないけれど、クオリティは保つことができると信じているんだ。

《レスカ・ルネティエ》の眼鏡作りを担当する職人のデヴニンさん。主にヴィンテージをリプロダクトするライン《レスカ・ヴィンテージ》の製作を担当しているベテラン。

─ハンドメイドの長所はどういった所だと思いますか?また、《レスカ・ルネティエ》の眼鏡において、それがよく現れているディテールはありますか?
私たちの作っているモノからクオリティやスタイル(=様式)を感じてもらえること、手作業ならではの個体差や非工業的な味を楽しめることだね。ただ、それは良さであって、利点とは思っていないよ。とても手間とコストが掛かかることだからね。ディテールに関して言うなら、ハンドメイドで作ったカシメ蝶番は修繕が容易なことと、より屈強であることはメリットだと思う。


─大量生産・大量消費の時代ですが、ハンドメイドでの物作りを続けていくために必要なことはなんだと思いますか?
ハンドメイドこそが自分たちの最大の特徴であり、持ち味だからこれからも変わらずそれを続けていくことだね。顧客も大量生産、大量消費される商品とは異なるブランドの物作りに価値を認めてくれていると思うんだ。例えば限定的な数でコレクションを作ることで、一つひとつの商品に対してより愛着を持ってもらえるようにね。

─工房のあるジュラ地方はどんな場所ですか?
ジュラ地方の特徴は農業や酪農が盛んな山岳地帯で、眼鏡作りのほかにチーズやミルクも有名だよ。農業や酪農に従事する人の多くは冬場になると職人的な仕事で生計を立てるんだ。

「山地の森」を意味する“ジュラ”の名の通り、フランス南部の自然に囲まれた山間地帯。《レスカ》は創業時よりここに工房を構えている。

─今、世界の多くの眼鏡ブランドが福井県の鯖江で物作りをしていますが、日本の眼鏡作りをどう思いますか?
実は、鯖江にはまだ行ったことがないけれど、日本製の眼鏡を見ると非常に品質が良く、技術的な驚きを発見することも多い。鯖江の物作りの良さはフランスにも知れ渡っていて、評価も高いね。私はジュラと鯖江の職人たちは、距離こそ遠いけれど、とても近い意識やクオリティを目指して仕事をしていると思っている。どちらも山間に位置していて、職人の技を大切に伝えているところも共通しているしね。

眼鏡の金型。一つひとつ手作業で型を打ち抜いて作られており、これ迄製作した型は大切に保管されている。

─デザインのインスピレーションはどこから得るのでしょう?
私たちの作っている眼鏡の典型的なスタイルは、人の顔の形に良くフィットするラウンド型とオーバル型で、その原型は1920~60年代の眼鏡によく見られるし、自分達のファミリーのかなり前のコレクションにインスパイアされることもある。フランス眼鏡のオリジナルスタイルは1950~60年代に作られたもので、《レスカ・ヴィンテージ》はそんな過去の秀逸なスタイルをリバイバルさせるコレクションなんだ。《レスカ》には未来に向けて、とても多くのデザインを提案して行くための土台(ヴィンテージ)を持っていると言えるね。

《レスカ》が持つ膨大なフランス眼鏡のヴィンテージ。倉庫いっぱいにさまざまな年代、形のアイウェアがストックされている。

─来日された際に印象に残っていることはありますか?
日本に来て一番驚いたのは、すごく先進的で高い技術力を多方面で持ちながら、伝統的なものを大切にしているということ。過去を大切にすることは、眼鏡業界の未来に対して大きな影響を持っている。日本との関係は我らレスカ家にとって新しい繋がりで、とても印象的なことだよ。ひとつ確かに感じるのは、日本はプロダクトの品質や物作りへのこだわりへの期待値が高くて、その背景にある歴史やディテールへの作り込みを知りたがる人が多いということ。これはとても素晴らしことだと思う。

フランス眼鏡のヴィンテージ。1点1点職人が丁寧に手入れを施すことで再び輝き取り戻す。

─最後に、ご自身の趣味や好きな音楽・映画を教えてください。
この仕事自体が趣味みたいなものだけど、時に充電をし直さないとならない時がある。南仏でヨットに乗ったり、釣りをすることが私にとってのリフレッシュで、物作りへのインスピレーションにも繋がっている。音楽も好きで特にバロック音楽、ジャズ、ソウルをよく聞いているよ。アーティストは、カーティス・メイフィールドやジェリー・マリガン、ニナ・シモーヌが好き。アメリカとフランスの50年代〜60年代の映画にもすごく影響を受けたね。あとは孫。生まれたばかりの孫といる時は幸せだよ。ガストン・レスカ・ジュニアって名前だ。そして旅することが好きで、日本で飲むハイボールが大好物だ。

【COVER CREDIT】
写真最上段:《Lesca》のアイウェア 上¥35,640、下48,600[GLOBE SPECS TEL 03-5459-8377]

about him

Lesca Designer
Joel Lesca

1964年にフランス南部に位置するジュラ地域で創業した眼鏡ブランド《レスカ》のデザイナー兼代表。フランス眼鏡の魅力を今日に伝えるプロダクトを作り続けている。


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