TIED-UP STYLE

ユナイテッドアローズ クリエイティヴ ディレクター
Mr. Kamoshitaのタイドアップ

写真:河津達成 文:川島拓人
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ユナイテッドアローズ クリエイティヴ ディレクター<br />Mr. Kamoshitaのタイドアップ

いわゆる、“ビジネス”の格式ばったようにネクタイを使うのではない。男性が身につけられる貴重な装飾品としてネクタイを使うタイドアップスタイル。ユナイテッドアローズのクリエイティヴ ディレクターにして、海外スナップの常連。ミスター・鴨志田から教わる、タイドアップのルールについて。

タイドアップした7つのシーン

Scene One:Friendly Meeting

《カモシタ ユナイテッドアローズ》のスーツ、《シャルベ》のシャツ、《フィオリオ》のネクタイ、《アディダス》のスニーカー

「スーツのなかでのドレスアップ、ドレスダウン、崩し具合みたいなものは、シチュエーションによって変わってきます。今日はメーカーさんに用事があって、その後、先輩と合う予定があるので、タイドアップスタイルを意識しました。少し抜け感が欲しかったので足元にはスニーカーをコーディネート。スニーカースタイルでもタイドアップする事で節度あるスタイルに仕上がります」

Scene Two:Night Out

《エムピー マッシモ ピオンボ》のジャケットとシャツ、《ドリス ヴァン ノッテン》のパンツ、《シャルベ》のボウタイ、《ベルジャン シューズ》のオペラパンプス

「これは、パーティーシーンをイメージしたスタイリング。ファッション業界のパーティや集まりなどに着ていくものです。ですから、タキシードよりこういったテクスチャーのある軽い感じがいい。オペラパンプスを履いて、ボウタイですかね。よりパーティっぽくなるでしょ? ボウタイの代わりに、タータンチェックのタイでもいいですよ。そのときはエナメルではなく、スリッポンがいいかな」

Scene Three:Spicy Weekday

《ドリス ヴァン ノッテン》のスーツ、《シャルベ》のシャツとネクタイ、《オールデン》のシューズ

「最近はクラシックなスーツってよりも、少しファンシーな色やフォルムのスーツが楽しい。この《ドリス ヴァン ノッテン》のスーツの色は結構アグレッシブで、ファンキーですよね。大体、クラシックな格好した次の日とかは、反動でこういう服を着たくなるんですよね。相手云々よりも自分のマインドのなかで、蕎麦を食べた次の日は、中華料理行くみたいな。(笑)」

Scene Four:Smart Weekday

《リベラーノ & リベラーノ》の3ピース、《カモシタ ユナイテッドアローズ》のシャツ、《プリンチペ》のネクタイ、《チャーチ》のシューズ

「全体の色は、グレートーンでまとまっているように見えるけど、実はシャツがさり気無くペイズリー柄だったり、素材感のあるタイをチョイスしたりと、ややエッジを効かせた感じにしています。また、ネクタイと靴の色味を合わせています。なんか賢そうに見えるけど、“こいつどこかおかしいなみたいな”、そんな雰囲気が演出されるはずです」

Scene Five:Ordinary Day

《リベラーノ & リベラーノ》のスーツ、《エムピー マッシモ ピオンボ》のシャツ、《ニッキー》のネクタイ、《スピーゴラ》のシューズ

「春秋用のコットンスーツは僕の定番です。ウールよりもコットンが好きなぐらい居心地がいいんですよね。やはりチノと一緒で、着たときのシワ感や、フィット感のある着心地だとか。また、見た目のカジュアル感も絶妙ですよね。色は茶色ながらもコットンスーツ特有のスポーティーさや、健康的な良さがあります、そのツイスト具合が、自分にとっても居心地いいんですね。それに褪せれば褪せるほどかっこいい。それってウールには求められないことでしょ」

Scene Six:Celebrating Day

《チェザーレ アットリーニ》のスーツ、《シャルベ》のシャツ、《フィオリオ》のネクタイ、《スピーゴラ》のシューズ

「結婚式に着ていく典型的でクラシックなスーツスタイルです。よくこれで披露宴に出席しますが、オーセンティックな色柄を選ぶ様に心がけます。そして、メンズスタイルの伝統を尊重し、しっかりとしたドレスアップに基づくことが重要です。どんな相手かによりますが、例えば会社の部下や、友達であれば、黒のフォーマルシューズにこだわる必要もなく、茶色のオックスフォードの靴でも、とくに問題はないんです」

Scene Seven:One Weekday

《ボリオリ × カラー》のニットジャケット、ヴィンテージのワイドチノパンツ、《カモシタ ユナイテッドアローズ》のシャツ、《フィオリオ》のネクタイ、《カットワース》のシューズ

「このコーディネートに関しては、ネクタイはなくても成立しますが、あると、ぐっと引き締まる。ちょっと寒くなったら、スカーフを巻く事もあります。ネクタイするのも、スカーフ巻くのも一緒です。アクセサリーとして、全体の色のバランスを考えればいいんです。普通だとTシャツを着るでしょうけど。そこをちょっとタイドアップするだけで全く印象が違うはずですよ」

Scene Eight:Another Weekend

《マイケル タピア》のニットジャケット、《リーバイス®》のパンツ、《カモシタ ユナイテッドアローズ》のシャツ、《フィオリオ》のネクタイ、《コンバース》のシューズ

「カジュアルなニットジャケットに、ジーンズやチノというのは、僕がヘビーローテーションしているスタイルのひとつ。そのときも、ネクタイなしだと、ちょっと寂しかったり、物足りないなって思うので、そのときにアクセサリーとしてのタイを締めて、自分なりのスタイルに色づけする。僕にとってこれがネクタイの役割かなと思うんです。これはあまり色を暴れさせないで、落ち着いたグレーベージュのトーンで統一して、という感じですね」

INTERVIEW WITH Mr. KAMOSHITA
「ネクタイのないメンズのワードローブなんて、男性の装いとしてはやっぱり味気なく思ってしまう」

─日本人の方で、鴨志田さんのように、ネクタイでお洒落を楽しんでる人ってまだまだ少ないと思うんですが、現在のタイドアップスタイルについて、どう思われていますか?
今の社会って、ネクタイを会社のバッジのような義務感で使っていますよね。だから、あまり若い子たちはネクタイに対する憧れとかがないと思うんですよね。学生服を着ているのと同じ感覚というか。でも、本来ネクタイというのは、メンズにとって重要なアクセサリーのひとつで、女性にとってのブレスレットやイヤリング、ネックレスのようなものです。男性ってそこまで装飾品をつけないですから、そういう意味で自己主張できるものというのは、女性に比べるとすごく限られている。つまりメンズファッションのなかでネクタイというのは、社会的なルールのなかで遊べるもので、その人なりの言葉を代弁するようなものだなと僕は思うんです。やはりベーシックなスーツに、ベーシックなシャツを合わせるようなタイドアップって、無限のバリエーションがありますが、どれをチョイスするかが、その人らしさを演出します。これこそがネクタイの面白さですよね。

─ネクタイの文化でいうと、日本と海外での違いはありますか?
やっぱり純粋に、日本はドレスアップする場所があまりないですよね。ヨーロッパやアメリカは、ソサエティがちゃんとあります。しかもそれは堅苦しいものじゃなくて、ある一定の社会の大人たちが遊ぶところ。そこで、ネクタイは重要な存在でもあるし、おそらくこれからもそうあり続けると思います。そういった海外の人たちの様に、堅苦しいものとは考えず、ポジティブにとらえ、遊び感覚で、帽子を被るようにネクタイを楽しんでもらいたいと思っています。

─鴨志田さんがネクタイをしはじめたのはいつ頃からになるのでしょう?
それはもちろん高校生のころからでしょうか。僕もVAN世代(※1960年代の日本国内で起こったアイビーブーム)なんでね。それこそ、黒のニットタイっていうのは、マストアイテムだったし、レジメンタルタイは憧れのアイテムでした……。こうして、この業界にいながら、ネクタイの存在感というものを見て、刺激を受け、発見して、自分なりにいろいろとトライしてきましたが、知れば知るほど、すればするほど面白いなって、今でも思います。当然面倒なことですけど、ドレスアップする、タイドアップするっていうのには、最低限のルールやマナ—、着こなし方があります。その上でいかに、“自分らしさ”を表現できるかっていうところ。コレを一度あじわうと、ネクタイのないメンズのワードローブなって、男性の装いとしてはやっぱり味気なく思ってしまう。ある意味、ネクタイはスパイスです。ピリっと、ひと味つけるのには、これに代わるものはないですよ。

─タイドアップスタイルで一番大切なことは何なのでしょう?
ネクタイってたくさん持つことが大事なんですよね。お洒落になるには数です。あの服に合いそうだとか、あのスーツのためにネクタイを探してて、っていうのはナンセンスです。ネクタイというのは、これ面白いな!と思ったら買うべき。頭から、ネイビーのスーツに似合うネクタイを一本買いに行こうっていっても、大体決まりきったものになる。見て綺麗だな、美しいなとか、面白いなって思えば、ブレスレットを買うように、ネックレスを買うように、買うこと。アクセサリーっていうのは、そんなもんですよ。ソックスもそう、コーディネートを考えるのではなくて、そこに魅力を感じたら、買うこと。そしてたくさん持つこと。スーツとかジャケットというのは、逆にそこまでバリエーションを持たなくてもいい。僕らはプロだからたくさん持ってますけど、そこにバリエーション持たせる必要はまったくない。それよりも、首元でバリエーションをつける。なんと言っても、バリエーションはVゾーンです。もう、変なネクタイいっぱい持てますけど、単体で見て行くとすごく気持ち悪いのもありますよ(笑)。こんなん買う人なんてまぁいないでしょっていうネクタイを何本も持っています。でも、慣れますから。スパイスってのはいろいろ持ってないと、お洒落もできないでしょう。

─実際ネクタイはどれぐらいの数をお持ちなんですか?
捨てちゃったり、失くなっちゃたり、人にあげたりしていますけど、常に一定の量は流動的にある感じですね。もちろん何百本とありますが。

─まだ使ってないのもありますよね?
あります。逆にすごくヘビーローテーションするネクタイもあります。消耗品ですからね。ネクタイは。

─長い間使ってしまいますけどね。先ほどのコットンスーツの話じゃないですが、それこそボロボロになるまで。
そうですね、擦れるほどね。もちろんそういうのもあります。このペイズリーなんかはすごく古いものです。80年代の《KENZO》なんで、高田賢三さんがデザインしていた頃のものです。すごくかっこいいでしょ。今だに大好きなペイズリーのネクタイです。このタータンチェックのは、スコットランド協会のおみあげ屋で売ってるようなものです。「ピカデリーサックス」かどこかで買ったような気がするんですけど……。伝統的なブラックスチュアートですよね。80年代は、これにピンクのボタンダウンシャツに《リーバイス》の501を合わせてました。懐かしいですね。

─ネクタイをし始めたのは、VANの影響が大きかったとおっしゃっていましたが。
ベースはVANですけど、影響受けたのは、純粋にアメリカのアイビーリーガーたちですよ。彼らのあまり気取っていない、若々しいフレッシュなスタイル。それこそダスティン・ホフマンみたいな、ああいうアイビースタイルが昔も今も好きです。ただそこに、ヨーロッパで出会ったお洒落な人に影響されたり、イギリスのサヴィルローのジェントルマンたちにも憧れたり、やっぱり時代や国によって、かっこよさは違いますから、その時々でよっていろいろ影響されていますね。

─その鴨志田さんが憧れたアイビーリーガーたちが、現在では、なんてことない格好をしていたりと、今は誰に憧れてネクタイをし始めるのか、そのきっかけがすっかりなくなってしまいましたよね?
そうだね。どうすればいいんだろう。ハリウッドスターだって、レッドカーペットでボウタイしてるぐらいで、後はほとんどしてないですから。そう思うと先が暗いですよね(笑)。

─だからこそ、鴨志田さんにぜひ!と思ってるわけなんですが。僕なんかはトム・サックスがレジメンタルのネクタイをしているのを見て、憧れて、普段から締め始めるようになったんですよね。彼のアートワークは、もちろん好きですが、彼のチャーミングなパーソナリティーとか、あのキャラクターで、ネクタイを締めている姿がかっこよく映ったんです。
そういうアイコンになる人がね。

─しかも一度締めてしまうと、全然苦に感じないですよね。本当に鴨志田さんがおっしゃっていたように、逆に物足りなく感じてしまうことが多いぐらいですよ。
そうなんですよ、全然苦にならないんですよね。デビット・ホックニーのニットタイの締め方とか、アンディ・ウォーホルのレジメンタルのタイを締めてる姿、こういう自由人のネクタイってかっこいいなと僕も思ってました。今でもそういうきっかけがもうちょっとあればいいと思うんですけどね。それこそウッディ・アレンにも憧れてました。なんか単純にかっこいいなっていう。ダンディな人という意味ではなく、もうちょっと人間味のあるヒューマニストで、そういうウィットに富んでる人とタイとの関係性というのが、どこかカルチャーを感じるし、面白いじゃないですか。みんながネクタイしていないから、みんながTシャツでOKになってしまっている時代だからこそ、もうちょっと意識がある人には、『男はそうじゃねぇだろ!』っていう気合いみたいなものが必要ではないかと思います。そうすれば、若い子たちの意識が少し別の方向へ向くかもしれないですよね。

© Getty Images
イギリス出身のペインター、デイヴィット・ホックニー(写真左)とポップアートの先駆者、アンディ・ウォーホル(写真右)は、アート作品だけでなく、ファッションアイコンとしても注目されている。

─そうですね、高校生から、早い子に関しては中学校から馴染みのあるファッションアイテムですからね。抵抗はないはずなんですけどね。
そうですね、今はしないけど、時間が経ってくると、するときが来るかもしれないですね。ファッションってそういうものですから。今それこそ全盛期で、僕もここ一年間ぐらいスニーカー履いたけど、少し飽きちゃったもんね。やっぱり革靴ないと刺激ないし、スタイル成り立たないじゃないですか。すごく貧相なファーストフードをずっと食べてるような気分になってしまって。

─たまに食べるファーストフードだから美味しく感じるんですよね。
そうなんだよね。

─普段、コーディネートされるときは、ネクタイから考えていくんですか?
その日によってバラバラです。この靴履いていこうかなって日もあるし、このネクタイしていこうかなって日もある。今日はこのネクタイを久々にしたいなって思ったり。

─ジャケットなどの大きいアイテムから組み立てて行くのが普通ですよね。
でも、まぁそこら辺の方程式がある程度自分のなかでできいるので、どこからでも紐解けちゃうんでね。だから小さいものから考えることが多いですね。それこそ、今日はこの《ドリス ヴァン ノッテン》のチーフをしたいってところから始まったり。

─コーディネートのなかでも、《ドリス ヴァン ノッテン》のセットアップも選んでいただいてましたが、鴨志田さん的には気になるブランドですか?
ドリスは偉大です。個人的には、現役デザイナーのなかでドリス(ヴァン ノッテン)が一番好きですかね。一番、着たいと思うものが単純に多いというか。デザイナーって、毎シーズン常に新しいものを出さなきゃ行けない宿命があるし、そうすると絶対どこかで無理が生じるでしょ。でもそんなななかで、ドリス(ヴァン ノッテン)ってのは、安定して、毎シーズンどこか必ずリアリティのあるものを、男が着てかっこいいなと思えて、そして長く愛用できるっていうものを作ってくれるデザイナーだと思いますね。そんなデザイナーってなかなかいないんですよ。そのなかでももっとも優れたデザイナーだと思いますよ。

─毎シーズン何かしら買ってしまいますか?
そうですね、何かはオーダーしてますね。

─そうですよね、彼のクリエションってシーズン性みたいなものがないですよね。今回鴨志田さんに選んでいただいたセットアップも数年前に発表されたものですが、やっぱり普遍的なかっこよさがあります。
ちゃんと彼のスタイルが反映されているので、あんまり飽きちゃうってことがないんですよね。それは素晴らしいじゃないですか。個人的には、旬なものよりも、何年前のものを着ているっていう方がかっこいいと思っているのでね。

about him

Fashion Director
鴨志田康人

ユナイテッドアローズの立ち上げのメンバーの一人。2007年には約20年以上のバイヤー経験を存分に生かした自身のドレスブランド《Camoshita UNITED ARROWS》を立ち上げる。現在はユナイテッドアローズのクリエイティヴディレクターを務める。


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