スタンダードナンバーの使われ方

「俺はこいつじゃなきゃダメなんだから、仕方がねぇ。仲良くやってくれよ」

 

今から30年ほど前に大ヒットしたTBSのドラマ『ふぞろいの林檎たち』の中で、

中井貴一演じる主人公の兄役の小林薫の台詞。

姑のいびりに耐えきれず、家出した嫁を連れ戻した長男小林薫が、実母に意を決して

吐いたこの言葉は、劇中でもふぞろいな女子大生の心を打ったと同時に、全国の嫁姑問題を

抱えている家庭で大反響を呼びました。

脚本は山田太一。この方の『岸辺のアルバム』が大好きでした。

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このドラマのテーマソングはサザンオールスターズの『いとしのエリー』でした。

ヒットから30年以上経った今でも、誰もが知っている日本音楽史上が誇るスタンダードナンバーです。

しかし、以前桑田佳祐さんにインタビューしたとき、『ふぞろいの林檎たち』の話をしたら、

あまり快く思っていないようでした。

「あの曲はドラマのために作った曲じゃないですから」。

ドラマのテーマソングならば、ドラマに合った曲を自分で考えて作りたい。

後から良いとこ取りで、自分が描いていたイメージと違ったイメージを植え付けられるのは、

残念である。それが、桑田さんの言い分だったような気がします。

とても納得。

 

では、ドラマやCMの制作者が、すでに誰もが知っているスタンダードナンバーを使うというのは、

あまり褒められた行為ではないのでしょうか?

もちろん、曲の制作者のイメージとは違っていても、ドラマなどの制作者は「この曲以外に考えられない」

と思う曲もあると思うのですが、いかがでしょうか?

 

例えば、桑田さんにドラマの制作者がテーマソングを依頼する。

『「いとしのエリー」のような曲をお願いいたします』

桑田さんは答える。

「あの曲には別のイメージがあるので、今回のテーマに合ったオリジナルソングを作りましょう」

とても真摯な対応。

果たして、曲が完成した。

良い曲だ。オリジナル曲だから、テーマにも合っているし、他のどの感じとも違う。

でも、「いとしのエリー」は超えてはいない。

そりゃ、あれほどのスタンダードナンバーをそう簡単に超えられるはずがない。

で、結論。

あなたがドラマの制作者だったら、感性に従い、「やっぱり『いとしのエリー』を使わせて下さい」

と言いますか?

それとも、道理に従い、オリジナル曲を使いますか?

 

元気になった桑田さんが、最近よくTVCMなどでお見かけする度に、

「スタンダード」な曲の使われ方を、考えるようになりました。

 

ちなみに、『いとしのエリー』で清純な美女を演じていた石原真理子ですが、

30年前、一瞬でも彼女に惚れた自分が、今ではなんとなく恥ずかしくもあり、

なんとなく、わかるような気もします。

 

 

 

 

 

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