ABOUT THE RULES OF CREATION

Vol.02 HAT MAKER《KIJIMA TAKAYUKI》
不得意から生まれたクリエイションのルール

写真:河津達成 文:神田春樹
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Vol.02 HAT MAKER《KIJIMA TAKAYUKI》<br />不得意から生まれたクリエイションのルール

して雄弁な作り手ではないだろう。これまで頑にメディアへの露出を避け、生み出すプロダクトのみで評価されてきたハットメーカー《KIJIMA TAKAYUKI》。ブランド創設から現在まで、帽子作りへの一貫した姿勢を通してファッションと向き合ってきたブランドのデザイナー、木島隆幸氏にブランドの成り立ち、そして自身のクリエイションにおけるルールを訊いた。

vol.02
デザインソースとクリエイションにおけるルール

1890年代や1920年代の貴重な帽子から缶を編んで作られたユニークなものまで。ブランドの洗練されたコレクションからは想像できないアイテムばかり。

「自分では絶対作らないもの、自分の感覚には無いものに惹かれる」

—帽子に関して、木島さんがこれまでに影響を受けたものを教えてください。

「僕は既製品や量産品が好きなんです。例えばユニホームとかって、色々な知恵が詰まっていて、分解するとすごく面白い。いわゆる帽子屋さんが作る帽子ではなくて、企業が作った量産的なものや、ミリタリー、アウトドアのプロダクトには、自分では考えつかないようなアイディアが詰まっていることが多いんです。だからハットブランドの帽子よりも、そういったものの方に興味をそそられますね。自分では絶対作らないもの、自分の感覚には無いものが好きだし、そういうアイテムばかり集めています。僕自身、デザイナーをやっておきながら帽子を買った記憶がほとんどないんですよね。洋服だと、昔の古着などから細部のディテールを参考にして、今の物作りに生かしたりすることができると思うんですが、帽子はそれができない。というのも、帽子って作り方から縫製まで、もう何十年もほとんど進化していないアイテムなんです。過去の帽子からヒントを得ることが無いのはそういった理由からですね。ファッションだけで言っても、ほかのアイテムはみんな進化しているのに、何で帽子だけずーっとそのままなんだろうって。それが嫌で、コレクションのほとんどを帽子工場ではなく、ウエアの工場で製作したりしています。縫製の技術などが圧倒的に良いんですよね。アパレルの工場で帽子を縫える所もないのですが、10年以上前から今の工場と密に関係性を作ってきました」。

「正直、帽子ってあまり得意じゃないんですよね」

—ご自身ではいつもどんな帽子を被っているのですか?

「どうしても顔に近いもの、眼鏡やアクセサリー、ハットって照れるじゃないですか?僕自身、デザイナーながらそういう感覚が強くて、正直、帽子ってあまり得意じゃないんです。なので、普段はあまり被らないですね……(笑)。だからこそ、自分が作る帽子は初めて被る人や、気恥ずかしいと思う人でも抵抗のないものにしたい。帽子を被ったことのない人に良いものを提供する、というのもブランドコンセプトのひとつなんです。気恥ずかしいという感覚をもっている人にこそ、ウチの帽子を被って欲しい。帽子を被らない派なんで、苦手な人の気持ちがすごく分かるんですよ(笑)。帽子って今まで被っていなかった人が被ると、どうしたの?って必ず聞かれるアイテムじゃないですか? なので、今までずっと被ってきたかのような違和感の無い物作り、そして、製品からそういう雰囲気を生み出すことが自身のクリエイションの目指すところだし、ルールとも言えます。僕自身がそういうタイプなので、あからさまなかっこ良さよりも、“なんか良いな”という感覚を大切にしています。僕は自分が被りたい、というよりも人が被っていて、“あぁかっこ良いな”と思えることが1番嬉しいんです」。

—木島さんの物作りにおけるルールは、アイテムにどう反映されているのでしょう?

「ミリタリーなどの量産的なプロダクトに惹かれるというところにも通じるのですが、僕自身、繊細なものよりもラフに扱えて雰囲気のあるものの方が好きなんです。ハットでも、暑くなったら上着のポケットやバッグに無造作に入れられる方がいい。なので、基本的にウチの帽子は洗えたり、つぶせたり、歪んだ時の表情が良くなるように意識しています。細かなデザインに関してもそうですが、こういった帽子の扱いに関しても、ルールが反映されている所ではないかと思います。だから、そういう部分は僕の性格と物作りがリンクしていますね」。

—ニットまで含めるとワンシーズン約80型にもなりますが、デザインはどのように出来上がっていくのですか?

「サンプルを作り始める前に色々な資料などには目を通しますが、輪郭がハッキリしているものではなくて、写真の雰囲気や着こなしから伝わる人間像など、ボヤっとしたイメージを膨らませて行く場合が多いですね。帽子デザイナーだから、街で被っている人を見かければ目はいくんですが、今ある帽子から直接インスピレーションを得ることはないです。全く関係のない物事を帽子というアイテムに落とし込む方法が自分のスタンダードですね。ここ数年ですが、世間の風潮として以前よりも帽子を被ることに抵抗がなくなってきたと思うので、今後、帽子というアイテムにより可能性を感じています」。

KIJIMA TAKAYUKI 2014 AUTUMN&WINTER COLLECTION
  • ウールで製作されたハットは、牛革のベルトで自分のサイズに調節可能。サイドに付くスナップボタンでシルエットの変化も楽しめる。¥23,760
  • ポリエステルフェルトのビッグハット。内側のドローコードで被る深さを調整できるのが特徴。
クラウンの形も自分好みにアレンジすることができる。¥12,960
  • ラビットファーを使用し、装飾をはぶいたミニマルなハット。内側のサイズテープをあえて省略することで、リラックスした被り心地と美しいフォルムを実現。
丸めて携帯が可能。¥20,520
  • 3種類のリボンやコードなどを巻いたウールフェルトハット。ミニマルのデザインに一癖加えたディテールワークが映えるアイテム。¥21,600
  • 上質な色合いとしっとりとした手触りのビーバーフェルトハット。ブリムの上げ下げや、丸められるなど、品のある佇まいと機能性を兼ね備える。¥37,800
  • 杢調のダブルバイザーキャスケット。麻混のウール生地を製品洗いでシワ感のある柔らかな雰囲気に仕上げている。ダブルバイザーがアクセント。¥11,880

about HIM

Designer
木島隆幸

ハットメーカー、《KIJIMA TAKAYUKI》のデザイナー。1994年《coeur》を設立。2013年よりブランド名を《KIJIMA TAKAYUKI》へと改名。ハットやキャップ、ニット帽など、そのクオリティとデザイン性の高さにファンも多い。東京・恵比寿に直営店を構える。


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