SPECIAL TRIPARTITE TALK

“水の時代”の暮らし方 Vol.2

写真:竹内一将(STUH) 取材・文:林理永
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Vol.2 自分に合った水を選ぶ

早川光(水スペシャリスト) × 宮本彩菜 (モデル) × 大田由香梨 (ライフスタイリスト)

たちが毎日必ず触れる“水”のこと、どのくらい知っていますか?これだけ食の重要性が訴えられているなか、その根源にある水について知ることは、実はすごく重要なことなんです。今回、水について教えてくれるのは、多面的な観点から水について研究している水のスペシャリスト・早川光さん。自らカフェを営むライフスタイリスト・大田由香梨さん、最近農業を始めたモデル・宮本彩菜さんとの鼎談形式で、水の基本や選び方、環境問題まで、3回にわたって「“水の時代”の暮らし方」を考えます。

「自分の食生活を見つめ直して、ミネラルが足りていないようであれば、まずは硬水からミネラルを摂ることをオススメします。」(早川光)

─自分に合った水はどう選ぶ?

大田由香梨(以下、大田)「水って、この人にはこの水が良い!というような個人差はあるんですか?」

早川光(以下、早川)「まず、その人の体調や健康状態によります。分かりやすい例で言うと、スポーツをして日常的に汗をかく人は、硬水を飲んでミネラルを補給した方がいい。汗によって水分だけではなくてミネラルも体の外に排出されてしまうので。」

宮本彩菜(以下、宮本)「逆に、ミネラルを既に沢山摂っている人は、軟水の方が良いんですか?」

早川「そうですね。例えば、普段ミネラルをサプリメントで摂っている人は、サプリメント+『コントレックス』のような硬水だと多すぎてしまう。サプリメントと軟水で良いんです。だから、その人のケースバイケースというか。」

宮本「私はミネラルが足りていないかも…。」

早川「日本人、特に20〜30代の女性はミネラル不足の人が多い。カルシウムに関しては「国民栄養調査」の結果にも出ています。それは日本人の食生活がここ30年くらいでガラリと変わってしまったからなんです。昔の日本人は、わかめのお味噌汁、ひじきの煮付け、焼き魚など、食事で海産物を食べていたんですね。つまり、海産物からミネラルを摂っていた。でも今は、そういった食事は日常的にはしないですよね。」

大田「じゃあ、私たちは昔の日本人に比べると、相当ミネラル不足なんですね。」

早川「その通りです。ですから、現代の日本人は、食事だけでは摂取できないミネラルを水からも摂った方がいいんです。

宮本「硬水が多いヨーロッパの人達は、元々、水からミネラルを摂っていたんですか?」

早川「ええ。ヨーロッパの人たちは、肉食が中心で海産物はあまり食べません。その代わりに、乳製品や水でミネラルを摂ってきたわけです。もし日本人も、以前のように海産物でミネラルを採る生活ができるのであれば、それが一番合っています。食生活がヨーロッパスタイルになっているのに、水は日本の軟水のままだから、ミネラル不足になってしまうんですよね。自分の食生活を見つめ直して、ミネラルが足りていないと感じたら、まずは硬水でミネラルを摂ることをオススメします。

大田「食とすごく通じていますよね。バランスが大事なんですね。昨日食べたものから今日どういうチョイスをするか、というのと同じように、ミネラルウォーターでも自分の状態を知って選ぶという。」

早川「第1回目でも少しお話ししたように、硬度の高い水でも、不味くて飲めないという人と、普通に受け入れてしまう人がいるんです。もし硬水が抵抗無く飲めるのであれば、体の中にミネラルが足りていないシグナルかもしれません。だから、あんまり先入観を持たないで、ヨーロッパの水も飲んでみると良いと思いますよ。コンビニやスーパーでよく売っている水だけではなくて、ネット通販などを利用して、色んな種類の水に挑戦してほしいと思います。」

大田「いま自分がどの水に手が伸びているか…(笑)」

早川「あと、ヨーロッパは水も土壌もミネラル豊かなので、野菜にもミネラルが沢山入っているんですよ。でも日本は水だけじゃなく、野菜にもミネラルが少ないんです。だから野菜サラダを沢山食べたからといって、ミネラルを摂れる訳ではないんですよね。」

─ミネラルの重要性

宮本「ミネラルを摂ることは、重要なことなんですか?」

早川「ミネラルバランスを整えることは、すごく重要です。新陳代謝や神経伝達などとも密接に関わっていますから、体調だけでなく、心の安定にも影響してきます。イライラしたり、落ち着きがなかったり、疲労感が抜けないという時は、ミネラル不足がその原因になっている場合もあるようです。

大田「私も以前、マクロビオティックに詳しい友人に、自分の心と身体のバランスのお話を聞いたことがあります。そこでも、ミネラルの海藻や海産物は、キーワードとして登場していました。」

早川「生活を変える第一歩として一番すぐにできますよね。普段飲んでいる飲み物を今日からちょっと、自分に合った水に変えてみよう、というだけですから。甘い飲み物を1回やめて、ノーカロリーのミネラルウォーターにするだけで、身体の中は変化してくるんですよ。」

宮本「そうすると、身体の中から生まれ変わりそうですね。」

早川「人間の細胞には生まれ変わるサイクルがあって、例えば、肌細胞だと1ヶ月くらいで入れ替わるとされています。1ヶ月、飲み物をジュースから水に変えてみてください。肌も生まれ変わると思いますよ。

「日本に比べて、ヨーロッパの水には個性があって、環境保護への取り組みもしっかりしています。」(早川光)

─ヨーロッパの個性的な水と環境保護

大田「こうして飲み比べてみると、ヨーロッパの水は、それぞれ水の味が違って個性的ですね。」

早川「ヨーロッパの水は硬度が全く違うので、個性がすごくはっきりしているんですよ。硬度60の『ボルヴィック』から、硬度1468の『コントレックス』までかなりの幅がありますから。それに、“硬度”に換算されるカルシウムとマグネシウム以外のミネラルが沢山入っている水もあります。カリウムやナトリウム、炭酸水に入っている重炭酸塩も、“硬度”の中には入っていません。」

宮本「ヨーロッパの水は、環境保護がしっかりしていて環境が整っている、と聞いたのですが、実際のところはどうなんですか?」

早川「よくご存知ですね。EUに加盟しているヨーロッパの国では、環境保護がしっかりとなされています。ナチュラルミネラルウォーターに分類される水であれば、例外なく水源の周辺は保護、保全されていて、しかも無殺菌です。

大田「無殺菌の方が良いんですか?」

早川「水は加熱をするとミネラルの質が変わってしまうので、加熱をしないことが理想です。でも日本の水は、ほとんどが加熱処理をしてしまっています。日本の場合は、加熱をしないと安全が保てないという考え方なんですね。一方ヨーロッパでは、加熱をするということは、元々の水が安全じゃないからだ、という考え方なんですよ。そこが大きく違いますね。」

宮本「だから、早川さんは、ヨーロッパの水を中心にお話しされているんですね。」

早川「そうですね。ナチュラルミネラルウォーターのブランドの多くが、周辺の半径数キロという広大な地域を環境保護しています。そこでは農薬を使うことも新しく建物を建てることも制限されています。その周囲に畑がある場合も、肥料の量を抑えたり、農薬を使う代わりにテントウ虫を使って害虫を防いだり。そういう取り組みに、地方自治体が協力したり援助したりしているんです。メーカーだけではなく、周辺住民や自治体が一体となって環境を保護している。そういった条件を満たしていないと、ナチュラルミネラルウォーターを販売することはできないんですよ。

大田「すごい!そんなに環境保護がすすんでいるんですね!」

早川「しかもヨーロッパの水は、水の味や硬度に個性があるのと同じように、それぞれの水源地と保護の取り組みにも個性があるんです。例えば、『エビアン』の町そのものは観光地なのですが、そこから少し離れた場所にある水源はきちんと保護されていて、地域住民がグリーンパトロールになったりして、自治体と共同で環境を守っている。その代わり、観光地としての利益も町に還元されていて、町の人達もその恩恵を受けていたりする。そういう、自治体と住民が協力して環境を守ることで、観光地としても栄えるという利害関係がはっきりしているんですよね。」

宮本「日本の場合だと、環境保護はボランティアでするもの、という考え方ですよね。」

早川「ヨーロッパの場合は、それが一方で自分たちの利益を守ることにもなるので、一生懸命やるんですよ。

大田「水と環境って、すごく密接じゃないですか。地球の中では、生命体の最重要事項ですよね。だから、水を販売する企業がそうやって環境を保護しているというのは、本当に良いことですね。」

早川「環境保護をすることと、観光地であることが両立しているのがヨーロッパの面白いところです。この『サンペレグリノ』のラベルの絵は実はカジノなんですよ。今はもう、このカジノの建物は使われていませんが、『エビアン』や『ヴィッテル』にはカジノがあります。環境保護地域の近くにカジノがあるなんて、日本人にはちょっと変な感じだけれど、ヨーロッパでは珍しくないんです。」

大田「目の付け所が、かなりイケてますね。」

早川「『コントレックス』は、日本ではダイエットの水というイメージですけれど、フランスでは泌尿器系の治療の為にコントレックスに行くという人も沢山いるんですよ。ちゃんと健康保険も適応されるんです。日本では水治療というと何か怪しい感じがしますけど、ヨーロッパだと、水を使った治療は特別なことではありません。」

宮本「日本では、あまり考えられないことですね。」

早川「あとは、ヨーロッパと日本の大きな違いは、女性、特にお母さんに対する手厚さですね。特にフランスは、子育てのための国の支援が非常に充実している。『エビアン』の町では赤ちゃんとお母さんの保養の為に施設を活用しています。赤ちゃんを預かってお母さんはエステを楽しんでください、というプログラムまであるんですよ。」

宮本「その企業によって、そんなにはっきりと個性が違うんですね!ルーツを知って買うことが重要ですね。」

早川「ヨーロッパには本当に色んな水があって、星つきのレストランなどでは、どんなミネラルウォーターをセレクトしているかが、その店の個性になったりしています。」

大田「ちゃんとしたイタリアンの店とかだと、水が選べるじゃないですか。ワインと同じように水を楽しむ、という文化が根付いているということですよね。」

「環境保護をしている企業とそうでないところを買う側が理解して水を買うと、それが環境保護に繋がっていきますよね。」
(早川光)

─日本の環境保護の実態

大田「世界各地に行っても日本ほど水が豊かな国ってなかなかないですよね。アメリカも都市部を離れるとすぐ砂漠の大地だし、ケニアに行った時には一面サバンナでした。南米も、高山でもずっと木が生えていない状態で。」

早川「まず森林が多いということと、雨が安定して降るということ。この2つが重なっている所が地球上でも少なくなってきている。しかもそこに文化と文明が共存している、というのは本当に稀なことです。でも日本の場合に限って言えば、水質の良い水が容易に手に入る環境だからこそ、その分、保護に対する取り組みが遅れてきたという面もあると思います。

宮本「水や緑が豊かなことが当たり前すぎて、ということですか?」

早川「そうですね。水源を保護するためには手付かずの自然環境を残すことが不可欠なのですが、日本では、すでに人の手が入ってしまっている所が多いんです。森林は残されていても、工場などの施設がすぐ近くにあったり、一見綺麗な緑に見えてもそれがゴルフ場やレクリエーションの施設だったり。それに、日本の場合は降った雨が比較的短時間で地下水になるから、環境を壊すようなアクシデントがあると、ヨーロッパなどより早い段階で問題が現れてしまう。実はか弱い存在なんですね、日本の国土って。ヨーロッパの研究者には、「こんなに狭い国土で、しかもこんなに人口密度が高いのに、自然環境を保全しろと言っても無理だろう」と言う人さえいます。」

大田「そうすると、日本もヨーロッパのように、自治体や町ぐるみで環境保護をしていくことが、これからの課題になってきますね。

早川「そうなんです。日本でも、サントリーは環境保護に力を入れていて、“水と生きる”ということをスローガンとして掲げています。それでもやっぱり、それは大企業だからできることで、小さな会社は環境保護にまでお金をかけられないというのが現状です。だから大田さんが仰るように、自治体とメーカー、周辺住民が一致協力して環境保護に力を入れることができれば、それが本当の意味での第一歩になると思います。

宮本「それを踏まえた上で、早川さんがオススメする日本の水は何ですか?」

早川「先程も話に出てきたサントリーは、計画的に水源をとりまく環境の保護をしているので、日本の企業の中でも、先進的な会社だと言えると思います。だから『南アルプスの天然水』はオススメですね。」

大田「コンビニやスーパーでもよく見る水ですね。」

早川「あと、僕が個人的に好きなのは、大分県の『白水鉱泉』です。大正5年から国の許認可を受けて販売してきたという歴史のある水。18リットル入りの大きな箱でのみ売っていて、微炭酸なのですが、正真正銘の天然の炭酸水です。しかも今でも小さな工場で限られた量しか生産していないんです。」

─私たちが水を買う時に考えるべきこと

宮本「私たちも、水がどのルーツから来ているのか、その企業がどんなことを考えているのか、考えてから水を買わないといけないですね。

早川「単純に、ミネラルウォーターを購入したお金の一部が環境保護に回っているとはっきり分かれば、消費者はみんなもっと買いやすいと思うんです。これからは、そういうことがもっともっと明確になっていくべきです。その水を育む自然環境の事を知って、自分が納得する商品にお金を使うようにしていけば、ちゃんと繋がっていきますよね。

大田「私は今までミネラルウォーターを買わないようにしていたんです。買うことによって、逆に環境破壊が起きてしまうのではないか、と思ってしまっていたんですよ。でも、こういう環境保護をしているところであれば、買っても良いですよね。」

早川「これからは、環境保護に取り組んでいる企業とそうでない企業があるということを消費者が理解して、お金を使う価値のある商品を見抜いていくことが大切になってくると思います。メーカーの中には、環境保護について全く考えていない営利主義のところもあるわけですから。」

宮本「そんな現状もあるんですね…。」

早川「環境保護に前向きに取り組んでいるメーカーの商品を購入することが、そのまま環境保護に繋がるということが、もっと明確になってくれば、日本の環境保護もすすむと思うんですよね。」

大田「私自身、こんなに基本的で大切なことなのに知らない事だらけで、もっとちゃんと勉強したいし、知るべきだな、と思いました。」

早川「これからは、水や食物の品質についてだけじゃなく、その水や食物がどんな環境で育まれたのかということがもっと問われるようになってくる。生産性を優先した結果、犠牲になってきたものがどんどん明らかになっていくんじゃないかな。僕たちの次の世代のために、そこを元の姿に戻すことが重要で、それはもう人に頼るのではなく、自分たちでやるしかないんです。

Vol.3 「これからの水を考える」へ続く。

about THEM

Water Specialist
早川光

はやかわ ひかり
著述家、漫画原作者。東京新宿生まれ。ライフワークは水と江戸前寿司で、「すし江戸前を食べる」「東京の自然水」「おいしい水で料理が変わる」「ミネラルウォーター・ガイドブック」「ミネラルウォーターで生まれ変わる」「江戸前ずしの悦楽」「日本一江戸前鮨がわかる本」「鮨水谷の悦楽」など、数多くの著書がある。中でも「ミネラルウォーター・ガイドブック」は1994年の発売以来、20年ものロングセラーとなっている。コミックス「江戸前鮨職人きららの仕事」「私は利休」「アントルメティエ」などの原作も担当。(「きららの仕事」は2005年にTBSでテレビドラマ化)
2002年9月には東京都の「名湧水選定委員」に就任。現在、テレビ番組「早川光の最高に旨い寿司」(BS12)に出演中。
http://hikari-h.blog.so-net.ne.jp/

Model
宮本彩菜

みやもと あやな
モデル。1991年大阪府生まれ。2013年より本格的に活動をスタートし、広告や雑誌等を中心に活動中。 自ら撮影&編集した動画・GIF・イラストなど、クリエイターとしても国内外で注目を集めている。今後は女優として活動の場を広げて行く予定。今年から岩手県に”AYANA’s Vegetable Garden”を作り、農業を始める。

Life Stylist
大田由香梨

おおた ゆかり
ライフスタイリスト。Fashion stylistとして培った視点をベースに、衣食住<ライフスタイル>全てにおいてのスタイリングを手がける。2011年より、自身のライフスタイルへのこだわりを投影した”ORGANIC TABLE BY LAPAZ”をプロデュース。多くの情報が溢れ、流れてゆく現代のライフスタイルのなかで、ヒト・モノ・コトすべてに、流行に左右されない付加価値をスタイリングする。
www.yukari-ota.com
www.instagram.com/otayukari


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