ジェーソン・ノシト『PUD II』Dashwood Books, 2014

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「あなたの国籍はなんですか」オーナーがイギリス人であるニューヨークの写真専門書店で、特に日本人である必要のない、マネージャーのポジションについている為かこの質問を私は頻繁に受けます。「日本人です」と答えたとたん、相手はステレオ・タイプな日本人像を私に重ね、「じゃあ、働き者なのも日本人だからあたりまえだね」「だから、そんなに丁寧なんだね」「お寿司とか、うなぎとか、そばとか大好きでしょう?」というような返答を受けます。私は、確かに働き者かもしれないけれども、なまけものの日本人も多く知っているし、私以上に働き者のアメリカ人や、ヨーロッパ人だって知っています。私は、対応は丁寧かもしれませんが、仕事のやり方は大雑把で、細かい作業をこなすのは得意ではありません。そして、お寿司や、うなぎは嫌いではありませんが、日本食の中で一番興味がないメニューで、自分からレストランで頼んだ事など一度もありません。仮に私が、違う国籍(例えば、イラク人、フランス人、ロシア人だったら)であると答えたら、どんなステレオ・タイプな返答が返ってくるのだろうかと想像する事があります。肩書きや、国籍や、年齢や、性別は、確かにある傾向を示す指標になることは認めますが、それが、その人を理解する全てに繋がる事はありません。どこの国籍で、結婚しているかとか、年齢がいくつだとかの情報で、瞬時に人を判断し、その人が、どんなことを考え感じるのかを理解していく可能性を、遮断してしまう事はとても残念な事です。私は、ステレオ・タイプに判断される事で、複雑な気持ちになることを経験しているので、収入とか、学歴とか、会社とか、国籍とか、年齢とかで他人を判断しない人を自分の友人としています。みなさんは、いかがですか? 日本に過ごしていると、なかなか国籍を聞かれる機会は少ないと思いますが、肩書きだけで、ステレオ・タイプに人を判断して、その人の中身までも、とても狭い範囲で捉えていませんか?分類分けをしたとたんに、全てを知った気になり、その時点で思考停止に陥って、相手の気持ちを理解する事を怠っていませんか?自分の感性と知性を使って、まっさらな気持ちで初めて会う人にする事は出来ていますか?多くの素晴らしい人にこれからも出会っていくために私自身も、初めて会う人には特に、素直で、オープンな態度で接することができたらと思っています。

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今回紹介したい写真集は、ニューヨーク出身の写真家、ジェーソン・ノシトの新作PUD IIです。『PUD II』は、アパチャーから2008年にティム・バーバーの監修のもと発刊された、『Load』、ダシュウッド・ブックスから出版されたI Heart Transylvania(2011)、『PUD』(2014)に次ぐ第4作目の写真集です。自宅のベランダでタバコを吹かしたり、ベットで横たわる妻のメーガンや、タバコの吸い殻や、オイルの溜まった道路の汚水、街に飾られたサインボードなど、全ての作品はニューヨークで撮影されました。ジェーソンは、いわゆる、ゲーリー・ウィノグランドやレゼット・モデルのような古典的な意味でのストリート・フォトグラフィーでも、リチャード・ミズラックやロバート・アダムスのような社会派のドキュメンタリー作品を撮る作家でも、タリン・サイモンやサム・フォールズのようなコンセプチャル・アートとしての写真を制作するアーティストでもありません。また、もちろん、アマチュア写真家がiphoneで撮影するようなスナップ・ショットを撮る作家でもありません。もし、無理矢理、彼の作品を分類分けするとしたら、”現代版/私的ストリート・フォトグラフィー”と命名するのが適当であるようですが、ジェーソンの作品から発せられる痛々しいまでの生のパワーを感じた時に、そのような作業は甚だ意味であると感じます。黄と、緑と、ピンク色の得体のしれない物質の化学反応で変色した汚水と、浅黒く妖艶な肢体を露す妻のポートレイトや、不吉な未来を暗示するような黒い雲の写真から、やるせなく、辛く、きつく、緊迫した印象を受けます。日々の生活を謳歌した、人生万歳の作品ではなく、ジェーソンのまなざしは、とりとめもなく、しかし必然的に流れている時間の中で、大都会ニューヨークに渦巻く人々の焦燥や混沌とした精神状態を描いているようです。実は、ジェーソンはDE REPSに所属しリーバイス、ナイキ、アップル、キャノン、ソニー、コンバースなど数々の大企業の広告の仕事を手がける商業写真家の一面をもっています。その一方で、昨年には、ニューヨークのフォール・ギャラリー、ロサンゼルスのM+B ギャラリーのグループ展にライアン・マッギンリーやエド・テンプルトンら同時代のアーティストとともに参加し、精力的に作家活動も行っています。コマーシャルの仕事とアーティストとしての活動とのバランスの取り方、また、作品の制作の姿勢などをインタビューしてみました。この、記事を通して、より多くの皆さんに、ジェーソンの作品を紹介できたらと思っています。ダシュウッドでは、来る10月16日にサイン会を開催する予定です。サイン本はダシュウッド・ブックスのサイト から予約販売しています。ニューヨークにいらっしゃる方は是非遊びに来て下さいね。

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INTERVIEW with JASON NOCITO

須々田(以下Sと表記)「ジェーソンはどこで生まれ育ったのですか?どのような、きっかけで、写真に興味を抱くようになったのでしょうか?また、どのような姿勢で作品の制作をしているか、教えて下さい」

ジェーソン(以下Jと表記)「マンハッタンから車で約30分ほど離れたロング・アイランドのミネオラという小さな田舎町で生まれ育ちました。4歳位の時に家にあったカメラを使い始めましたが、実際に自分自身のカメラを手に入れて撮る事を始めたのは15歳の時です。空軍に所属する兄から譲り受けたカメラでした。16歳の頃には、一人暮らしを始め、友達とパーティー三昧の日々を過ごしていました。そんな、生活の中で、友達のポートレイトを撮ったりする事をいつもしていました。その後、FITで写真と絵画を、パーソンズで写真を専攻し、アカデミックなやり方で写真を撮る事を学びましたが、まず、コンセプトやプロジェクトを立てて作品を作る事は、自分のスタイルでない事に気が付きました。自分が撮りたい物は、自分自身の人生の一部としてある物で、それは私自身であり、それ以上でないと思うからです。だから、”自分”が今、どの瞬間に、どこで、何を感じ、考えているかが作品に現れればそれで、十分だと思っています」

S「”PUD”や”PUDII”を制作することになった経緯を教えて下さい」

 

J「踏襲的な意味ではない、ニューヨークのストリート・フォトグラフィーや、ポートレイトを撮影する事に興味があって、PUDを制作しました。PUDシリーズは、全部で3部作にしようと思っています。3部、制作する事で、より内容の濃い物が出来るように思い、とても楽しみにしています。この、写真集はダシュウッド・ブックスから出版されていますが、写真集や、写真についてとてもよく理解している友人のアリ・マルコポロスとカミラ・ベントゥリーニと共に、編集、デザインの作業を進めました。自分の作品を任せるのに、心から信頼を抱いている友人と今、写真集を制作できて心から嬉しいです」

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S「写真家を志す、若い作家にアドバイスはありますか?かなり、忙しいコマーシャルの仕事をこなす傍ら、とても、精力的に作家活動されている、その秘訣はありますか?」

 

J「秘訣なんてないよ!(笑)でも、いつも心がけているのは、自分がいま、何が出来ていなくて、何をやらなかったかではなくて、今自分は、何をする事が出来て、何を実際やっているかに意識を向けるようにしています。自分の制作に時間を多く費やし、その他の無駄な時間を極力なくすようにしています。時間を最大限に有効に使う事も大事ですね。でも、一番大事なのは、楽しみながら何でもやる事だと思っています」

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S「写真家として、一番楽しいと思う瞬間は、どんな時ですか?」

 

J「写真を撮るという過程全てが楽しいと思います。なぜなら、自分の頭の中や、心の中で描いた物とは、全然違う物が撮れたりするから、飽きる事がありません。その瞬間に自分が立ち会っているという実感に興奮を覚えるし、喜びを感じます」

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S「好きな作家の方がいましたら、教えて下さい」

 

J「ロバート・フランクのモノクロの作品は全て好きだし、マイケル・シュミットの「Unity」や「Waffenrhue」には、自分の写真集のコレクションの中で好きです。また、日本の作家では、北島敬三の東京:写真特急便」にはその作品の力強さに心を強く奪われました」

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※日本語の翻訳部分は、文章を分かり易くするため、一部意訳した箇所がありますので、予めご了承下さい。以下が実際の英語のインタビューです。

 

【Interview in English】

S (Susuda): Congratulations on your new publication on PUD II.  Today, I would like to ask you a couple of questions and get to know you better,, May I first ask where you were born? Would you tell me about how you encountered photography and what was your initial project you took as a photographer?

J (Jason): I was born in Long Island NY, a suburb called Mineola about 30 minutes outside of NYC.  I found cameras and photography very interesting from the first time I saw a camera which was when I was very young around 4 or so.  But it wasn’t until I was 15 that I received my first camera, a hand me down from my older brother who was leaving for the air force ad around 16, I started living alone and got really into partying and handing out with my friends and taking photos the whole time.  I’ve never really been interested in the project idea for photography.  Doing projects isn’t how I think about making pictures.  What was intriguing more than and still now is making it a part of my own life, my daily practice.  All the photos I make are born out of where I am both physically and mentally.

S: Please tell me about PUD project.  Why do you decide to make PUD2?  How would you choose an editor/designer?  Would you find making the book important?  Do you enjoy making your own book and having your exhibition?

J: PUD came out of me figuring out how to make pictures in NYC that weren’t just traditional street photographs or portraits.  It came of a long period of me living between Vancouver and NYC for 4 years.  During that time, I made the work for my first 2 books “Load” (aperture) and “I heart Transylvania” (Dashwood Books) and after about a year or two of living back in NYC, I started making the work that eventually become part of PUD I and now PUD II and eventually PUD III (the PUD trilogy).  Doing it in a 3 part series gives me a chance to play more.  Ari and Cammila got involved because I asked for their advice on some things and they were very interested and both know a lot about photography and books!  So it seemed like a natural fit.  Having a show and having a book are both important at the moment.  Making the work is most of what I’m concerned with.

S. For may upcoming young photographers, would you have any advice?  What drives you to work so well and hard?  Any secret?

J: ha ha no no secrets.  I think spending many years in therapy talking about my life and always thinking/looking at what you are doing rather than what you are not doing is a good start.  Cutting out the stuff that’s not productive and using your time as best as possible.  But also having fun doing is!

S. What the most challenging/enjoynment do you experience thru taking a photo?

The process is it for me,,,It’s unpredictable and that’s what intrigues me. You can have something in your head and what you get some out  are completely different.  It’s fun and always exciting to be in the moment.

S. Who is your favorite photographers?  Which book do you like best?

J. I love Germans.  Michael Schmidt’s “Unity” and “Waffenrhue ” both had a heavy effect on my brain as well as Robert Frank’s black and while photography.  I like Japanese photographers very very much.  I esp. love Kitajima’s magazine work book.  The energy in all the books I’ve seen of his seem other worldly!

S. May great contemporary photographers, Jurgen Teller, Ari Marcopolous, Viviane Sassen and you are all very active in commercial photography, too.  However, I know some photographers really dislike doing any commercial work.  What do you think about fashion photography?  Do you think it is just boring to you?  Do yo enjoy making fashion photos?

J. As far as fashion photography goes I think, it’s the most fun work you can do when it comes to doing commercial work.  It has the most freedom and the people you usually with tend to be of the same mindset.  But all work the work I do commercial purposes has a certain ceiling…and that’s why I enjoy working so much outside of it to expand my own ceiling and see what I can come up with.

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