SOCIAL STUDY FOR SOPHISTICATED LIFE No.01

温もりを吹き込むガラス工房

写真:平岩紗希 取材・文:渡邊敦夫 
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南 貴之 (alpha.co.ltd) × 平 勝久 (STUDIO PREPA)

不定期連載「大人のためのスタンダードな社会科見学」。クリエイターが今いちばん“行きたい場所”や“会いたい人”に接することで、自身のスタンダードを再検証します。記念すべき一回目のゲストはクリエイティブカンパニー《alpha》代表の南 貴之さん。彼が向かった先は長野県にある一軒のガラス工房でした。

去に人気セレクトショップを手掛け、瞬く間にその名をファッション業界に轟かせた南 貴之さん。現在は自身が立ち上げたクリエイティブカンパニー《alpha》のCEO兼クリエイティブディレクターを務め、新しいステージへ歩み始めています。そんな南さんが今一番気になるヒトに挙げたのが《STUDIO PREPA》の平 勝久さん。吹きガラスという独自のスタンスで工房を営む平さんが作るプロダクトはどれも温もりを感じさせるものばかりです。

南 貴之(以下M)「久しぶりですね。たぶん2年ぶりぐらいでしょうか。というか、実際にお会いするのって何回目でしたっけ(笑)」平 勝久(以下H)「たぶんですけど、2回か3回目だったような気がします(笑)」M「そもそも、出会ったきっかけというのは僕が一方的に連絡したことから始まったんですよね。吹きガラスの瓶を作りたくて、いろいろ調べていくうちにSTUDIO PREPAさんの存在を知って。で、電話してもなかなかつながらないっていうね。もう根比べに近い感じでしたよ、あの時は」H「まぁ生活の大半がスタジオで作業していますからね。電話に出るタイミングがないというだけで……。でもご連絡を頂き、詳細を伺ってすぐに『これは面白そう』って思いました」M「ヴィンテージでよくみられる泡の入ったガラス瓶を作りたくて。でも平さんの作品ってキレいだからできるかのかなと思いました。もし興味を持って頂けたらお願いしたいと思っていたので、OKをもらった時は純粋に嬉しかったですね。でも僕は泡がどうやって入っているのかさえも知らなかったから、今思うとかなり無茶なオーダーだったのでしょうかね?」H「大丈夫、南さんをはじめとするクリエイターの皆様のオファーというのは、そういうケースばかりなので(笑)」M「僕はまったく知らないですよ! 本当に昔の泡が入っている瓶に惹かれただけですからね(笑)。多分、初めて聞くと思うのですが、平さんっていつから吹きガラスを作っているのですか?」H「吹きガラスを始めたのは25年ぐらい前かな。このSTUDIO PREPAを立ち上げたのは2000年です」M「そもそも、なぜ吹きガラスをやろうと思ったのですか?」H「学生時代から、漠然となのですがデッサンは職業につながらないかなと考えていました。それで実体のある素材を加工する仕事がしたいなと思い、吹きガラスを選びました」M「そこで吹きガラスという選択肢が面白いですよね。うん、変わってる(笑)。このスタジオを見れば変わった人だなって一目瞭然ですから」H「実際に吹きガラスを始めるとジレンマがあったんです。絵に描いたモノを再現する時に、工場だと抜け勾配じゃないとか同心円状じゃないとか色の問題とか、たくさんの制約がありました。マスプロダクトでは作りたいけどオミットされてしまうデザインを再現するにはスタジオレベルの小さい作業場が必要なので、このPREPAを作ったという経緯です」M「自分で炉も作ったとか……やはり普通ではないですよね。取り巻く環境の作り方に僕は惹かれました」H「自分の欲しい炉が現存でないから作っただけですよ(笑)。これはレンガを3000個ぐらい積みました。他にも研磨の作業台など、このスタジオにある大半の什器は僕が作りました」M「勝手なイメージなんですけど、平さんって日本人っぽくないんですよね。他のガラス職人の方は作家、日本、和みたいな雰囲気を醸し出していて、僕自身、面白いとは思えない。でも、平さんは原料や道具などを海外から仕入れていたり、色やデザインのアプローチも実に海外っぽい。塗料などの数も見たことないぐらいあるし」H「おそらく地球上に現存するガラスメーカーが持っている色はすべてあります。600色ぐらいはありますが、同じ色でも温度によって濃淡の差が出るから色のバリエーションははてしない数です」M「個人的に思うのですが、このジャンルってすごく可能性を感じさせるのですが、その辺ってどう思われますか?」H「一般的には陶芸と一緒くたに思われがちですが、実はまだガラス工芸って1世紀から2世紀ほどしか経過していないジャンルなんです。だから非常に面白い状況下だと思っています。アメリカのベースにイタリアや北欧の技術や道具が混じり合い、ようやく作りたいものがしっかりと再現できるようになった。それは商品のクオリティがしっかりと追求できるようになったということです」M「でも吹きガラス工房って少ないですよね。調べたら全然なかった。それこそ世界にいくつかっていうレベルじゃないでしたっけ?」H「そうなんですよ。スタンダードな職業であるにもかかわらずスタジオが極めて少ないのが現状です」M「僕がSTUDIO PREPAさんと一緒にモノづくりをしたいと思った理由は“特異性”に他なりません。量産できるモノはほとんど仕入れられるから。同時に、違いをもたらすモノを仕入れることが必要になる時が必ずあるんです。もちろん、お客様に差を見比べて欲しいとは思っていません。空間全体のなかのバランスということです」H「僕も店舗設計など真面目な仕事をする傍ら、南さんたちと脳みそをかき混ぜられるような作業もする。このバランスがたまらなく好きなんです」M「今後も何か一緒に作ってください。今度は瓶じゃないだろうなぁ……」

about them

Creative Director
南 貴之

alpha.co.ltd 代表。2008年alpha.co.ltdを設立し様々なショップのディレクションや内装デザインを手掛ける。2013年 国内外の様々なブランドのPRを行うアタッシュドプレス「alpha PR」を立ち上げる。同年に自身としての自由な表現を目的とした「Fresh Servise」を立ち上げ、7月5日(土)~7月27 日(日)までEYE of GYREにてクリエイティブセレクトショップを開催予定。
www.alpha-tokyo.com

Glass Blower
平 勝久

20歳から渡米し彫刻を学び、その後L.Aにてデヴィッド・スベンソンのワークショップに参加。帰国後、東京ガラス工芸研究所でガラス制作を学び、独立後は個展・二人展などに参加。2000年にSTUDIO PREPAを設立。
www.prepa.jp


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