SPECIAL TRIPARTITE TALK

“水の時代”の暮らし方 Vol.1

写真:竹内一将(STUH) 取材・文:林理永
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Vol.1 水の基本を学ぶ

早川光(水スペシャリスト) × 宮本彩菜 (モデル) × 大田由香梨 (ライフスタイリスト)

たちが毎日必ず触れる“水”のこと、どのくらい知っていますか?これだけ食の重要性が訴えられているなか、その根源にある水について知ることは、実はすごく重要なことなんです。今回、水について教えてくれるのは、多面的な観点から水について研究している水のスペシャリスト・早川光さん。自らカフェを営むライフスタイリスト・大田由香梨さん、最近農業を始めたモデル・宮本彩菜さんとの鼎談形式で、水の基本や選び方、環境問題まで、3回にわたって「“水の時代”の暮らし方」を考えます。

「“水の時代”と呼ばれる21世紀。これから先の未来は、水や手付かずの自然が世界の中心になっていきます。」(早川光)

─軟水と硬水の違いって?

早川光(以下、早川)「今日はこれだけペットボトルのミネラルウォーターが並んでいますが、普段は水にこれだけ種類があることも、あまり意識しないですよね。これだけ身近な水について知識を持つことは、実は、生活や体質を変える第一歩なんです。それに、21世紀は“水の時代”と呼ばれているくらいですから、これから先は必ず、水について知っていること、水を通して環境問題や諸外国との関係を考えることがスタンダードになってきます。

大田由香梨(以下、大田)「今、食品の問題なども色々出てきていますが、水は、そのベースとなる、基本的なものですよね。」

早川「その通りです。まずは基本的な“軟水”と“硬水”の話から。これは簡単に言うと、水の中に含まれる、マグネシウムとカルシウムの合計値が高いものが“硬水”、低いものが“軟水”です。一般的に知られているミネラルウォーターで言うと、『ボルヴィック』は軟水ですよね。『エビアン』は中間くらいで、『コントレックス』が硬水。ヨーロッパの水は硬水が多いです。実は『ペリエ』も硬水です。」

宮本彩菜(以下、宮本)「ミネラルウォーターは地下から汲み上げられる水のことですよね?どうしてヨーロッパでは硬水が多いんですか?日本の水は軟水が多いように感じますが…。」

早川「その理由は、ヨーロッパ大陸の成り立ちにあります。海のミネラルが堆積した海底が地殻変動によって隆起してヨーロッパ大陸が出来上がったので、土壌の中にミネラルが多いんです。そのミネラルの多い大地に降った雨が浸透してミネラルウォーターになるので、ヨーロッパ大陸の地下水は硬水が多いんです。あとは、雨水が浸透して地下水となるまでの時間が、日本と比べて長いことも影響していますね。日本は比較的短時間で地下水になるので、溶けるミネラルの量はどうしても少なくなります。」

大田「『コントレックス』は硬くてなかなか飲めないです…。」

早川「最初は飲みにくいけど、飲み続けるうちに慣れますよ。あと、面白い話があって、昔の日本人は、『エビアン』でも相当重たい水だと認識していたのですが、今の10代〜20代は、普通に飲めるんですよ。だからその分、現代の日本人は、昔より食べ物から摂取するミネラルが不足しているんだと思います。身体がミネラルを欲しているんですね。

宮本「そもそも、硬水を飲むと、どういう作用があるんでしたっけ?」

大田「海外のモデルの子達は、1.5Lくらいの硬水のペットボトルを持ち歩きながら、毎日飲んでますよね。」

早川「身体の新陳代謝を高めてくれるのと、老廃物の排出を助けるのに役立ちます。でも、あまり飲み過ぎるとお腹の調子が悪くなったりするので、そこは気をつけた方が良いですね。」

─水を美味しく飲むコツは?

宮本「私は冷やした水が好きで、いつも冷やしたお水を飲むのですが、常温の方が良いともよく聞きます。本当のところはどうなんですか?」

早川「ただ単に爽やかに飲みたいなら冷やして飲むのも良いのですが、本来の水の味を味わうには、温度が高すぎても低すぎてもダメです。理想は大体15〜18℃くらい。具体的には、冷蔵庫から出した水を涼しい室内に置いておいて10分くらい経ったくらいが一番良いです。氷を入れないで飲むと、より水の味が分かります。」

大田「水の温度が低いことによって身体に影響はあるんですか?ダイエットに良くないとか…。」

早川「冷たい水は飲み過ぎると体が冷えてしまうので、体温の調節が追いつかず、かえって代謝が落ちてしまうんです。でも、飲み過ぎにさえ気を付けていれば、基本的に冷たい水を飲むことは悪いことではないですね。」

大田「特に今の季節は美味しいですしね、冷たい水の方が。」

早川「冷たい水はコップ1杯くらいにしておくのが良いですね。 常温だと癖が気になってしまう『コントレックス』のような硬度の高い水も、冷やすとそれほど気にならないですし。」

宮本「栄養素的には、温めても変わらないんですか?」

早川「沸騰させてしまうとミネラルが結晶化して失われてしまうのですが、少し温めるくらいであれば問題ないです。」

「食品と同じで、水も、本当に安全なのか、自分で意識をしなくてはいけない時代になりましたよね。」(大田由香梨)

─浄水器の水は安全?

大田「私は人に食事を提供するカフェの仕事をちょうど地震後の2011年に始めたのですが、水にも気を付けなくてはいけないな、と感じていて…。今は特に、水や食品の産地を選択しなければいけない時代になりましたよね。うちのお店だと、“シーガルフォー”という放射線を除去できる浄水器を入れています。」

早川「そうですね。“シーガルフォー”はかなり優秀ですよね。そういった浄水器は、今すごく発達していて、業務用の優秀な浄水器を通すと、危険物質などは、ほとんど除去できます。でも、安全な水にはなるけれど、自然な地下水のバランスになるかというと、ならないんですよね。汚れている水、化学物質が含まれている水を綺麗にするだけで。やっぱり一番良いのは、自然の地下水が健全な状態で保たれていることです。

宮本「そうですよね。ミネラル豊富で、っていう。」

早川「浄水器を使わなくても良い水が一番なのですが、都会の水道水ではなかなかそういう訳にもいかないですから。ただやっぱり、一般的な浄水器だと、除去できる物質も限られているし、健康に良い水を作る、という意味ではやっぱり限界があるんです。大自然は、大地の何層ものフィルターで、安全で健康に良い水を作ってくれる訳ですから、そういった自然環境を守ることが、本当は一番大切なんですよ。

─ウォーターサーバーの選び方は?

宮本「今、ウォーターサーバーもどんどん色々なものが出てきていますが、何を選べば良いんですか?」

早川「ウォーターサーバーの水には、実は2種類あるんです。1つは、ミネラルウォーターを使っているもの。もう1つは、“RO水”といって、”逆浸透膜”というすごく優秀なフィルターを使用した濾過水です。値段の安いものは大体RO水のものですね。」

大田「じゃあ、元の水はミネラルウォーターではないんですか?」

早川「危険物質を取り除いた水道水がほとんどだと思います。ミネラルは人工的に添加したものが多いです。最近、大手のスーパーには、サービスでボトルを持っていくと無料で水を貰えたりもしますよね。そういうのは大体RO水と同じものです。」

宮本「そうだったんですか!ミネラルウォーターのものは少ないんですか?」

早川「そんなことはないです。サントリーもそうですし、最近はいろんなメーカーがミネラルウォーターを使い始めています。だから、これからウォーターサーバーの購入を検討しているのであれば、ミネラルウォーターを使っているのか、RO水を使っているのか、というところが最初に選ぶ時のポイントですね。

宮本「じゃあ、ミネラルウォーターを使用しているものを意識して選べば良いんですね。」

早川「ただ、ウォーターサーバーにも気をつけなければいけないところがあって、飲み口や、サーバー内の色々な場所が汚れやすいんですよ。あとは、温度を調節できる機能が付いてますよね。ミネラルウォーターを冷水にしたり、温水にしたりということを繰り返して、水にどんな影響があるのかについてはまだわからない点があるんです。」

大田「サーバー内を洗浄する方法ってないですよね。」

早川「今は自動洗浄システムがついたウォーターサーバーも出てきています。ただ、エアコンの自動洗浄と同じで、定期的なメンテナンスは絶対に必要です。でもそれも、ここ何年かしたらまた進化すると思うんです。そういう意味で言うと、今慌ててウォーターサーバーを買うよりも、もう少し待った方が良いかもしれないですね。

「水を規則正しく飲んでいくと体内にリズムができて、そのサイクルが痩せるサイクルになるんです。」(早川光)

─水と料理の関係って?

宮本「私は料理がすごく好きなんですけど、食文化と水は密接に関わっていますよね。ヨーロッパではお肉をよく食べますが、料理に使う時も、硬水の方が良いんですか?」

早川「その通りです。それにも理屈があって、ヨーロッパの料理では、牛すじや鶏ガラなどで出汁をとりますよね。そういう素材は長時間煮出さないと味が出て来ないんです。硬水で煮出すと、牛スジや鶏ガラの灰汁と硬水のカルシウムがくっついて、外に出るので、こまめに灰汁を掬うことで、煮込めば煮込むほど深い味が出てくるんです。そういう時に、軟水を使って煮出すと動物臭くなってしまいます。」

大田「日本では、料理には軟水を使いますよね?」

早川「そうですね。だから、出汁をとる素材も軟水に合ったものばかりですよね。昆布や鰹節は軟水じゃないと出汁が出ないんです。硬水を使っても味が全然出てこない。特に鰹節の場合は、あんまり煮立ててしまうと匂いが出てしまう。ちょっと煮立ったくらいで火を止めなければいけないから、抽出力の高い軟水を使った方がいいんです。」

宮本「そんな理由があったんですね。飲み物も同じですか?」

早川「エスプレッソのように深煎りの豆を高温で淹れるコーヒーは、日本の軟水で淹れるとすごく苦くなってしまいます。イタリアやフランスの硬水で淹れるとちょうど良い。だからエスプレッソをちゃんと淹れようと思ったら、『エビアン』などで淹れた方が良いですね。」

─美容やダイエットと水の関係は?

大田「お水って、飲む以外にも、炭酸水で顔を洗うと綺麗になる、というのは本当なんですか?」

早川「それは、顔の表面のpHが弱酸性だからです。アルカリ性の石鹸で顔を洗ってしまうと、肌のpHがアルカリに傾いてしまう。でも炭酸水だと、同じ弱酸性なので、負担が少ないんです。だからどうせやるのであれば、日常的に炭酸水で洗った方が良いですね。お金がかかるので、なかなかそういう訳にもいきませんが(笑)決してシュワシュワがあるから汚れが落ちる、とかそういうことではないです。

大田「じゃあ、炭酸水で洗ったから、その日だけ綺麗というわけではないんですね。」

宮本「よく、ダイエットには水を一日1.5リットル飲むと良いと聞きますが、それは本当なんですか?」

早川「それは、水を飲むからダイエットに効果があるというよりも、水を小分けにして1日1.5リットル飲む、という行為自体に効果があるんです。冷たい水を飲むと体温が下がるので、それを戻そうとしてカロリーが消費されるのも1つありますし、食事の前に水を飲んで胃酸の濃度が薄くなると食欲が抑えられます。そうすると、食べ過ぎなくて済みますよね。」

大田「なるほど。どのくらいのペースで飲むのが良いんですか?」

早川「1回にコップ1杯250ml位ずつ飲むとすると、3度の食事の前に1回ずつ、通勤やその合間に3回飲んで計6回でちょうど良いかもしれませんね。その6回を規則正しく毎日繰り返していくと、体の中にリズムが出来てきます。そして、そのライフサイクルが痩せるサイクルになるんです。いきなり水を飲んだからといって、痩せる訳ではないですから。」

宮本「自分のサイクルとして取り入れていけば良いんですね。」

早川「あともう1つ良いのは、水をそれだけ飲むと、他の飲み物を飲まなくなるんです。甘いジュースはもちろん、アルコールなどもカロリーがすごく高いですよね。」

大田「そういう時に飲むのは、やっぱり硬水が良いんですか?」

早川「そうですね。硬度の高い『コントレックス』などを飲むと、含まれるミネラルによって新陳代謝が高まるという効果がもう1つプラスされるので、良いとされています。もちろん『エビアン』でも『ヴィッテル』でもかまいません。」

─水は腐る?

宮本「水って腐るんですか?」

早川「腐ります。水自体が腐る、というよりは、水の中の雑菌が増えすぎて飲めなくなるということです。1度外気に触れたものは、あまり長く放置しておかない方が良いですね。特に、ペットボトルに口を付けて飲むと、だ液の中にある雑菌が繁殖してしまいます。自分の口の中の菌にはある程度免疫があるのですが、他の人の口の中の菌には免疫がないので、他の人が口をつけてしばらく置いておいた水は、飲まない方が良いです。」

大田「じゃあ、ウォーターサーバーも、縮小するタイプもあれば、空気が残るタイプもありますよね。」

早川「ボトルの中に空気が残るタイプのものは、中の水も悪くなる可能性があります。空気に全く触れない状態で、太陽に当たらない場所で保存しておけば、ミネラルウォーターは1〜2年くらいは大丈夫とされています。災害用に、5年保存水として売っているものは、ペットボトルを少し厚くしたり気密性を高めることで、保存できるようにしているんです。」

宮本「地下に流れている昔の水はどうなんですか?」

早川「地下水も空気に触れない限り腐りません。地層の浅い所にある水は雨など外部の影響を受けやすいのですが、地下数十メートル以上の深い場所にある水は影響を受けにくく、小さな生態系があって自浄作用があるので、腐りにくいんです。

大田「その中で生態系が循環しているんですね!」

早川「同じ環境を維持できるようになっているんですよ。

宮本「東南アジアに行くと水でお腹を壊す、という話をよく聞きますが、それは腐っているんですか?」

早川「それは、菌の問題です。飲み水の中に含まれる細菌は、その国や環境によって種類が違うんですよ。東南アジアの人はその飲み水に適応した腸内細菌を持っているので平気なのですが、日本人にとっては慣れない細菌が入ってくるので、腸が反応してしまうんです。」

Vol.2 「水の選び方」へ続く。

about THEM

Water Specialist
早川光

はやかわ ひかり
著述家、漫画原作者。東京新宿生まれ。ライフワークは水と江戸前寿司で、「すし江戸前を食べる」「東京の自然水」「おいしい水で料理が変わる」「ミネラルウォーター・ガイドブック」「ミネラルウォーターで生まれ変わる」「江戸前ずしの悦楽」「日本一江戸前鮨がわかる本」「鮨水谷の悦楽」など、数多くの著書がある。中でも「ミネラルウォーター・ガイドブック」は1994年の発売以来、20年ものロングセラーとなっている。コミックス「江戸前鮨職人きららの仕事」「私は利休」「アントルメティエ」などの原作も担当。(「きららの仕事」は2005年にTBSでテレビドラマ化)
2002年9月には東京都の「名湧水選定委員」に就任。現在、テレビ番組「早川光の最高に旨い寿司」(BS12)に出演中。
http://hikari-h.blog.so-net.ne.jp/

Model
宮本彩菜

みやもと あやな
モデル。1991年大阪府生まれ。2013年より本格的に活動をスタートし、広告や雑誌等を中心に活動中。 自ら撮影&編集した動画・GIF・イラストなど、クリエイターとしても国内外で注目を集めている。今後は女優として活動の場を広げて行く予定。今年から岩手県に”AYANA’s Vegetable Garden”を作り、農業を始める。

Life Stylist
大田由香梨

おおた ゆかり
ライフスタイリスト。Fashion stylistとして培った視点をベースに、衣食住<ライフスタイル>全てにおいてのスタイリングを手がける。2011年より、自身のライフスタイルへのこだわりを投影した”ORGANIC TABLE BY LAPAZ”をプロデュース。多くの情報が溢れ、流れてゆく現代のライフスタイルのなかで、ヒト・モノ・コトすべてに、流行に左右されない付加価値をスタイリングする。
www.yukari-ota.com
www.instagram.com/otayukari


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