MY 10 FAVORITE PHOTOBOOKS 2014

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ベスト・ブックスってなんだろう。

一人の作家が渾身の力を込めて制作した作品に、ベストと評することなど可能なのだろうか? 一体全体、他の作家と比べて、優越などつけられるのだろうか?

年末になると、欧米の写真業界では、今年度のベスト・ブックスを決定するサイトが数多く発表され、写真集コレクターから熱い注目が寄せられます。特にマーティン・パーが審査員として参加するPhoto-eyeのセレクションや、業界最大の機関であるパリ・フォト/アパチャーが選出したベスト・ブックスのコンテストには、写真家はもとより、出版者、編集者、デザイナーからも強い関心が寄せられます。でも、このベスト・ブックスのリストを絶対的な価値に基づいて決定されたリストとして考え、また今後の写真集の指標を示すイベントとして過大に重要視することに疑問を感じます。

私は、写真専門店で9年間働いて、現在まで、1万6千册以上の写真集の在庫管理をしてきました。単純に計算すると、1年間で1千7百冊以上の写真集を扱っていることになります。そのような、恵まれた環境にもかかわらず、私の知らない多くの素晴らしい写真集があること理解しています。その為、 ベスト・ブックスの選出を頼まれると、とても複雑な気持ちになります。

また、一冊ずつの本の違いは、写真家の個性によるもので、個性に優越はありえないと考えます。つまり、10人、写真家がいたら十人十色の物の感じ方があり、一方の表現の仕方が、他方より優れていると判断出来ないし、他方の表現方法だけだ、絶対的に美しいとか、正しいと示唆出来ないことだと思います。また、例えば、審査員が多くの人に賛同を得るような作品を入賞させたからといって、それが、少ない支持しか受けなかった作品より、優れているとも考えられないと思います。そして、作家の立場になったら(また、作家と一緒に制作した出版者にとっても)、疑問が残るのではないかと想像します。

だから、ベスト・ブックスという名目で写真集を選出することには、賛成出来ません。”選出者の個人的なもしくは、職業的な関心から、今年度、特に目にとまった作品”という、題目なら私も賛同出来るところがあります。私の考え方は、理屈臭すぎるでしょうか?

そんな折、2014年度のベスト写真集の選出することを、イギリスのフォト・ブックス・ストアーのマーティン・エーマス(Martin Amis)さんから、依頼を受けました。自分の複雑な心境を、マーティンさんに理解して頂いた上で、参加させて頂くことになりました。

私が今回選出した写真集のリストには一つの共通項があります。写真の作品としての完成度や、個性の強さは、もちろんですが、もっとも重点をおいたのは、作家と、出版社/デザイナーとの信頼から生まれるコラボレーションが、美しく結実した写真集であるということです。

作家との信頼は、一朝一夕に築き上げられるものではありません。また、デザイナーや編集者が作品を理解する力は、作品への情熱がなければ、発揮されることはありません。 私の狭い知識と浅い経験の中で、今回選ばせてもらった作品は、写真家一人では、作り上げられなかった世界観が、制作チームとのコラボレーションを通すことにより、さらに広がりをもつことができた作品です。

そして、英語で「MY 10 FAVORITE PHOTOBOOKS 2014」というタイトルを仮につけさせて頂きました。繰り返しになりますが、ベスト・ブックス・リストではありません。

 

MY 10 FAVORITE PHOTOBOOKS 2014

1.ジェーソン・ノシト PUD II (Dashwood Books, 2014)

特にニューヨークのような大都会では、自分の気持ちを正直に吐露したりすることは、滅多にありません。コミュニケーションは、感情を排除し、理性に基づいた思考を中心に繰り広げられます。最近のストリート・フォトは、一見、構成が整い美しいですが、逆に感情を押さすぎて、頭でっかちで、大人しい作品が多いように思います。それは、自分を100%全面に出さない方が、生きやすい世の中であるので、作家の態度が、そのまま作品に出ている為かもしれません。そうした流れの中、ノシトの PUD II は、一番、他人に見られたくない、一見、見苦しい感情(例えば、敗北感、絶望、激怒、感涙)さえも表した‘強い作品’だと思います。ニューヨークの大都会でノシトが激怒し、傷つき、打ちのめされた傷跡が作品からひしひしと伝わってきます。都会生活の現実を作家自身の感性/本能を通して表した本作は、近年発表されたニューヨーク・ストリート・フォトの中でも秀作の一つとして挙げられると思います。前回のブログにノシトのインタビューを記載しましたので、そちらの方もどうかご参照下さい。

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2. ジム・ゴールドバーグ, Rich and Poor (Steidl, 2014)

初版から30年後に制作された新装改訂版の本書は、新世代のコレクターの間で今年度、最も話題となりました。傑作は、やはり時間の洗礼を受けても多くの人に支持され、訴えかける力を宿していると思いました。フラクション・マガジンでゴールドバーグのインタビューを記載しましたので御参考下さい。 

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3.マルティナ・フォグランド・アイバノフ Speedway (Livraison, 2014)

アイバノフ のSpeedwayは、レーシング・カーの写真集です。スポーツ写真はドキュメンタリー性を追いすぎて、写真集として発表した際、芸術性に乏しい作品が多いように思いますが、アイバノフのSpeedwayは 作家自身の意匠に溢れ、まるで実験映画のようなユニークさがあります。出版者のヨハン・サンドバークとヘンリク・ティモネンのアート・ディレクションのよって、写真集の制作の行程が監修された為に、このような傑作が出来たのだと思います。

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4. Nobuyoshi Araki and Juergen Teller, Araki Teller, Teller Araki

(Eyesencia and Match and Company, 2014.)

荒木経惟と ヨーガン・テラー の共作は、アラーキーの長年の友人であり、編集者/キューレターの本尾久子さんの監修のもと制作されました。ご存知の通り、アラーキーもユーガンも多くの写真集を大手の出版社から発刊していますが、本作はその中でも、最高傑作だと思います。それは、本尾さんが誰よりもアラーキーの作品を理解し情熱をもって支えて来た為だと思います。ダシュウッドのオーナーのデビットが、本書を初めて手に取ったときに、「日本人は本当に、良い本の作り方を知っている」と呟いていました。

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5.トーマス・ルフ, Lichten (Roma, 2014)

オランダのローマ出版社の出す写真集は、どの作品も美しいのですが、特に、トーマス・ルフのような、アーティストの本を出すときにその力量が発揮されるように思います。ルフ程有名な作家ですと、当然多くの写真集を出していますが、私は本作を通して初めて、もっと作品について知りたいと思うようになりました。出版者、編集者と、デザイナーの選出は、写真家/アーティストにとり大切であると改めて考えさせられました。

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 6.渡辺克美, Rock Punk Disco (PPP Editions, 2014) 

日本人作家の写真集の出版は、海外の出版者も多く手掛けていて、その動きは日本写真の人気と比例し、年々盛んになっているように思います。その中で、ニューヨークの PPP Editionsの写真集は、群を抜いて素晴らしいと思います。出版者のアンドリュー・ロスの日本の写真に対する敬意と愛情に溢れた本作は、渡辺氏の73年に発刊された 『新宿群盗伝』(薇画報社)と並ぶ秀作だと思います。

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7. ケン・シュレス, Invisible City (Steidl, 2014)

ケン・シュレスの本作は、80年代のニューヨークの街を映した作品です。強いモノクロの作品は映画的な仕上りで、マーティン・スコセシの初期の映像を彷彿させます。(Who’s That Knocking at My Door, Mean Streets, and Taxi Driver) 都市の狂乱と悦楽を写し取った素晴らしい作品です。

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8.森栄喜Intimacy (Nanaroku-sha 2013)

森栄喜は、今一番注目されるべき新人作家だと思います。欧米のコレクターに彼の作品の素晴らしさを伝えたいといつも思います。特に、扇情的なイメージは無いのに、森さんが作り出す東京は 静かで幸福なエネルギーに満ち溢れ強く惹き付けられます。

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 9.横田大輔, Vertigo (Newfave Books, 2014)

古今東西、老若男女を問わず、仕事が出来る人、才能がある人は、本当によく働くなと思います。横田さん程、ここ2−3年のうちに数多くの展示会/アートフェアに参加し、写真集を出版した新人作家はいないと思います。横田さんのそのバイタリティーに心から感嘆します。本作は、長年横田さんを編集者として、またキューレターと支えて来た、大山光平氏の監修のもとに制作されました。数ある横田作品の中で本作が特に突出しているのは、作家と出版者の深い信頼と互いの仕事に置ける尊敬がある為だと思いました。 

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10. ブレッド・ロイド, Scugnizzi (Dashwood Books, 2014)

ナポリの自然に溢れた美しい風景の中で撮影されたストリート・キッズ( Scugnizzi : シュクニッツ)の生き生きとした姿を捉えたポートレイトは、イギリス人の若手写真家であるブレッド・ロイドが制作しました。本書は、ダシュウッドの出版の為に制作された新作です。 ユース・カルチャーや、ビーチ・ピクチャーを撮影した多くの秀作は歴史上多くありますが、 Scugnizzi もそれに劣らぬ秀作だと思います。

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MY 10 FAVORITE PHOTOBOOKS 2014

1. Jason Nocito, PUD II (Dashwood Books, 2014)

Nobody, especially in a big city like New York, talks about their feelings; only their thoughts. Everything, including photography, tends to become carefully calculated and overly diplomatic, or quiet. Probably because it is easy to be less personal or emotionally available to the viewer. On the other hand, Jason Nocito’s PUD II stands fearlessly and loudly – suggesting an almost aggressive yet vulnerable sensibility, without any hesitation. Using bold color combinations and facing the subject straightforward from his pure internal voice, PUD II eloquently portrays the reality of contemporary urban life and introduces a fresh perspective into the long tradition of New York street photography.

2. Jim Goldberg, Rich and Poor (Steidl, 2014)

Although three decades have passed since its original publication, this new, expanded edition of Jim Goldberg’s Rich and Poor continues to resonate truth in many people’s hearts and attracts a new generation of photo-book lovers. This is proof of a masterpiece.

3. Martina Hoogland Ivanow, Speedway (Livraison, 2014)

Unlike much sports photography, Martina Hoogland Ivanow’s Speedway is creative and original, akin to experimental theater. Her artistic talent couldn’t be fully realized without the sincere understanding of her work by her publishers Johan Sandberg and Henrik Timonen’s editing and art direction.

4. Nobuyoshi Araki and Juergen Teller, Araki Teller, Teller Araki (Eyesencia/Match and Company, 2014.)

Despite the difficulty of combining two photographers’ works, Araki Teller, Teller Araki successfully marries their images while being elegant and harmonious. That is because this title was conceived by Araki’s long-time friend/curator, Hisako Motoo, in collaboration with the designer Satoshi Machiguchi (published on the occasion of the exhibition, Araki Teller, Teller Araki at OstLicht in Vienna in spring, 2014).  Dashwood’s owner David Strettell’s first response to seeing this title was “The Japanese do know how to make a beautiful book”, and attests that this is one of the best of their publications.

5. Thomas Ruff, Lichten (Roma, 2014)

Roma has become an important art-publisher – and this Thomas Ruff title is a great example why this is true. Through this book I appreciate Ruff’s art more than ever – and I am now motivated to learn more about his work. 

6. Katsumi Watanabe, Rock Punk Disco (PPP Editions, 2014) 

Outside of Japan, no publisher other than PPP Editions conceives the most beautiful Japanese photo-books. Publisher Andrew Roth’s deep appreciation of Japanese photography makes this publication as vibrant and exciting as Watanabe’s first Shinjyuku book, Shinjuku Guntoden 66/73 / Shinjuku Thievery Story 66/73 (Bara-gaho-sha, 1973). 

7. Ken Schles, Invisible City (Steidl, 2014)

Ken Schles’ strong renderings of ’80s New York photography appear to be cinematic – and can be compared to Martin Scorsese’s films such as Who’s That Knocking at My Door, Mean Streets, and Taxi Driver. Schles’ newly reissued Invisible City straightforwardly captured the ecstasy and despair which his beloved city screamed of. 

8. Eiki Mori, Intimacy (Nanaroku-sha 2013)

Eiki Mori is one of the most important young Japanese photographers working today he captures the reality of the contemporary Tokyo scene. Without drama or shock, Mori induces the viewer into his peaceful and tranquil world. 

9. Daisuke Yokota, Vertigo (Newfave Books, 2014)

I very much respect Yokota’s vitality and integrity to create so many books over the last couple of years. Among his publications, Vertigo best presents his rigor and capacity as a talented, emerging artist. This beautiful publication must be the result of a close collaboration with his publisher, Kohei Oyama. Oyama is the one of the first curators/publishers who recognized Yokota’s talent and supported his work for the past eight years. 

10. Brett Lloyd, Scugnizzi (Dashwood Books, 2014)

Scugnizzi is an ambitious project by a young British photographer, Brett Lloyd, as it deals with two important themes in history of photo books: youth culture and beach imagery. There have been many masterpieces that dealt with these subjects including Lisette Model‘s Lisette Model (Aperture, 1979), Danny Lyon’s Bikeriders (MacMillan/Collier Books, 1968), Karlheinz Weinberger’s Photos 1954-1995 (Scalo, 2000), Bruce Gilden’s Coney Island (Trebruk Publishing, 2002), and Joseph Szabo’s Teenage (Greybull Press, 2003). His portraits of young people on the beaches of Naples are realistically alive and naturally glorious and they are created through his pure curiosity and excitement about landscape. It is an absolute joy to discover that Lloyd’s Scugnizzi is in the same league he should be recognized as one of today’s most talented young photographers. 

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